コーヒー片手にのんびりまったり過ごす本の森『ROUTE BOOKS』
路地にひっそり立つのは、10年ほど使われていなかった元工場。廃材でリメイクした棚には、ローカル誌や植物、暮らしの本がぎっしり。アンティークのソファや椅子がその隙間に置かれている。手がけるのは工務店「ゆくい堂」。‶自分たちが発信する場″として、作業場の上階で始めたが、2015年、向かいの建物にお引っ越し。清澄白河『ARiSE COFFEE ROASTERS』の焙煎豆を、状態を見ながらドリップしたコーヒーの旨味とあいまって、心地よさに長尻必至だ。
午後のひととき、目も舌も潤うクリームあんみつ『韻松亭 喫茶去』
上野公園のなか、五條天神社の赤い鳥居の脇に、風情ある木造建築が立つ。明治8年(1872)築の懐石料理の店は、横山大観がオーナーだったことも。隣接する小さな茶屋では、ランチを過ぎれば、甘味タイムだ。注文してから葛粉を溶かして作るくずきりが評判だが、クリームあんみつの見目麗しさといったら。抹茶と豆乳の2層アイスの下に、ゴマ、粟、ヨモギの3種の麩、天草と抹茶の寒天、白玉がぎっしり。食感の妙と香りに心奪われる。
コーヒーと対話する特別な30分間です『ウエスタン北山珈琲店』
店のまわりには読書禁止、おしゃべり禁止などの貼り紙がある。「お客を選ぶのかって怒られることもあります。でも選んだことは一度もない。『こういうお店です』と十分にわかった上でお客様に選んでいただきたくて」。純粋にコーヒーを飲むことだけに集中してほしいという意味で、物腰の柔らかいマスター・北山富之さんは貼り紙の理由をそう語る。根底にあるのは、独自の手法で2~20年寝かせた深みのある熟成オールドビーンズコーヒー、その「味」への揺るぎない自信。静かに待つ時間、目の前の一杯に向き合う時間。濃厚な体験は、お店の扉を開けた瞬間から始まっている。
取材・文=佐藤さゆり(teamまめ) 撮影=高野尚人、金井塚太郎 構成=林本啓祐