品川駅の“強み”

これまでこのコラムでは、新宿・渋谷・池袋と、1日の乗降客数全国トップ3の駅を取り上げてきた。それに比べると品川駅は11位(約75万人。※注1)と、規模としては少し小さい。複数の私鉄・地下鉄が乗り入れるトップ3の駅に比べ、品川駅はJRと京急のみ、というのがその理由だろう。それでも新宿・渋谷・池袋にはない“強み”が品川駅にはある。そう、品川駅には「新幹線が停まる」のだ。

2003年に東海道新幹線の品川駅が開業して以降、特に東京西南部の住民にとっては、東海道新幹線への乗り換えが格段に便利になった。改札内の、新幹線北口乗り場近くのスターバックスや、新幹線南のりかえ口前の『caffe LAT 25°』などは、いつも多くの新幹線利用客や待ち合わせ客でにぎわっている。

今回は新幹線利用客もJR・京急の乗り換え客も、そして品川に用がある人も利用できる品川駅周辺の待ち合わせ場所を紹介していきたい。

安全祈念碑【JR9・10番線ホーム】

JRの在来線から新幹線、あるいは京急線に乗り換える人にとっては、改札を出ずに駅構内で待ち合わせができれば便利である。品川駅にはそんな改札内の待ち合わせ場所がいくつかある。

まずJRの9・10番線、上野東京ライン(常磐線)ホーム上には、車輪をかたどったモニュメントがある。

車輪の上部には、もともとディーゼル機関車の床下に付いていた鐘を利用した「希望の鐘」が設置されている。
車輪の上部には、もともとディーゼル機関車の床下に付いていた鐘を利用した「希望の鐘」が設置されている。

「安全祈念碑」と名付けられたこのモニュメントは、品川駅開業130周年を記念して2002年に設置されたもので、旧東京機関区に配置されていた電気機関車のスポーク型車輪が用いられている。このモニュメントの背後には28席の赤いベンチが用意されており、上野東京ラインを利用する人たちは、ここを待ち合わせ場所にするのが便利だ。

郵便車型ポスト/京急線乗りかえ改札の光る柱【JR改札内】

JRの在来線ホームから階段を上って、改札のある2階に進む。中央改札付近には、ひときわ目立つ郵便ポストが設置されている。

ポストの横には、山手線と品鶴線の起点をあらわす「0㎞ポスト」の標識があしらわれている。
ポストの横には、山手線と品鶴線の起点をあらわす「0㎞ポスト」の標識があしらわれている。

オレンジと深緑の、いわゆる「湘南色」に塗られた車両型のポストは、国鉄時代の郵便車「クモユニ」をイメージして作られたものだという。もちろん実際に郵便ポストとして利用することもできる。鉄道好きならぜひここで待ち合わせたい。

この2階・中央改札付近の通路は、京急への乗りかえ専用改札口にもつながっている。この京急線乗りかえ改札にはカラフルに光る柱が設置されており、待ち合わせには便利である。

しばらく見ていると7色に光り、とてもきれい。
しばらく見ていると7色に光り、とてもきれい。

水の音広場【JR改札内・エキュート品川】

「いや、やはり椅子があるところで座って待ちたいな……」と思う人は、駅構内の商業施設「エキュート品川」に行ってみよう。エスカレーターの裏側に、噴水に囲まれた盆栽をあしらった「水の音広場」があり、周囲には腰掛けられるような金属製のバーがぐるりと設置されている。建物内にもかかわらず、自然を感じることができて落ち着ける場所である。

エスカレーターの根元に設置されているためパッと見は目立たないが、憩いの場である。
エスカレーターの根元に設置されているためパッと見は目立たないが、憩いの場である。

トライアングルクロック【JR中央改札出てすぐ】

では、改札外で待ち合わせる場合はどこにすればよいだろうか。まず中央改札を出るとすぐに、ひときわ目立つ銀の時計がある。

「トライアングルクロック」と名付けられたこの時計は、多くの人が待ち合わせ場所として利用している、最もわかりやすい場所だと思われる。

待ち合わせ場所としてはとても目立つが、サラリーマン風の男性が「間違えて改札内の時計の下で待ってたよ〜」と言っているのを聞いたので、 待ち合わせの際はちゃんと「中央改札外の銀に光るトライアングルクロック」と指定する必要があるだろう。

京急ツーリストインフォメーションセンター【高輪口】

中央改札を出て左手に進むと、高輪口(西口)に出る。以前は高輪口を出たすぐのところに「品川駅創業記念碑」が設置されていたが、駅再開発に伴い移設されており、現在は見ることができない。工事が進むこのエリアでは、京急ツーリストインフォメーションセンター(TIC)が待ち合わせの目印としてありがたい存在となる。

「京急TIC品川駅」は港区観光インフォメーションセンターにも位置づけられ、多言語のパンフレットなども用意されている。
「京急TIC品川駅」は港区観光インフォメーションセンターにも位置づけられ、多言語のパンフレットなども用意されている。

TIC向かいの壁面には、京急の各車両の絵が飾られており、鉄道好きにもうれしい場所だ。

中央改札から出口に向かう時には振り返らないと見えないが、TIC入り口前に設置されている。
中央改札から出口に向かう時には振り返らないと見えないが、TIC入り口前に設置されている。

再開発が進む【港南口】エリアのベンチ

一方、中央改札から右手に進むと、港南口(東口)につながる。幅の広い通路には、両脇に石製のベンチが設置されており、座って待ちたい人にも便利である。

港南口へ向かう通路は人通りが多いので、あまり座っている人はいないようだ。
港南口へ向かう通路は人通りが多いので、あまり座っている人はいないようだ。

この「ベンチ多めでありがたい仕様」は、港南口を出たペデストリアンデッキにも及んでいる。

港南口のペデストリアンデッキに設置された石製ベンチ。ケガをしないように保護テープが貼られている優しさ。
港南口のペデストリアンデッキに設置された石製ベンチ。ケガをしないように保護テープが貼られている優しさ。

港南口エリアは、旧国鉄操車場跡に1998年に品川インターシティが開業して以降、急速に再開発が進んでいる。こうした開発の過程で、ベンチの重要性が見直されてきたのかもしれない。

港南ふれあい広場【港南口】

港南口を出るとすぐに「港南ふれあい広場」があり、植え込みに沿って多くの人が腰かけていた。

港南ふれあい広場。植え込みのところに多くの人が腰かけている。
港南ふれあい広場。植え込みのところに多くの人が腰かけている。

この広場の端に、巨大な芽のような茶色の塔が2基立っている。

ハートといわれると確かにハート形の塔。東京芸術大学鋳金研究室の制作だそう。
ハートといわれると確かにハート形の塔。東京芸術大学鋳金研究室の制作だそう。

説明書きを見ると、この塔は「♡♡の塔」という名前で、港南二丁目コミュニティ道路のモニュメントとして設置されたもののようだ。品川駅の港南口を出てすぐに目に入る場所でもあるので、待ち合わせ場所としても役に立ちそうだが、どちらの塔の下で待つかは各人にお任せしたい。

港区立汐の公園/こうなん星の公園【港南口】

港南口は、駅前に土地をゆったりと利用した公園が多くあるところでもある。品川インターシティと品川グランドコモンズに挟まれたセントラルガーデンは、「汐の公園」として東京湾の潮位と連動している水景施設などを備え、自然を感じられる場所となっている。

開放的な空間の中にベンチも多数設けられており、気候の良い時には気分よく待てそう。
開放的な空間の中にベンチも多数設けられており、気候の良い時には気分よく待てそう。

また「港南ふれあい広場」を挟んで反対側には「こうなん星の公園」があり、開放感のある空間である。

こちらの公園も遊具はなく、ベンチが多数ある。
こちらの公園も遊具はなく、ベンチが多数ある。

いずれもベンチが多く設置されていて、気候の良い時にはこうした公園を待ち合わせ場所とするのもいいだろう。

今後、リニア中央新幹線の開業なども予定されており、品川駅はますます進化していくだろう。しかし、緑豊かな待ち合わせ場所はそのままであってほしいと思う。

イラスト・文・撮影=オギリマサホ

※1:リクルート・スタディサプリ進路による(https://shingakunet.com/area/ranking_station-users/