【多摩のA面/たまらんB面】とは
東京都の西側、23区以外のエリアにあたる多摩地域。このエリアに越してきて日が浅い筆者が、30市町村を1つずつ歩き回って調査! 1つの市町村ごとに街の見どころを紹介する【A面】と、気になるテーマを深掘りする【B面】の二部構成でレポートします。
青梅市 DATA
面積……103.31平方キロメートル
人口……12万9105人(2025年1月現在)
山と台地が接する扇状地! イノシシの形の広〜い青梅市
中央線の「青梅特快」に、「青梅マラソン」……耳なじみのある方も多い地名・青梅市。そういえば、地元出身の方に「イノシシの形をしてる」と教わったことがあります。
大部分に山林を含む青梅市。最も低い地点から、1084mの最高地点・鍋割山まで、約980mの高低差があります。ここで図をもう1つ!
ポイントは赤マルのところ。
山間部の狭い谷を流れてきた多摩川が、「ここから武蔵野台地に出るぞ〜」と開けていくのが、今の青梅市街。土砂が扇のように堆積した「扇状地」になっている!
こういう山と平地が接する集落を「谷口集落」と呼ぶそう。青梅も典型的な「谷口集落」らしく、山からの材木・燃料と、平地からの米・作物が交易される市が形成されていきました。
また、市北部の成木(なりき)は良質な石灰石の産地。徳川家康入府後、江戸城の造成のため石灰を運ぶ「青梅街道」が通され、現・JR青梅駅周辺が宿場町となっていきます。
近代以降も、石灰を積み出す輸送手段として明治27年(1894)に立川〜青梅間を結ぶ鉄道(今の青梅線)が開通。戦後は、都心へ通勤可能なベッドタウンの側面も備え、今に至ります。
たま〜に中央・青梅線の行先で見る「河辺」。駅前充実度はバッチリ!
さて! 青梅線に沿って、市内を東から西に横断しましょう。
青梅線は、中央線の立川駅から分岐して奥多摩駅に至る路線。ドアの開閉が手動ボタン式になるのを忘れずに!
まずは市内で一番東寄りの「河辺駅」へ。まれに中央・青梅線の行先表示で見るこの駅名は、“かべ”と読みます。4階建ての「イオンスタイル河辺」に、24時間営業の「西友」もあり、買い物はバッチリ!
さらに、駅前デッキに直結した市立中央図書館があり、その上階には温浴施設『河辺温泉 梅の湯』まで。奥多摩ハイカーの定番入浴スポットになっています。
歴史的には、青梅駅周辺の旧宿場町のほうが古いですが、再開発を経た利便性や充実度でいえばこの河辺エリア……イケています!
駅の北側の住宅地を抜けると見えてくるのが、東西に連なる霞丘陵。麓のあたりには吹上しょうぶ公園や、ツツジで有名な塩船観音寺といった見どころが点在しています。
大型マンション完成へ! 織物で栄えたレトロな宿場町・青梅の今
さて、西へ。古くは宿場町、今は青梅特快の終着駅……青梅市の歴史的中心である「青梅駅」周辺を歩きましょう。近年は昭和レトロの雰囲気を押し出し続けている青梅の街ですが、2026年2月に14階建ての大型マンションが駅の真正面に竣工予定(完売だそうです)!
近辺を語る上で外せないのが、繊維業。
江戸時代から、絹と木綿を交ぜた「青梅縞」を生み出すなど、織物が盛んでした。時代は下り、戦後の主力となったのは「青梅夜具地(やぐじ)」——模様のついた布団用の生地。その夜具地生産も、生活様式の変化から過去のものになりましたが、市内には好況期の面影が残ります。
最盛期には市内に映画館が3軒あり、著名な手描き看板職人が住んでいたことから、一時期はレトロ映画看板で町おこしをしていたことも(現在は多くを撤去)。
映画といえば! 2021年、旧都立繊維試験場という建物を利用し、ミニシアター『シネマネコ』ができたのは最近の明るい話題です。
筆者が訪ねた日は、ちょうど毎年1月12日に開かれる「青梅だるま市」の日。だるまだけでなく縁日屋台も並び、近所の子供たちや若者で大盛況でした。
そうそう、5月の「青梅大祭」を見に行った時の写真もあるんです。見ものは、各町内から出される巨大な山車の数々!
山車にはお面をつけた踊り手や、囃(はや)し手が搭乗。街中で山車同士がカチ合うと、競い合うように囃子のボルテージが上がります(ヒップホップのMCバトルっぽい)! 歴史ある街の行事はアツいぜ。
さて、丘の上に位置する青梅宿周辺から坂を下っていくと、多摩川にかかる「調布橋」に至ります。そのたもとに、「雪おんな縁の地」という石碑が……!
裏の銘板もチェック。朝ドラ『ばけばけ』のモデル・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の肖像が! なんと著書『怪談』のうち、「雪女」の短編は、この辺り(旧・調布村)の言い伝えが元なんだとか。東北など全国に雪女伝説はありますが、ハーン先生が採話したのは青梅バージョン。実際に都心より寒く降雪日もある青梅ですが、なかなか意外です。
ここからがアドベンチャーラインだぜ……青梅線・山間部エリアの名所へGO!
さて、青梅線に戻りましょう。青梅駅で車両を乗り換え、奥多摩へ行くゾーンに入ると、一気に観光路線の趣が。乗客のハイカー率も高まります。JR東日本も青梅駅以西の区間を「東京アドベンチャーライン」と銘打ち、アウトドア色を強化中。名だたる景勝地が目白押しなんです!
まずは日向和田(ひなたわだ)駅で降りて、多摩川を渡った先にある「青梅市梅の公園」へ。山の斜面いっぱいに梅の木が植わっています。
平将門ゆかりの梅に由来するという説もある地名「青梅」。実際、この梅林があるほか、食用の梅栽培も盛んでした。が、2009年に果樹のウイルスが発生。根絶のため多くの梅の木が伐採されるつらい時期がありましたが、再植樹を経て園内の梅林も復活中。2〜3月の「吉野梅郷梅まつり」もにぎわうそうです!
ちょっと西へ。沢井駅は、日本酒「澤乃井」ブランドで知られる『小澤酒造』があることで有名。見学可能な酒蔵のほか、豆腐料亭やカフェもありますが、売店で買った生原酒や軽食を楽しめる川沿いのオープンガーデン『澤乃井園』が気楽で人気。最近は外国人の訪問者も多いそう。
青梅観光の大トリは、御嶽駅周辺のエリアでしょう。
ここまでくると深山幽谷の気配。駅からすぐ河原に下りられ、滔々(とうとう)と流れる多摩川が目の前に!
御嶽駅は、パワースポットとしても知られる「御岳山」への玄関口。駅前からしばらくバスに乗ると、御岳登山鉄道というケーブルカーの滝本駅付近に。
御岳山山頂にある武蔵御嶽神社は、標高929mに鎮座する古社。
祭神のうち、ニホンオオカミを祀った大口真神(おおくちまがみ)は「おいぬ様」という通称で親しまれており、その縁から愛犬を連れての参詣もウエルカムになっています。
江戸時代には、関東一円の信仰対象となった武蔵御嶽神社。農村ごとで講(地域グループ)を組んで御岳山を参詣し、決まった御師(おし)、神職の営む宿坊に泊まる風習がありました。今でも御師の家系の宿坊が20以上もあり、山上の集落を形成しています。
本記事の発展を「おいぬ様」に願い、家路に……は、まだつきません! 一軒寄りたいところがあるんです!
角打ちの進化が止まらない! 山あいの街の酒屋さん・日向和田『ホウライヤ』で一杯
青梅線沿線にある、楽しすぎる角打ち(店内飲酒コーナー)が話題の酒屋さんで締めましょう。お店があるのは……背後に青梅丘陵を控えたのどかな一帯、日向和田(ひなたわだ)。
青梅線・日向和田駅から徒歩7分ほどと電車でアクセス可能なので、安心して飲酒を。その名も『ホウライヤ』……さりげなくロゴを配したテントもかっこいい〜。早速入ってみましょう!
中は明るくて開放的! 入り口すぐには、量り売りもしている焼酎がズラリ。角打ちができるという飲食スペースは白い壁が映え、北欧のカフェのようです。
でも、『ホウライヤ』という古風な響きの屋号など、いろいろ気になりますね。
お店を切り盛りする藤野貴司さん・千晶さんご夫妻に、お話を伺います。貴司さんはこちらのお店の2代目、地元・日向和田育ち。
こちらのお店、正式な屋号は『蓬莱屋支店』といい、多摩川対岸・和田町の酒屋『蓬莱屋』の支店として1975年に開業した老舗です。
「今でいうコンビニ的な感じでした。酒から醤油・みりん・米・タバコ……」と昔を語る貴司さん。今でも町の酒屋さんとして配達をしていますが、昔はずっと需要が高かったそう。
貴司さんがお店を継いだのは2022年。その時から、テントに配するロゴをカタカナ表記の『ホウライヤ』にするなど、親しみやすいイメージ作りに取り組んできました。
代替わり前は国立市の老舗酒販店『せきや』に勤務し、長らく和酒を取り扱っていた貴司さん。「角打ちを始めたい!」という強い思いをずっと抱いていたそう。DIYを重ねてレイアウトを試行錯誤しながら、今のスタイルに落ち着きました。
先ほどの北欧風スペースだけではありません。長年、倉庫だったというゾーンをのぞいてみると……、
ここでも角打ちできるんですかっ! こちらは板目の天井や柱が残された、立ち席メインの渋エリア。2WAY気分!?
『ホウライヤ』での飲食イベントは主に金・土・日。変動もあるので、詳しくはInstagramでご確認を。
ちなみに、昼間に料理とお酒を楽しめるランチ営業日も人気なんです。とある日の一例は……、
珍しいジビエカレー! カレーで有名という河辺のバー『ブールバール』仕込みのルーは、ココナッツ系の甘みがあり、岡山の日本酒「御前酒」のソリッドな風味とも好相性。千晶さんの作る具沢山のスープもうれしい! この日は海老や山芋入りの味噌汁でした。
もうひとネタ……毎週水曜日にも、楽しげな定期イベントがあるという噂が。その名も「水曜あて呑み倶楽部」。「波平(なみひら)夫婦の暮らしの料理」なるユニットのお二人が『ホウライヤ』に出張し、酒の友「あて」を提供。これまた角打ちスタイルで楽しめるそうで——伺いましょう!
とある水曜日、「あて」をたくさん仕込んで『ホウライヤ』に現れた龍一さんは、東京や京都の日本料理店でキャリアを積んだ料理人。デザイナーでもある雪乃さんは、ロゴや紙の「おしながき」など、ビジュアル周りを担当しています。
じつは波平夫婦、2024年頃から青梅市内に住んでいるご近所さん。南隣のあきる野市で自然農にも取り組み、米や伝統野菜も育てています。以前は、先ほど触れた「御前酒」の蔵元岡山県の『辻本店』に、季節蔵人として滞在していた経験もあるほどの日本酒愛の持ち主だとか!
そんなお二人が移住した青梅市に、角打ち強化中のこの『ホウライヤ』があり、その藤野夫妻と意気投合。で、このレギュラーイベントが爆誕——日本酒の神様の思し召しか……な〜んて言ってないで早速、この日の「あて」と酒の一部をどうぞ!
この日の「あて5種」は、煮豆・煮卵・じゃがいも照り煮・蒸しかぶ、そして馬力(にんにくしそ鰹)。取材日はまだ新春の余韻ある頃、南天の飾りもさりげない!
定番品という「ホウライ焼き」は、蓮根入りの肉餡を油揚げに包んで焼いたもの。このジューシーな一品を、芯ある風味の鳥取の酒「日置桜」で追いかけ……たまりません。
もう一品。肝の甘みをまとったスルメイカに合うとおすすめされた山形「浦霞」のしぼりたては……フレ〜ッシュ! 盃が進みます。
この「水曜あて呑み倶楽部」。『ホウライヤ』が毎週選んだお酒ラインアップに合わせ、波平夫婦が旬の「あて」を考案するシステムらしく……合気道的!? なスゴさを感じますよね。
「いい感じに肩の力が抜けた料理を目指してます」という龍一さんですが、現状週に一回開催ですから、ハイスパン!
やがて宵の口。青梅のあの街この街から、顔なじみも集まり始め……主催者もお客さんも輪になり、和やかな酒談義に。
いやはや取材のつもりがすっかり長居し……。今日は水曜。週のなかばに、最高の小休止でした。また「梅まつり」の時期に再訪したいよな〜……えーと、帰りの乗り換え、どうするんだっけ。
お〜っと皆さん、家に帰るまでが「アドベンチャーライン」ですよ!
取材・文・撮影=イーピャオ








