『街角図鑑 街と境界編』

街なかの散歩で出合ういろんな“なかま”を集めた図鑑

三土たつお 編著/実業之日本社/1700 円+税
三土たつお 編著/実業之日本社/1700 円+税

「図鑑」というと、不思議と小さいころに読んでいた動物や昆虫、魚、植物などの生き物を集めたものや、電車や車など乗り物を集めた図鑑が一番に頭に浮かぶ。とはいうものの、『散歩の達人』本誌ではたびたび「図鑑」と名の付く特集や企画を作っている。最近の特集だと、2020年7月号の「東京さんぽ図鑑」、2020年8月号第2特集の「350㎖缶酒図鑑100」など。大人になった今でも、「図鑑」に心ときめき、ワクワクするのには変わらない。
この『街角図鑑』は、あらゆるジャンルの路上観察者が寄稿してできた本だ。2016年に刊行された第1弾はパイロンやマンホール、段差スロープ、信号機やカーブミラーなどなど、街角の足元にある物から視線の先に見えてくるものが多く取り上げられている。対象物をたくさん集めて微妙な違いまでも徹底的に比較し、目の付け所が超マニアックな図鑑だ。
第2弾は第1弾に続き、配管、室外機、ガスメーターなど、私たちの生活を支えるどこの街にも必ずや存在する物も取り上げつつも、商店街や道路、交差点、歩道橋など対象物のスケールが大きくなった。さらに第3章「街と街の間にあるもの」では、川、橋、トンネル、鉄塔など、街の境界線にあるものにもスポットを当てている。第1弾に比べて必然的に図解の対象範囲も広くなり、私が最も興味深かったのは「はじめに」で掲載されていた写真の図解だ。車をはじめ、自販機やパイロンのメーカー名まで、目に見えるものをとことん示し、説明できるものの多さに気付く。これを見ると、「なんてことのない景色」なんて世の中にはないのだ、と思う。(佐藤)

『ダメになる人類学』

吉野 晃 監修 岩野邦康・田所聖志・稲澤 務・小林宏至 編/北樹出版/2300円+税
吉野 晃 監修 岩野邦康・田所聖志・稲澤 務・小林宏至 編/北樹出版/2300円+税

ダメ(駄目)の線引きは状況に依存し、場合によってはタメ(為)になる。本書はそんな規範や価値の不確かさを、文化人類学の観点でまとめた事例集。生業・コトバ・家族など10部で構成され、「勝手に使っちゃダメですか? ――モノの所有と使用」などユニークなタイトルが並ぶ。世の中をみつめるヒントが満載だ。(町田)

『膝を傷めない、疲れない Q&Aでわかる 山の快適歩行術』

野中径隆 著/山と溪谷社/1500円+税
野中径隆 著/山と溪谷社/1500円+税

数年前に北アルプスを下った際、最後の岩場の連続で膝が悲鳴を上げた。どう歩けば痛みを抑えられるか、考えながら下ったものだが、こんな本があれば読んでおきたかった。本書は登山ガイドの著者による山の歩き方の教科書。登山における体の動きを順番に理解しやすいように、写真も多用して構成されている。(土屋)

『おべんとうの時間がきらいだった』

阿部直美 著/岩波書店/1900円+税
阿部直美 著/岩波書店/1900円+税

数多くの“弁当と食べる人”を夫とともに取材してきた著者が、自身の家族や弁当、食べることについて振り返るエッセイ。弁当の蓋をあけると、湿っぽい食卓がよみがえる日々。積み重なってきた機微を誰かに理解してもらうことは難しい。他者とのかかわりの中で受容と反発を繰り返す様子に、自然と気持ちが重なる。(渡邉)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。