つくば山麓の風土が育むお茶と蜂蜜の香り『沢辺茶園』【つくば】
店の裏手に、モコモコしたチャノキがどこまでも続いている。園主の澤辺稔さんは、出稼ぎ先の静岡から苗を持ち帰り、製茶工房を建て、1971年に開業。「つくばおろしが吹くし、霜も降りる。苦味や渋みが出て茶栽培には難しい土地」と笑うが、5月に手摘みした一番茶のヤブキタとサヤマカオリを手揉みして、深蒸し。とろみのあるまろやかな味だ。氷で急冷すれば、香りが際立ち、口中に涼を呼ぶ。昨年から、息子の稔弘(としひろ)さんが番茶を用いて、やわらかな渋みと甘みが押し上がる和紅茶も製造開始。和紅茶を淹(い)れたら、店頭に並ぶ純粋蜂蜜をぜひ足してみて。サクラ、アカシア、ミカンなど、季節の単花蜜が華やかな甘みとコクを加味し、贅沢なひとときへ誘う。
『沢辺茶園』店舗詳細
フレッシュな脂や内臓の香味にもほれる『ハム工房HISAMATSU』【つくば】
戦後より営む養豚場の隣で、2000年に工房を開業した久松茂樹さんは、父が出荷前にイモ類を与えた三元豚を、修業したドイツ式で丸ごと加工。塩やスパイスを手で塗り込んだ吊るしベーコンは、火を入れると脂がジューシーにあふれだす必買アイテムだ。もつ味噌焼き、タン、足のアイスバインなど、希少な部位も揃う。鮮度の高さゆえ、レバースモークですら臭み皆無で、ふくよかな風味にも驚く。そして、2024年に田畑を見渡す念願の直売所が誕生。舌の上でとろけるほど芳醇なハム、生ハム、サラミの切り立てや、つくばドックなど、工房限定の味はドイツビールとともにイートイン可能。妻の貴子さん、看板娘の稜子さんの笑顔にも誘われ、再訪客が絶えない。
『ハム工房HISAMATSU』店舗詳細
酪農王国の生乳から作られた健やかな味『ミルク工房もりや』【守谷】
「つくばエクスプレスが走る前まで、この辺りには牧場が多くありました」。マネージャーの長塚武さんいわく、旧満州からの引き揚げ開拓団が作ったのが大八洲(おおやしま)開拓農業協同組合。現在でも、利根川と鬼怒川の間の広大な三角州に牧場が約10軒立ち並び、発酵させた自家牧草で腸内から健やかに育った乳牛から搾乳している。守谷市を中心とした近隣エリアから運ばれた生乳で作るのが、飲むヨーグルトだ。乳酸菌を加えて20時間以上かけてゆっくり自然発酵させるのだが、菌の働き具合で温度管理を0.1℃単位で調整し、熟成を見極める。飲み心地はとろり、するり、どこか郷愁をそそられる風味だ。レアチーズケーキタルトなどもあり、あわせて味わいたい。
『ミルク工房もりや』店舗詳細
噛めば噛むほど米のうまみじわじわ『番匠夢工房』【流山】
定番の糯(もち)米に加え、うるち米や、うるち米の玄米から作ったおかきも並ぶ。「祖母のレシピで作っています」と話すのは、米農家の初澤佑樹さんだ。ガス釜で蒸し上げた自家米のコシヒカリともち米を用い、油で揚げていて、ザクッとした噛み応えのあと、ほろほろ崩れる食感が魅力だ。その固さに定評があるが、「“細”マークは小粒で、噛みやすいですよ」と、スタッフの滝川さん。味も歯応えも種類で異なるなか、通好みはうるち米の醤油。香ばしさがあとを引く。素朴な玄米、米と一緒に炊いた風味豊かなゴマ、ピリ辛の七味、シンプルに米のうまみが際立つ塩もあり、手が止まらなくなる。また、季節の野菜も販売。夏はエダマメ、トマトなどが直売価格だ。
『番匠夢工房』店舗詳細
取材・文=林 さゆり 撮影=山出高士
『散歩の達人』2026年7月号より





