【名古屋・味噌煮込みうどん】味噌煮込罠
赤味噌のかぐわしい香味は稀!
実家が愛知県刈谷市で3代続くうどん屋という店主の岡田望さん。東京で味噌煮込みうどんを食べられる店がないと奮起し、8年前に開業した。八丁味噌に、刈谷産の赤味噌、そこに白味噌を加えてまろやかさを出した独自ブレンドを、昆布、椎茸、鯖などの節でとった出汁で溶く。途端に、立ち上る赤味噌の香りに鼻がひくひく。歯ごたえある手打ちうどんは、食べ進めるともちもちへ変化!卵と汁をかけたご飯で締めれば昇天。
『味噌煮込罠』店舗詳細
【名古屋・きしめん】寿々木屋
立ち食いと侮ることなかれ!
元は普通の日本そば屋だ。先代が40年営んでいた姉妹店のきしめん店をたたみ、二枚看板にしたという。そばもきしめんも自家製麺だが、客の9割以上がきしめん派。「水分が多すぎると平たくならないし、少なすぎてもダメ」と、店主の鈴木利幸さん。舌触りつるすべで、噛めばもちっ。その後にダシがじわりと染み出してくる。あっさりしつつも、ふくよかな風味が口中でふくらむのは、小麦を主原料にした東海地方特産の白醤油ならばこそ、だ。
『寿々木屋』店舗詳細
【名古屋うどん】手打うどん あかう
手打ち麺が吸い込む香り豊かな汁
小麦粉に水と塩を加えて手捏ねし、のばし、切る。手打ちのうどんは、讃岐のコシとは違い、もちっとした歯ごたえ。ダシも実にいい。鯖や宗田鰹の節は、澄んだ味わいを引き出すための手間を惜しまず、上品さを醸す真昆布も用いて、愛知県刈谷産の白醤油で仕上げている。ツユをわっと湧かし、うどんにかけて供するのは、うどんにツユをぐっと吸わせるため。ずずっとうどんを啜(すす)ると、ツユの芳醇で風味豊かな香りが鼻を抜ける。
『手打うどん あかう』店舗詳細
【長崎・五島うどん】五島手延うどん びぜん家
つるっとした喉ごしがクセになる
遣唐使の時代、中国から製法が伝えられたとされる長崎県の五島うどん。手延べをする際に地元産の椿油を使うため、表面がつるっとなめらかに仕上がっている。若主人の備前格さんが五島で修業を積み、2011年オープンした同店。今では遠方から足を運ぶお客さんも多い。細めの麺は小麦の風味豊か。焼いたアゴ(トビウオ)で出汁をとり、九州の甘めの醤油を使ったつゆも絶妙。夜は焼酎の五島灘(黒)グラス510円など酒も楽しめる。
『五島手延うどん びぜん家』店舗詳細
【宮崎・釜あげうどん】はつとみ
清楚かつ奥深いブレンドダシを味わう
「温かいおつゆの方が香りが増すので、おすすめは釜あげです」と語るのは、店長の熊谷晃さん。美しく透き通った見た目からは想像ができない、ほんのりとした甘みと風味豊かなコクのつゆに思わず舌鼓。干し椎茸と昆布、鰹節をふんだんに使い、さらに3種の煮干しをほどよくブレンドさせたダシは、年月をかけて追求した甲斐あってのもの。柔らかめに茹でられ、それでいてコシもある自家製麺との相性もバッチリだ。
『はつとみ』店舗詳細
【愛媛・松山鍋焼きうどん】麻布十番うどん山半 本店
アルミ鍋でいただく地元民おなじみの味
2014年3月にオープン。本場・松山の老舗店と同じくレトロなアルミ鍋で提供する。訪れる松山出身の客も一様に「懐かしい」と目を細めるとか。鍋の中には伊予うどんとたっぷりの具。伊予うどんは、讃岐うどんより太くほど良いコシがあって、つるんとした喉ごしが特徴。この店では数種類の小麦をブレンドして打つ。四国産の海産物を使った出汁で作る甘めのつゆも相性抜群。塩味を加えたいときは、とろろこんぶをちょい足しすると◎。
『麻布十番うどん山半 本店』店舗詳細
【大阪・かすうどん】むねひろ
口に広がる味がたまらん浪花の珍味
大阪の南河内地方で、昔から食されていたかすうどん。「関東ではまず食べられない味ですね」と胸を張るご主人の品川明廣さん。油かすとは、市場に滅多に出回らない希少食材、国産和牛の小腸をじっくり揚げたもの。カリッとした食感に加え、ジュワっと口の中で広がる濃厚な味と香り。関西風のあっさりしたつゆとの絶妙なハーモニーに驚く。うどんを啜(すす)った後は、俵おむすびをスープに入れて。関東人にとって全てが斬新だ。
『むねひろ』店舗詳細
【三重・伊勢うどん】二代目甚八
ふわふわもっちり、伊勢400年の味
麺好きの間で密かなブームとなりつつあるという伊勢うどん。「通常1時間近く茹でますが、うちはやや細い麺を使って茹で時間は20分。これが、表面のふわふわ感と中のもっちり感がベストの状態」と話すのは店長。つゆは三重県内の味噌蔵のたまり醤油を加工して、出汁を取ったもの。さらに、うどん注文の場合は、三重より産地直送食材を使ったバイキング、お野菜ビュッフェ 480円が、200円でいただけるのもうれしい。
『二代目甚八』店舗詳細
取材・文=高山和佳、戸田恭子、平野智美、林加奈子、石原たきび、渡辺亮、佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=井原淳一、石島邦彦、中込涼、泉田道夫、オカダタカオ、高野尚人