手塚理美
てづかさとみ/東京出身の俳優。小学生のころからジュニアモデルとして活躍し、映画、舞台、ドラマと幅広く活動。2025年に芸能事務所から独立、フリーに。趣味は散歩。Instagram:tezuka_satomi
初夏の風が心地よい5月の金曜12時、北千住駅の改札で待ち合わせ。
手塚 北千住は、電車の乗り換えでしか使ったことがなかったけど、下調べをしたら、行ってみたいところがたくさんありました~。お米屋さんのおにぎりも見つけちゃったし、「開かずの踏切」と呼ばれる大きな踏切があって、これは、踏切好きの私としては、絶対に行かなくちゃダメでしょ!
—— 行ってみたいところ、全部はまわれないと思いますが……今日も1日お供をさせていただきます(笑)。
手塚 行ける範囲で、無理なく、気の向くままに行きましょう!!
『小堀米店』は、注文を受けてからにぎってくれるおにぎりが魅力的。「赤門店」でうめのおにぎりを買い、「開かずの踏切」と呼ばれる「大踏切」を渡ってから、『小堀商店』の「旭町店」でも同じくうめのおにぎりを買う。おにぎりは隅田川沿いで食べる予定だったが、日差しが強い。おにぎりを持ったまま、足立市場へ出る。
—— お昼を過ぎちゃうと、市場は静かですね。手塚さんが狙っていた、ねぎまそばの『たけうち』さんは……お、まだやっているかも! 走ります!
手塚 暖簾(のれん)はもう出ていないわ。
—— 伺いましたが、もう終わりでした。
手塚 ん~、残念! ねぎまそばは、絶対おいしかったと思う。私には分かるのよ……。市場の入り口にベンチがあったので、気を取り直して、おにぎりをいただきましょう。
足立市場は、鮮魚を中心とした魚河岸。改めてホームページを確認すると、奇数月の第2土曜(1月は第3土曜)には、一般向けの開放もあるようだ。飲食店も14時くらいまでは営業していそうだが、売り切れ看板だったかもしれない。
手塚 あら、この像は芭蕉さん? 草加をガチロケハンしたとき(2026年2月号参照)にも、芭蕉さんがいらっしゃったし。つながっていますね。
—— 北千住は、松尾芭蕉の『奥の細道』の出発点で、日光街道の宿場町つながりです。芭蕉さんも歩きますが、手塚さんも歩きますね。おっとそこ、店先でところてんを売っていませんか? のぞいてみましょう。
ノーマークだったが、それは『山栄食品』という明治6年(1873)から続く老舗コンニャク屋だった。タレがセットになった持ち帰り用ところてんを購入。そのあとは、老舗の団子屋『かどやの槍かけだんご』で焼きだんごをペロリ。そして、銭湯研究の第一人者・町田忍さんが「銭湯のゴールデン・トライアングル」と名付けた、千住大橋駅を要に常磐線と隅田川に挟まれた扇状に広がる地区を歩く。お庭が豪華な『タカラ湯』は金曜定休。行ってみたかった『角打ちモトハラ』も、土曜のみの営業みたい。
—— 商店街をタテにヨコにと、あっち行ったりこっち行ったりしていますが、パン屋さんにお総菜屋さんにと、毎日の食卓の助けになるお店がいっぱい。ときどき佃煮屋さんなど、宿場町っぽいお店があるのも、なんかかっこいいです。
手塚 八百屋さんがたくさんあるのも気になりました。皆さん、きれいにお野菜を並べてらして、しかもお安い……わ! もしかして、この傾いた看板! 『双子鮨』さんかしら! うそ~、北千住にあったの? とんねるずさんの「きたなシュラン」でも紹介されていたし、ずっと気になっていたの!
—— どうします? 入りますか?
手塚 どうしようかしら?
—— 今一緒にいるときに入らないと、二度と入ることはないかもしれませんよ。
1日の中盤で、おなかに余裕を残しておきたい二人。恐る恐る入った『双子鮨』ではかっぱ巻一人前とビールを注文。かっぱ巻は、一人前がまさかの3本分という大量巻でびっくり仰天、一気に満腹に(あとで調べたら、一人前で3本はスタンダード)。カウンターの後ろでは大柄の若者が丼ものを頼んでいて、その使い方が正解の様子。
おなかは膨れてしまったが、北千住駅西口すぐの飲み屋横丁、通称「飲み横」に迷い込む。立ち飲みの串揚げ『天七 本店』を横目に、開店すぐの『千住の永見』へ滑り込む。看板メニューの千寿揚げ(千住揚げ、ではない)にビールで乾杯。
手塚 今日、ここまで歩いて思ったんだけど、北千住って、グローバルな感じね。いろんなものが詰まっていて、面白い。飲食だけじゃなく、隅田川と荒川と大きな川に挟まれて、自然もある。それに人もいい。なんだか、おおらかね。ちまちましていないっていうか。
—— さあ、ビールを飲み終わったら、手塚さんが17時で予約をとってくださった『千寿 竹やぶ』さんに移動しましょう。
手塚 『千寿竹やぶ』さんは、夕方からの営業時間を確認したくてお電話したら、4名までなら食べログで予約できると教えていただいて。食べログを開いたら残席4。慌てて予約しちゃいました。「手塚理美のガチロケハン」も10回目にして、ようやく、私の大好物のお蕎麦(そば)屋さんで締められそうで、それはうれしいんだけど……。
—— だけど、とは?
手塚 この近くに、いくらでも気になるお店があるじゃない。
—— 本来、ガチロケハンに事前予約は無粋ではありますよね……。
手塚 そうなの。足を運んでみないと分からない人やお店に出会えるっていうのが、ガチロケハンの本来あるべき姿なのよ!
構成=H岩美香(編集部)
『散歩の達人』2026年8月号より







