fika
緑揺れる庭と焼きたてのパンに誘われて
「犬の散歩途中に、この平屋建てに出合ったのよね」。パン作りが得意な斎藤玲子さんと、美大出身の弥生さん親子が、数年前の開業時を思い出して笑顔を合わせる。草ぼうぼうだった庭を整え、大きく育つ植物の苗を無造作に植えたのが、「やっと、もっさもっさしてきました」。窓辺に座れば、その元気な枝葉に手が届きそうだ。毎日 20種類ほど焼き上げるパンは、素朴な木製ケースに並ぶ。選択に迷ったら、旬野菜のっけのフォッカチャを、ぜひ。
『fika』店舗詳細
カフェ メゾパッソ
敷地180坪。季節感あふれる庭園カフェ
畑の間の砂利道の突き当たり、「こんなところに!」と、初めてなら必ず驚く場所にある。揺れる野の花、青々とした芝を横目に、大谷石を踏んで進むと、高原のリゾートに迷い込んだ気分だ。近隣の農家が育てる野菜を使うランチが人気で昼時は混むが、「静かな昼下がりがおすすめ」と、店主の西村早苗さん・有司さん親子。広い庭を眺めつつぼんやり時を過ごすと、塀の上を闊歩する猫を発見。深秋は、ヤマモミジの紅葉も美しい。
『カフェ メゾパッソ』店舗詳細
tronc
自然素材に囲まれて手仕事光るケーキを
「自然体でていねいに暮らして、好きな空間で自由に表現できれば」。都内のカフェで働いていた高楠友和さんとあきさん夫妻のささやかな夢を、古民家での開業を応援する市の施策が後押しした。めぐり合ったのが、幕末創業の『ましや呉服店』の、築100年を超える納屋。朽ちていたが、「小道、庭、お稲荷さんと弁財天に魅せられて」、即決。立派な梁(はり)をはじめ、古き良き自然素材を可能な限りそのまま使い、空間を蘇(よみがえ)らせた。看板メニューは、パティシエの友和さんが作るケーキ。季節の果物や地元産のみりんを使うやさしい甘みに、身も心も潤っていく。
『tronc』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=松井一恵(teamまめ) 撮影=高野尚人