案内人=瀬戸口ゆうこ(ライター/『晴居堂』店主)
ライター目線で選ぶ逸品が並ぶ『晴居堂』
伝統工芸を紹介するWEBメディア『職人圖鑑』を運営するライター瀬戸口が、取材先で出合った“ニッポンのいいモノ”を、作り手の思いや、地域の魅力、物語とともに紹介する工芸品店。個人的な趣味でうつわが多め。工芸を身近に感じてほしいとの思いから、酒器と日本酒のコラボイベントや、工芸作家・職人を講師に迎えたものづくりワークショップなども随時開催。
11:00〜18:00、月・火ほか不定休。
☎03-5246-4065
【路地裏に思いがけないすてきな出会いがある!】
熊や猪などジビエ革を使ったモノづくり『と革 TO-KAWA』
駆除のために仕留められた獣の肉は食用として活用されることもあるが、皮はすべて産業廃棄物になる。そんな事情を知り、「捨てられる命をなんとか生かしたい」と、革ブランドSix COUPDE FOUDRE代表の高見澤篤さんは、猟師から皮を引き取って加工し“ジビエ革”と名付け、バッグや財布などのプロダクトとして再び命を吹き込むことに。『と革 TO-KAWA』は、その工房兼ショップ。
12:00~17:00(月・火は13:00〜)、水〜金休。
☎なし
自家製酵母のふわもち食パン『食パンですよ』
看板メニューは、ビール由来のホップ酵母食パン530円と、淡路島・平岡農園のレモンを使ったレモン酵母食パン(土・日限定販売)570円。店主の田中有磨さんが約4年かけて200回ほど試作したという力作だ。ふわふわでほんのり甘く、レモン酵母は爽やかな風味が感じられる。ミニ食パンに切れ込みが入ったちょっぴりサンド用食パンなどアイデア商品も。
9:00〜19:30(売り切れ次第終了)、火休。
☎なし
【酒に、文学に。カルチャーの発信基地も!】
アンティークに囲まれて非日常を楽しむ『TOE LIBRARY PARC』
1階はふらっと立ち寄れるブックカフェ。旅や街歩きエッセー、短編小説など書籍の販売もあり、「短い時間でも、非日常を味わってもらえるような選書を心がけています」とオーナーの西尾吉朗さん。2階は予約制の図書喫茶室。ヨーロッパや京都のビンテージ家具や雑貨、本に囲まれて、プライベートな時間が過ごせる。著者を招いたトークイベントやアーティストの個展なども開催。
11:00~19:00、不定休。
☎なし
自然酒のラインアップが充実『酒商 升宏』
創業60年以上の老舗酒店。「ブランドにこだわらず、時代に求められる、キラッと光るものがあるお酒をセレクトしています」と店主の杉山信彦さん。寺田本家で酒造りを学んできたという3代目の将太さんは、「日本酒の文化を若い人にも伝えたい」と話す。家族経営で、アットホームな雰囲気も魅力的。テイスティングセット(3種類)1200円もあり試飲可能。
13:00~19:00、日・祝ほか不定休(Googleマップで要確認)。
☎03-3841-0059
【新たな名店の予感! 住宅地の中の実力派】
本場さながらのジェラテリア&バール『GELATERIA BAR Marcato』
都内の老舗バールでジェラティエーレ、バリスタとして研さんを積んだ店主・渋谷博行さんが2023年に始めたジェラテリア&バール。ジェラートは約15種類。シチリア産ピスタチオなどイタリアの食材や、長野産シャインマスカットなど国内の農家から直接取り寄せた旬の果物を使ったジェラートは、素材の味がしっかり感じられるリッチな味わい。
12:00〜20:00、月ほか不定休(祝の場合は翌休)
☎03-6231-6652
割烹(かっぽう)の味を肩肘張らず楽しめる『食・松浦』
創業40年の湯島割烹「松浦」が、2025年8月、割烹の味をより気軽なスタイルで楽しめる『食・松浦』となって松が谷に移転オープン。牛すじトマト煮1500円など創作料理は、トマトソースをベースに醤油を加えるなど和を感じる仕上がりに。夜も、平目とまぐろの漬け丼1500円、もち豚すき焼き定食1300円など、お手頃価格でしっかりごはんが食べられるのもうれしい。
11:00〜14:00・17:00〜21:00(土・日・祝は12:00〜20:00、不定休)。
☎03-5830-3206
それぞれの出店の理由、思い
筆者が“裏”かっぱで『晴居堂』をオープンしたのは2022年頃のこと。住所は松が谷。南北に走るかっぱ橋道具街の西側だ。ちなみに、東側は西浅草。ヨソから来たら聞きなれない町名の、しかも、裏通りの住宅地。だけど、ここでやっていけると思えたのは、蔵前エリア的な空気を感じたから。
松が谷のベビーマンションという建物には、ジビエ革ブランドのクラフトショップ『と革 TO-KAWA』や、うつわ屋、服飾のアトリエが並ぶ。あとは、うつわを扱うから、道具街が近いというのもポイント。『と革 TO-KAWA』の高見澤さんもそこは意識していたらしい。「肉は食べて、革はその副産物。料理人が集まる場所で、革にまつわるあれこれを発信しようと思った」とか。『TOE LIBRARYPARC』の西尾さんもまた、「食に関して感度の高い人が集まるところに魅力を感じた」とこの街に出店した。
裏かっぱには、手頃でおいしいお店もあちこちに。筆者は浅草まで出ず、近所で飲み歩く。行きつけリストに加えたいのが、2025年8月にできた『食・松浦』。店主・宇賀神さんとお話しながら、カウンターで一人飲み。宇賀神さんは一切手で触れず、包丁と箸だけで魚を捌(さば)く「四条流石井派包丁式」の師範なのだとか。刺し身がおいしい理由は、包丁捌きにもあったのか。
好きに、マイペースにゆるっとした空気感
ここ数年で、「日常にあったらいいな」と思うお店も次々できた。2024年7月、西浅草の住宅地にオープンした『食パンですよ』のパンは、毎日でも食べたい、飽きのこない味。店主・田中さんがこの街にお店を構えた理由は「ランニングと銭湯が趣味。この辺はたくさん銭湯がありますよね。好きな街でなら、おじいちゃんになっても楽しく仕事が続けられそう」と、なんだかほのぼの。
2023年にできたジェラテリア『GELATERIA BARMarcato』は、ジェラートをメインに、エスプレッソやアルコールも提供。「イタリアのバールのような場所にしたくて」と、店主の渋谷さん。朝からさっとエスプレッソを飲んで仕事に行ったり、仕事帰りにワインを1杯ひっかけたり。ここはミオバール(行きつけのバール)のある日常が叶(かな)う街♪
老舗だってチャレンジング。創業61年の酒屋、『酒商升宏』は2017年に倉庫をリノベしておしゃれなショップに。ジャンクフード×日本酒、スイーツ×日本酒など、新しいペアリングを提案するイベントも開催する。
この街には、“好き”をとことん突き詰めた、こだわりのお店がいっぱい。店主たちがゆるっとマイペースなのもいい感じ。かっぱ橋に来たら、“裏”にも遊びに来てくださいな。
取材・文 =瀬戸口ゆうこ 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年12月号より







