『地図で楽しむ本当にすごい千葉』

地質、歴史、産業……千葉県がまるわかり!

都道府県研究会/宝島社/1500 円+税
都道府県研究会/宝島社/1500 円+税

一言でいえば千葉県大事典。千葉県の基礎データに、地形、歴史、神社仏閣、交通、産業とあらゆる角度から県内の情報を掲載している。その名のとおり、各項目は地図でわかりやすく紹介されており、専門的な知識がなくとも十分に理解し楽しめる内容だ。
まず特筆すべきは、『散歩の達人』2020年10月号の第2特集でも紹介した「チバニアン」の項目。地質学的にどのような意味を持つのか、そもそも何なのか、発見された市原市田淵近辺はどのような場所なのかを、写真や地図、グラフを用いてまとめてあるので、お出かけ前にぜひ一読を。さらに地形の章を読み進めれば、チバニアンが、その一帯における特異的ものではなく、むしろ千葉の地形の複雑さを表す氷山の一角にすぎないとも思えてくる。千葉の大地がこんなにもダイナミックだったとは!
縄文時代から人が暮らした千葉県だが、大きく発展を遂げたのは江戸時代。房総半島内だけでも、大多喜藩・佐貫藩・館山藩などがひしめき合い、その一方で、地理的な近さゆえに幕府直轄領が多くおかれ、牧や新田開発が進んでいった歴史も興味深い。ページをめくっていけば、土地の活用のされ方が手にとるようにわかり、現在の工業地帯・ニュータウン・新東京国際空港がそこにある背景にも納得する。
他にも、ファミレス店舗数全国2位、マッシュルームの産出額全国1位など意外な発見のあるランキングや、全54市町村ガイドも収録され、とにかく盛りだくさん。千葉県民も県外の民も、その実力にきっと驚くことだろう。(町田)

『小江戸ものがたり 第十四号』

川越むかし工房/600 円+税
川越むかし工房/600 円+税

川越の街歩きのお供に一冊しのばせたい、小さな文化情報誌。8年ぶりの刊行となる第十四号は、川越ゆかりの画家・近藤洋二の足跡をたどる骨太ルポに、昨年取り壊された映画館『鶴川座』の特集と読みごたえ抜群。掲載されている写真はおそらくどれも貴重なものばかり。地元の人も知らない、川越の一面に出合えるかも。(吉岡)

『東京レトロ写真帖』

秋山武雄 著 読売新聞部内版編集室 編/中公新書ラクレ/1100円+税
秋山武雄 著 読売新聞部内版編集室 編/中公新書ラクレ/1100円+税

著者は浅草橋の老舗洋食店『一新亭』の店主。日々の仕事の合間に撮影した東京の風景と、それらの風景から回想したエピソードが綴られる。後楽園球場の明かり。駅近くに間口の狭い飲食店が並ぶ渋谷。花やしきの“回転塔”がある浅草。“いつもの街”をほんの少し飛び出した高揚感がとらえた一瞬が、どれもまぶしい。(渡邉)

『のみタイム1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』

パリッコ スズキナオ 著/ スタンド・ブックス/ 1500円+税
パリッコ スズキナオ 著/ スタンド・ブックス/ 1500円+税

パリッコさんとスズキナオさんによる「家飲みを楽しむ100のアイデア」集。コロナ禍でも楽しくお酒を飲むヒントを教えてくれる。「人気のお取り寄せで飲んでみる」くらいならわかるが、「皿洗いで飲む」「替え歌を考えながら飲む」などは達人の境地。くだらないけど気になるアイデア満載で何度も読み返してしまう。(土屋)

『散歩の達人』本誌では毎月、「今月のサンポマスター本」と称して編集部おすすめの本を紹介している。2020年も年の瀬にさしかかり、いよいよそれを一斉公開する時が来たと言えよう。ひと月1冊、選りすぐりの12冊を年末年始のお供に加えていただければ幸いである。