店主自らアメリカで仕入れたレギュラー古着がずらり
コロナ禍以降、大型の古着店が急増した下北沢南口商店街。駅を出て、人混みをよけながら三軒茶屋方面へ進むと、六差路を過ぎた辺りから、今度は個人店が目立つようになる。通り沿いには小箱のライブハウスや、地元に密着した飲食店が立ち並び、それはいわば下北沢らしい景色。古着店『hickory』もその中にある。
店を始めるにあたり、下北沢や三軒茶屋で物件を探していた藁谷さん。自転車でいろいろ見て回り、この場所に出合ったという。「ふらっと入ってくるフリーのお客さんは、三軒茶屋よりも下北沢のほうが多い」そうで、自然と品揃えもビンテージより日常的に着られるレギュラー古着が中心になっていった。
「自分も元々、手の届きやすいレギュラー古着が好きだったんです。年4回、アメリカに仕入れに行っています」
アメリカでは「アウトドアテイストを感じられる古着」を探す。『hickory』に並んでいる品々は、どれも藁谷さんがじっくり目利きして選んだものだ。
ていねいにメンテナンスされた90年代のアウトドアものは、海や山だけでなく、タウンユースにももってこい。コーディネート次第で工夫が効くアイテムで「ボタンダウンシャツのような日常着とも相性がいい」という。
独自の品揃えで興味の幅をぐっと広げてくれる
客層は、20〜30代を中心に、40代、50代も訪れる。気になる商品を手に取ったり、それを着た自分の姿を想像していると、ふと耳に心地よい音楽が流れ込んでいることに気づく。こんなふうに欲しいものをじっくり選べるのは、距離感がちょうどいいからか。
「自分自身、お店で店員さんに声をかけられるのが苦手な方なので、あえてこちらから積極的には接客しないようにしています」
種類豊富なシャツに触れると、肌当たりが優しく、着心地もよさそう。なかでも、1818年にアメリカで創業されたBrooks Brothersは、トラッドの総本山のようなブランドで、『hickory』では長年取り扱っている。
「スラックスはもちろん、チノパンやデニムパンツと組み合わせてカジュアルにまとめるのもいいです」
コットン生地の柔らかな風合いや、ほどよい落ち感は、古着ならではの魅力だろう。
Patagoniaのジャケットは、アウトドアブランドでありながら、実はどんな服装にも合うのだとか。
「チノパンやデニムパンツ、さらにスラックスのようなドレッシーな洋服に合わせるのもいいと思います」
藁谷さんの言葉を聞き、先程見たBrooks Brothersのボタンダウンシャツの上に羽織るのはどうだろうと考えた。店独自の品揃えに感化され、興味の幅が広がると、普段とは違うファッションの楽しみが見つかる。
目的の一品を黙々と探すことができる一方で、知りたいことがあれば藁谷さんへ。投げかけた質問には、とても気さくに答えてくれる。
店内には、ソウルやジャズなどの音楽や、映画をモチーフにしたTシャツも。そんなカルチャーの香りにも心をそそられる。
ここで出合った一品が、やがて毎日使いたくなる愛用品に
改めて、隅々までぐるっと見渡す。すると、帽子やバッグ、シューズといったアイテムが目に入った。キャップは、アウトドアものや企業のロゴが入ったものなど、どれも絶妙に興味を引くデザインで、それでいて使い勝手がよさそう。まずはこういうアイテムを一つ取り入れてみるのも、奥深い古着の世界へ進む第一歩になるかも。
JANSPORTのデイパックも、『hickory』で昔から取り扱っている。長所は「デイリーに使えるサイズと、完成されたシンプルさ」と藁谷さん。耐久性がしっかりしているので、アウトドアブランドのバックパックにありがちな、内側のコーティングが剥がれるという問題もない。使えば使うほど愛着が湧くに違いない。
リラックスした雰囲気の中、自分はどういう服を着たいのか想像を広げてみる。『hickory』が垣間見せてくれる古着の世界は、なんだかとても親しみやすい。比較的リーズナブルな価格帯もうれしい。のんびりと下北沢を散歩する途中で立ち寄るのにぴったりだ。
取材・文・撮影=信藤舞子






