『にはち』でいただくスキのないうまさ【平和島】
平和島の『にはち』は、フグ料理や寿司などの和食を長く作り続けてきた料理人の三上さんが、60歳にして始めた立ち食いそば店だ。長年、培った技術に裏打ちされた仕事は、どれも丁寧。立ち食いそばには似つかわしくないほどバランスよくまとめられた味わいで、人気店となっている。
押し出し製麺機で作られる二八のそばは細くしなやかで、喉越しは抜群。温かいかけでもだれないようにそば粉が配合されているが、これはぜひ冷やしで食べたい。出色なのがツユで、澄んだ味わいがこれまた冷やしにすると抜群だ。カツオ、ソウダ、サバに加え、ウルメイワシの煮干しを使っていて、うまみに広がりを与えている。時季によって具材の変わる野菜天もカラッと揚げられ、実に軽やか。見た目も美しく、まったくスキのない一杯となっている。
『にはち』店舗詳細
本枯節が香る絶品ツユの『国産二八そば スタンド』【新井薬師前】
2026年に本格的な手打ちそば店をリニューアルし、手軽にそばを楽しめる店に生まれ変わった『国産二八そば スタンド』。手打ちを機械打ちに切り替えたり、使うそばの実を変更するなど価格を抑える工夫をしたが、ツユに関しては以前と変わらず、カツオの本枯節など、高級な素材をふんだんに使っている。価格は安くとも一級品なのだ。
そのおいしさがはっきりわかるのが冷やがけ。ツユをすすると、まず感じるのが本枯節独特な、渋みを感じるスモーキーな香り。そのあとに奥行きのあるうまみが口に広がり、飲み下すとスッと消えていく。存在感がありつつのどごしのよいそばがこのツユをまとえば、すするたびに幸せな気分になれることは間違いない。具なしのかけでツユを堪能するのもいいが、天ぷらを乗せてもツユのうまさは揺るがない。文句のつけようがない冷やがけなのだ。
『国産二八そば スタンド』店舗詳細
『立ち喰いそば梅市梅市』のそばは酢の効果で豪快さっぱり【神保町】
飲食店の激戦地、神田神保町で人気の『立ち食いそば梅市』のそばは、かなり個性的だ。丸みがあって中太に近い太さの生麺は、噛むとしっかりしたコシがあって、存在感が抜群。ツルツルとすするというより、ワシワシとかきこみもぐもぐ噛むタイプで、「そばを食っている」感じがかなり強い。
このそばは冷やしにすると、さらに存在感を増す。となると、合わせる具材も肉のような強いものがいい。冷やしラー油肉そばは、たっぷりの豚肉とネギに加え、たぬき、のり、食べるラー油が乗せられている。これらをグリグリと混ぜ合わせ、もぐもぐそばと一緒に食べるのは、なんとも豪快でテンションがあがる。味が強すぎるように思われるメニューだが、そこはツユに合わせられた酢が味を引き締め、むしろさっぱりした味になっている。豪快なだけではなく、ちゃんと計算されているのだ。いかにも体力がつきそうな『梅市』の冷やしラー油肉そば。暑さに立ち向かうには、最適の一杯だろう。
『立ち喰いそば梅市』店舗詳細
『そば作』白く美しいそばは冷やしがおすすめ【御成門】
立ち食いそばには珍しい自家製麺のそばが食べられるのが、御成門にある『そば作』だ。店ができた頃はまだまだゆで麺を使う店が多かったが、生麺にこだわりを持っていた前田店主は理想のそばに近づけるべく、そば粉の業者や製麺機メーカーと協力して独自のそばを作り上げた。そのそばは、白く細い更科系で喉越しがよく、すすりあげればツルッと口に飛び込んでくる。その一方でコシもあって、舌や歯に当たるムニッとした食感が、なんとも艶めかしい。
温かいかけそばでも、だれることなくおいしいのだが、やはりこれは冷やしで食べたい。冷やしたぬきは、サクサクのたぬきに加え、大根おろしとわかめが乗っているのがうれしい。喉越しのいいそばはツルツルとしていてすするのが楽しく、永遠に食べていられそうだ。実際、『そば作』のそばは麺量が多く、そのすすり心地を存分に楽しむことができる。ツユもキレよく、まさに夏に食べるのにはぴったりなそばなのである。
『そば作』店舗情報
『蕎麦食堂 つぐみ銀座店』で味わう豊かなうまさ【新富町】
江戸川区篠崎の人気店、『蕎麦食堂 つぐみ』が2026年、新たに『蕎麦食堂 つぐみ銀座店』をオープンさせた。篠崎店では「パクチー小エビかき揚げベトナム風そば」など、さまざまな変わり種を提供するなど創意工夫があちこちに見られたが、銀座進出にあたっては、普通のそばにしっかり手を入れてきた。かえしを減らして、ダシをより感じられる、リッチなものに変えたのだ。さらにネギに鰹粉をかけ、デフォルトで岩のりもプラス。後追いでさらにリッチなうまみが味わえるようになっている。
もちろん、冷やしで食べても、そのツユのうまさは変わらない。グッとくるうまみをたたえたツユは、飲んだ瞬間、全身にダシが広がっていくような感覚を覚える。そばも、このツユに合わせて変更。細いながらもしっかりしたそばは、ツユに負けない存在感がある。生もずくを乗せれば、喉越しのよさは倍増し。磯の香りもプラスされ、海そのものを味わっているような気分になる。センスのよい器でこれを食べていると、涼やかながらも豊かな気持ちになれるのだ。
『蕎麦食堂 つぐみ銀座店』店舗詳細
取材・撮影・文=本橋隆司






