餅つきは地域の大事な習慣だった

鎌倉幕府2代将軍・源頼家公にゆかりのある武士によって建暦2年(1212)に創建されたと伝わる代々木八幡宮。頼家公が暗殺された後、この地に小さな祠(ほこら)を建てて鎌倉の鶴岡八幡宮を勧請したのが始まりといわれる。深い木々の中にあって神秘的な雰囲気を感じる都内屈指のパワースポットだ。そんな代々木八幡宮で2月の節分祭の2日前に行われる恒例行事が「代々木もちつき唄保存会主催餅つき」だ。

現在の渋谷区の初台、代々木、西原、上原一帯では、戦前から農家が5、6軒をひとつの単位として、各戸を回りながら正月を迎えるための餅をつく習慣があった。餅をつく前の杵(きね)で練る作業を行う際に、みんなの心がひとつになるようにと代々木もちつき唄が歌われていたという。

ところが昭和30年代になると付近の宅地化が進み、農家の減少や商店からの餅の購入などの理由により次第に大勢で餅つきをする機会が減っていった。そこで、餅つきの習慣や代々木もちつき唄が失われてしまうことを惜しんだ地域の有志たちが集まって1968年に「代々木もちつき唄保存会」が結成された。

代々木もちつき唄に合わせて餅をつく

代々受け継がれてきた代々木もちつき唄の保存を目的に、定期的に披露する機会として毎年2月の節分の2日前にあたる2月1日(2025年は1月31日)に餅つき大会が開かれるようになった。当日はもちつき唄が響くなか、保存会のメンバーが中心となって朝10時から14時頃までずっと餅をつき続ける。希望すれば一般の方も餅つきに参加できるということなので、力自慢の人は参加してみては。

この日についた餅は2月2日(日)に行われる節分祭で福餅として福豆と一緒にまかれる。邪気を払って福を呼び込むための節分祭では15時からの祭典の後、15時30分頃から年男・年女による豆まきが行われる(小学生以下が対象の回もあり)。保存会の方々が一生懸命ついた福餅をいただきに足を運ぼう。

毎年多くの人でにぎわう代々木八幡宮の節分祭。
毎年多くの人でにぎわう代々木八幡宮の節分祭。

開催概要

「代々木もちつき唄保存会主催餅つき」

開催日:2025年1月31日(金)
開催時間:10:00~14:00頃
会場:代々木八幡宮(東京都渋谷区代々木5-1-1)
アクセス:小田急電鉄小田急線代々木八幡駅から徒歩5分

【問い合わせ先】
代々木八幡宮☎03-3466-2012
公式HP:https://www.yoyogihachimangu.or.jp/

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像は主催者提供