佐一
元寿司職人の繊細な技にほろ酔う
両親が開いた大衆酒場を、寿司職人の佐藤雪男さんが引き継いだのは2009年。古い付き合いの豊洲の仲卸などから仕入れた鮮魚を、良心的価格で味わえる。例えば、イワシはさばきたてを包丁でなでるように和え、なめろうに。まぶされたトビコの食感が心地よい。当日はそのイワシの内臓周辺の脂身を刺し盛りに添えてくれたが、コクと爽やかな甘みに驚く。魚を触って約半世紀、店主の技と知恵の詰まった酒肴が、地酒を進ませるのだ。
『佐一』店舗詳細
うち田
男気あふれるムサコ最大級のやきとり
ヤゲンなんこつ200円は回りに身がたっぷり、官能的なねっとり食感のつくね230円はピンポン玉級のデカさ。どのやきとりも巨大で、持つと串が折れそう。「お客さんが喜ぶからどんどん大きくなり、串も太くしました」と店主の内田智也(ともなり)さん。柔らかな肉質の信玄どりのうまさを引き出すため、基本は天日塩で提供。肉の旨味が詰まった巨大胸トロ200円もねぎま230円も確かに塩が一番!
『うち田』店舗詳細
晴坊
商店街2階で地酒と肴のペアリング謳歌
中延出身の吉川康二さんは大の日本酒好き。「味がしっかりのった地酒を中心に15~20種用意してます」。ゆえに、酒肴も日本酒に寄り添うものが豊富。中延商店街の精肉屋から仕入れる和牛カイノミのたたき1408円は山廃などどっしり系に合い、ホタルイカとアボカドの生のり和え770円は酸のあるフレッシュな酒が磯の風味を引き立てる。「ただの居酒屋」と謙遜するが、各料理外れなし!
『晴坊』店舗詳細
鳥ふじ
木造ビルの奥から常連たちの笑い声
檜のカウンターは50年近く使いこまれているのに白肌が美しい。「週一以上、クレンザーで磨いてます。店の宝ですから」と2代目。そこへ止まり木のように集う常連に混ざり、まずは一杯。ササミや野菜をマヨネーズで和えた鳥サラダも薄衣のから揚も、どこか懐かしい味わいだ。何度も通いたくなる味と雰囲気。壁にある50周年祝いの寄せ書きを書いた常連方も、そう思ったに違いない。
『鳥ふじ』店舗詳細
パーラーCheesiiz
たぶん、中延イチゆるい酒場
20代は沖縄の米軍基地で働いていた店主のヒロシさん。つまみはアメリカのスパイスを振るフライドポテト500円やスパム&玉子焼き660円など、沖縄人の大衆食がずらり。料理の味は濃いめでただでさえ酒が進むのに、生ビールは泡無し、サワーも濃いから酔いが加速。「酒と割り材が半々の常連もいます」というヒロシさんもすでに赤ら顔。マイペースな店主のキャラにハマる、のんべえ続出!
『パーラーCheesiiz』店舗詳細
大衆酒蔵 漁
豊洲仕入れの鮮魚と淡麗な酒が相思相愛
この日の刺身盛り合せは生マグロやブリなどが彩り、分厚い活ダコのプリプリ食感が鮮度を物語る。「うちはランチもやっているので魚介の回転率も高い。コスパはよそに負けませんよ」と足しげく豊洲に通う橋爪浩一さん。真ガキは殻が20㎝近くありながら2個で935円! 一気呵成に啜れば鮮烈な磯の香りが広がり、そこに八海山や春鹿など淡麗辛口の地酒をキュッとやれば、旨味開き笑顔咲く。
『大衆酒蔵 漁』店舗詳細
戸越銀座バル NEKO NO HITAI
紳士淑女に愛される猫を路地裏に発見
店主のナミさんは料理好きが高じ、2011年に店をオープン。トリッパのトマトソース煮715円はテニアンペッパーの辛さがアクセント、紅芯大根とパクチーのサラダ小625円はドレッシングの味噌が隠し味と工夫が随所に。どのワインと合わせよう、と黒板を見れば猫のイラストが。「お客様が描いてくれたんです。陶芸が趣味のお客様は店の食器を作ってくれました」。この店、お客の愛深し!
『戸越銀座バル NEKO NO HITAI』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=山出高士、井原淳一
『散歩の達人』2020年3月号より