立ち呑 脱藩酒亭 新橋浪人

にごりも季節で醪の造りを変える、広島県・三宅本店「千福」

広島産の大粒牡蠣ポン600円、魚のすり身を揚げた生がんす500円など、呉らしい肴がいい。「神力米八十五」は、戦艦大和の船員たちが愛した味を、米から復活させた純米酒だ。

店主の芳賀徳之信さんは、蔵人として千福を醸していたが、2011年、蔵元が直営店を出すと決めた際、白羽の矢が立った。以来、見知った人のいない東京砂漠で孤軍奮闘。やがて、広島出身者の集合場所となり、東京で千福が飲めると評判に。しかも、普通酒から大吟醸まで、地元・広島人たちも納得の価格。人気席は、芳賀さんが目の前に立つカウンターだ。

「にごり酒も冬と夏じゃ、醪(もろみ)の造り方を変えていて、アルコール度数も違うんですよ。冬は14度でぬる燗にしてもベタベタ甘くないし、夏は12度で飲み口すっきり」。軽妙な芳賀さんの酒話や、東京じゃ滅多(めった)に口にできない呉のご当地グルメ・がんすをつまみに、酒がするする喉元を滑りゆく。

王者大吟醸グラス1000円、蔵 純米大吟醸グラス800円、純米酒1合500円、辛口本醸造(通称さんかく)1合450円に加え、山廃仕込み大吟醸の蔵香り、にごり酒、広島産大長レモンを用いたレモン酒など種類多彩。
烏森神社裏の小路に構える小さな店。
うちは辛口サンカクから試してみて

『立ち呑 脱藩酒亭 新橋浪人』店舗詳細

住所:東京都港区新橋2-9-17/営業時間:16:00〜23:00/定休日:日•祝/アクセス:JR・地下鉄・ゆりかもめ新橋駅から徒歩3分

居酒屋ほまれ

能登の風土と技が育んだ甘み、石川県・御祖(みおや)酒造「ほまれ」「遊穂(ゆうほ)」

能登珍味は、ニシンの昆布巻き620円(税別)、フグの子の糠漬け980円(税別)、ゆず蒲鉾600円(税別)。ぶり大根煮880円(税別)は冬の定番。純米吟醸ほまれは4合1700円(税別)で、2合デカンタは特別価格1000円(税別)で提供。

飲み屋ひしめく神田の路地に、1985年から蔵元が直営する居酒屋がある。のどかな中能登町の小さな蔵だからこそ、「東京で知ってもらえるように」始めたと、店長の松本和夫さん。地元誉れの酒「ほまれ」に、2代目の藤田美穂さんと能登杜氏の横道俊昭さんが手がけ、品評会で最高金賞を何度も受賞した「遊穂」が自慢だ。まずは地元定番の本醸造「ほまれ」を。能登の粗塩ともろみそが供され、口中の塩辛さを拭うように、米の旨味がじわり。「遊穂」の雑味のない味も捨て難し。

開業当初は何でもありだったと笑う料理は、どんと塊で出す豪快なぶり大根に、フグの卵巣を毒消しに糠で3年、塩で1年漬けた珍味、イカの魚醤・いしるの鍋など、今や能登の味が満載。

右から、能登の寒造り御祖ほまれ本醸造は能登のあら塩・もろみそ付き600円1000円(税別)、燗酒大徳利650円1000円(税別)。ほまれ大吟醸は2合2600円、遊穂は純米吟醸1合750円1000円(税別)、純米酒1合650円1000円(税別)。
蔵の仕込み写真を眺める2階は座敷席。
能登料理に合うように酒は旨口!

『居酒屋ほまれ』店舗詳細

住所:東京都千代田区鍛冶町1-6-7/営業時間:11:30〜13:30•16:30〜23:00/定休日:土•日•祝(土は10名以上の予約がある場合、営業)。/アクセス:JR・地下鉄神田駅から徒歩2分

樽平 神田店

吉野杉の樽で寝かせた純米辛口、山形県・樽平酒造「樽平(たるへい)」「住吉」

山形の二大郷土料理が名物。3〜4時間煮込んだ玉こんにゃく煮二串450円と、米沢牛のコクと甘みと、サトイモの舌触りがいい芋煮680円。冬は熱燗もいい。

暖簾(のれん)をくぐると、コの字カウンターで妙齢の紳士たちが独酌を楽しんでいる。元禄年間創業の山形の酒蔵が、昭和5年(1930)、直営酒場の先駆けとして神楽坂で開業。現在は、銀座とここ神田の2店舗を営む。酒は2銘柄4種が主力看板だ。辛口の「住吉」と、辛口ながら旨味のある「樽平」で、金は山田錦を、銀はササニシキを用い、どれも吉野杉の樽で1週間ほど寝かせた樽酒。「住吉のほうが人気ですが、私は常温の樽平が好きでねぇ」と、店長の原田喜久也さん。ほんのり黄味がかった色と香りに、誰もがほくそ笑む。

酒肴は多彩だが、山形名物ははずせない。玉こんにゃくは干しイカの出汁がしっかり染み、芋煮はこっくりとした味で、こりゃ2合じゃ済まないな。

生酒は300mlの瓶で用意。純米大吟醸住吉・樽平は各1800円、雪むかえ純米生吟醸950円。
樽酒は2銘柄4種を揃える。金(山田錦)住吉1.6合1100円、銀(ササニシキ)住吉1.6合750円、金 樽平2合1200円、銀 樽平2合850円。
本来の味がわかる常温を飲んでみて

『樽平 神田店』店舗詳細

住所:東京都千代田区内神田3-13-2/営業時間:16:30~23:00(土は~22:00)/定休日:日•祝/アクセス:JR・地下鉄神田駅から徒歩1分

八海山千年こうじや

軟らかな水で仕込む淡麗な味わい、新潟県・八海醸造「八海山」

麹漬けお刺身3種盛り合わせ1080円は、醤油麹でマグロを、塩麹で白身魚や八海山サーモンを漬けたもの。八海山ねり粕使用 クリームチーズの味噌漬け702円、特別本醸造の燗。

直営店はいくつかあれど、カウンターであれこれ飲める日本酒バーは希少な存在だ。本醸造、吟醸などに加え、三段仕込みの最後に、水ではなく酒で仕込む、ほんのり甘い貴醸酒や、発泡にごりなどもずらり。迷ったら、3セットある呑み比べセットで3種を利いて。八海山の仕込み水は、霊峰八海山の伏流水。超軟水ゆえに、すっきりきれいな淡麗旨口になるというが、酒の味の多彩さには驚かされる。

また、酒蔵料理もいい。仕込み水と同じ伏流水で育った八海山サーモンや、越後もち豚などが用いられ、酒造りから生まれた麹や酒粕によって旨味を増幅。すかさず杯を傾ければ、酒の底力を思い知る。さらに、壁一面の販売棚には限定酒やあまさけが。見逃せない。

呑み比べBセット60ml×3杯1620円は大吟醸、純米吟醸、吟醸。
酒は60mlから提供。特別本醸造378円、純米大吟醸 金剛心1728円のほか、しぼりたて原酒 越後で候 青ラベル、貴醸酒、普通酒、発泡にごりもある。
料理と酒のマリアージュを楽しんで。

『八海山千年こうじや』店舗詳細

住所:東京都中央区日本橋室町2-3-1COREDO 室町2 1F/営業時間:11:00~14:00LO・17:00~22:00LO(日・祝は~21:00LO、ドリンクはフードの30分後にLO。販売は10:00~23:00で、日・祝は~22:00)、バーの営業は17:00~22:00LO(土は15:00~、日・祝は15:00~21:00LO)/定休日:無/アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線三越前駅から徒歩1分

酒ノみつや

ここは酒の宝箱? 150種の圧巻の品揃え

店の奥にある「裏の部屋」が角打ちスペース。グラス120mlで提供される酒は、常時5~6種で値段は300~450円。

「小売りの酒屋さんが元気がない」なんて最近聞くが、この店を見ると「店次第?」と思う。輸入ビールやカリフォルニアワインの充実でも有名だが、日本酒も壮観。約150種の品揃えには、レアな銘柄がずらり。質問すればどんな酒かをすらすらと答えてくれる。

「超一流の蔵元の酒ばかり売れても面白くない。僕はマニアックな蔵元に魅力を感じます」とは店主の三矢治さん。「蔵元を訪れて直接交渉を?」と聞くと、「ですね」とさらり。そこへすかさず「治さんはすごいんですよ。蔵元から信用されるために、まずはお金をかけて立派な冷蔵庫を作ったんだから」と常連さん。「俺より詳しいじゃねえか」と笑いつつ、「日本酒は保存状態が大事だからね」。“小売店のマイスター”と勝手に表彰したい。

実は大正13年創業の老舗で現在3代目。「『奥』は祖父の出身地、愛知県西尾市のお酒。そういう縁も大切にしたい」と三矢さん。
三矢さん(右端)は、17歳から22年間滞米していた経験が。そのためお客さんもインターナショナル。
麒麟山(きりんざん) 純米吟醸辛口 麒麟山酒造[新潟県]400円。すっきり辛口で、 米の旨味も絶妙。
奥 清酒 初しぼり吟醸 生 純米吟醸原酒 山崎合資会社[愛知県]400円。甘・酸・辛が段階的に来る一推しの旨さ。
三芳菊(みよしきく) 阿波山田錦 特別純米 無濾過生原酒 おりがらみ 三芳菊酒造[徳島県]350円。上質なアイスワインを連想する柔らかさ。

『酒ノみつや』店舗詳細

住所:東京都杉並区阿佐谷南1-13-17/営業時間:11:30~20:00か21:00(土・祝は~20:00、日は15:30~19:30)/定休日:不定/アクセス:地下鉄丸ノ内線南阿佐ケ谷駅から徒歩4分、JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩10分

角打ちフタバ

酒がつなぐ、地元コミュニケーション

店長・関明泰さんを囲んで、カウンターに常連が集う。女性の一人客も多く、和気あいあい。

創業70年の酒屋が角打ちを始めたのは、2013年のこと。酒離れが進む折、酒に親しめ、交流が図れる場を作るべくスペースを設けた。ぜひトライしたいのは、地元の町名を冠したオリジナル日本酒「江戸 鳥越」。“生まれ育った町を活気づける酒を造りたい”という思いから、店長・関明泰さんが企画し、誕生に至った。

月一度催す試飲会で振る舞った銘酒もメニューに登場。月毎にラインナップが変わり、“めっけもん”に遭遇できる。

あさりの酒蒸400円。アテは皿に盛り、ツマミによっては温めて提供。酒は120mlで300~500円。
東京 無濾過生原酒 豊島屋酒造[東京都]500円。酒屋の青年会が企画した東京産の酒。
江戸 鳥越 本醸造 和蔵酒造[千葉県]300円。地元愛が込められたオリジナル日本酒。

『角打ちフタバ』店舗詳細

住所:東京都台東区蔵前4-37-4/営業時間:平日12:00~21:00、日曜営業の場合は12:00~19:00 /定休日:不定/アクセス:地下鉄大江戸線蔵前駅から徒歩5分

構成=フラップネクスト 取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、菊野令子、沼 由美子 撮影=オカダタカオ、丸毛 透、金井塚太郎