手塚理美
てづかさとみ/東京出身の俳優。小学生のころからジュニアモデルとして活躍し、映画、舞台、ドラマと幅広く活動。2025年に芸能事務所から独立、フリーに。趣味は散歩。Instagram:tezuka_satomi
次号『散歩の達人』7月号では、つくばエクスプレス沿線を特集する。移住者に人気の守谷? 変革中の未来都市・つくば? 広いエリアのうち、どの街をガチロケハンするかは悩みどころだ。早朝6時台、「いろいろ検討して、流山おおたかの森に決定します」と、手塚さんから決意のLINEが届いて約2週間後。春光うららかな金曜の11時15分、つくばエクスプレス・流山おおたかの森駅改札で待ち合わせとなった。
—— お待たせしました。私、流山おおたかの森駅で降りるのは、はじめてかもしれません。
手塚 今日もよろしくお願いします。私もはじめて。秋葉原駅からつくばエクスプレスに乗ったら、30分もかからない。あっという間でした。
—— わあ~、駅前広場は開放感がありますね。大きなケヤキの木があるし、ベンチもいっぱい。小さな子供も安心して遊ばせられそうです。
手塚 この南口は、車の乗り入れが抑えられた歩行者中心の設計になっているんですって。
—— お詳しい。
手塚 YouTubeで、ホリエモンさんが流山市長と一緒に街を歩きながら、いろいろお話しされている動画を見たの。市長はアメリカのヒューストンにいたご経歴があって、その経験が街づくりに生かされているみたい。保育園送迎用の循環バスもあるんですって。
—— 下調べの鬼ですね。
手塚 私、調べたり計画したりするのが好きなのよ。さて、ガチロケハンのスタートに欠かせないおにぎり屋さんは、タカシマヤ(フードメゾン)に『越後穂庄』さんというお店があるはずなの。
—— 下調べも事前準備も、おんぶにだっこですみません。
南口駅前の「森のまち広場」のベンチに座り、子供たちの遊び声をBGMにおにぎりをパクリ。
10分ほど歩いて「市野谷 水鳥の池」へ。駅名にもなっているオオタカや、絶滅危惧種に指定されているセイタカシギなどが観測できる池だ。できることならオオタカを拝みたかったが、そう簡単に見つかるわけもなし。
とんぼ返りした駅直結の「流山おおたかの森S.C.」は、駅前開発の中心であり、アパレルや飲食店、スーパー、書店、医療施設など、あらゆるものがそろうショッピングセンター。その中でも、手塚さんのお目当ては「FLAPS」にある屋上テラス。
手塚 この屋上、来てみたかったの! 屋上に上がるまでの階段は回遊路みたいになっているし、上り下りするだけでも、いいお散歩になりそう。そして、なんといってもこの景色! 駅前広場も、遠くに広がるマンション群も……もう、流山が全部見えちゃう。さらには、電車の行き来まで見えちゃうのがうれしい~。
—— 鉄道ファンにもおすすめですね。1階に下りて先に進みましょう。
手塚 ちょっと待って。4階のフードコート、生ビール290円(撮影時のねだん)ですって!
—— 少し早いですが、作戦会議しちゃいます?
手塚 290円だものね。仕方ない。寄るしかないわね、うふふ。
席に座り、平日の昼間のすきま時間をかみしめてから、次の目的地、『森の美術館』まで25分ほど歩く。両脇に流山市立おおぐろの森小学校とおおぐろの森中学校が立つ道を進む。校舎は「高台の緑に溶け込む 森の中の木の学び舎」をコンセプトとし、竣工はそれぞれ2021年、2022年。
手塚 このあたりは街としては新しそうだけど、人工的すぎないというか、押しつけがましさがないわね。
—— 歩いていても心地いいですね。そして、はい、『森の美術館』に着きました。想定より少し早いので、周りをもう少し散策してみましょうか。
手塚 あれ、竹林じゃない?
—— 「森の小径」と書いてあります。
手塚 奥まで入れそう。わ~、土のいい香り。足元もふわふわ。人間は土の上を歩かないといけないわね。
『森の美術館』は、風景や人物像の油絵の展示を中心とした美術館。この日は「橋本大輔展―記憶の場所―」という企画展が開催されていた。
—— 橋本大輔さんの絵は写実的だけど、写真とは違う光や奥行きが印象的でしたね。
手塚 静かに鑑賞できて、贅沢な時間。展示も、森に囲まれた建物も素敵だけれど、「森の小径」もとってもよかった。別世界に迷い込んだみたいでした。
—— 「森の小径」は、館長さんがお一人で手入れをされているそうですよ。流山市のお隣、埼玉県三郷市の元市議の方ですが、今日はご不在でした。
手塚 残念。お会いしてお話を伺いたかったなあ。
来た道を、駅前の雑踏に向かってゆっくり戻る。調べたなかで一番早く開く居酒屋のオープンは16時。おにぎりがある時間に来て、ビールが飲める時間に帰る……そんなルールだから、毎回、街の滞在時間は長めだ。ちょいちょい挟む作戦会議も多い。
—— やっと時間になりました。はい、こちらがクラフトビールが飲める『大衆酒場 森のBEETLE』さんです。
手塚 ここまで歩いて、なんだか、はじめて来た街じゃない気がしてきてるんだけど……どこかで見たことがあるような。あっ、このビル! 雑誌のロケで、ここの3階でワインと地ビールをいただいたことがあります! あの時は車で連れて来られたの。歩かないと、街に来たって感覚が残らないのよね(笑)。
『大衆酒場 森のBEETLE』で、キュウリの浅漬けや里芋のおでんなどをつまみに、ビールで乾杯。
手塚 最初は知らない街だったけど、実際に来て、歩いてみて、流山おおたかの森が住みやすい街なんだってことは、よく分かりましたね。郊外というと、私たちが20代の頃は『金妻』ブームなんかもあって、ちょっとスタイリッシュで豊かな生活に憧れる時代だったけど、同じ郊外でも、それとは少し違う。家族、特に子育て世代のファミリーにやさしい街でした。
—— お引っ越し先として、いかがですか?
手塚 そうね。でも私、子育てはもう、とっくに終わっちゃったのよ(笑)。
クラフトビールは「のろしブラウンセゾン」といった。杯を重ねてから、焼き石の上で焼いてから食べる「朝挽きレバテキ」というメニューが人気のようだったので、焼く様子を動画に撮ってみた。楽しかったですね、また来月、と別れたあと動画をチェックしたら、ぜんぜん映っていなかった。なぜだ。
構成=H岩美香(編集部)
『散歩の達人』2026年6月号より






