1年にたった1日! 冬至にのみ開く飯能市の山中の仏像【軍荼利明王像】

長い階段も秘仏拝観のために頑張って!
長い階段も秘仏拝観のために頑張って!

まずは年末、冬至の日にだけ御開帳されるのは、「高山不動」とも呼ばれ親しまれる「常楽院」(埼玉県飯能市)の軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)像です。軍荼利明王とは、五大明王(いわば「明王レンジャー」)のうちの一体で、リーダーである不動明王と同じような憤怒相(怒りの表情)をしています。

さらに、八臂(はっぴ/手が8本という意味)に三つ目という異形で、禍々しい雰囲気もある仏。その中でも常楽院の軍荼利明王は大きさが228cmと、現役(2025年現在)のNBA選手でもっとも背の高いビクター・ウェンバンヤマ(226cm)より大きいという迫力満点の像です。

一方で、作られたのが平安時代頃とかなり古いことや、パーツを組み上げて作る寄木造ではなく、一本の木から彫りだす一木造(いちぼくづくり)という技法で作られていることで、造形からは素朴さも感じられます。

軍荼利明王以外にも、普段から公開されている五大明王も必見。
軍荼利明王以外にも、普段から公開されている五大明王も必見。

「常楽院」は山中にあるためアクセスがいいとは言えず、収蔵庫までは長い階段もありますが、日常と切り離された環境で、この名仏を一度拝観してみてください!

鎌倉の名刹で超有名な高僧作の秘仏が3体も御開帳!【十一面観音像】

入り口の仁王門には運慶作と伝わる仁王像も。
入り口の仁王門には運慶作と伝わる仁王像も。

数々の歴史深い神社仏閣が立ち並ぶ古都・鎌倉にある「杉本寺」。ここには、元日(毎月1日も)に御開帳される秘仏が、三体もあります!

すべて十一面観音像ですが、それぞれ恵心僧都(えしんそうず)・慈覚大師(じかくだいし)・行基という超スターなお坊さんが彫ったとされる像です。

まさに観音様のお寺。
まさに観音様のお寺。

恵心僧都は、極楽浄土へ行くハウツー本である『往生要集』という著作がある人物。そこには、地獄の様子も描かれており、それが現代の私たちが持つ地獄のイメージの元になっています。

慈覚大師は、岩手の「中尊寺」や青森の「恐山」、そして東京の「目黒不動尊」など、多くのお寺を開いてきました。また、唐に修行に行った際に書いた旅行記は、マルコ・ポーロや三蔵法師(玄奘三蔵)らの著作とともに「世界三大旅行記」のひとつともいわれています。

そして行基は、教科書にも載っているお坊さん。奈良の大仏建立に貢献したことでも知られますが、橋を架け道路を整備し、水路をつくるなど、社会のインフラ整備に広く深く携わって、日本の発展に大きく寄与しています。

茅葺き屋根の趣深い本堂で暗がりに潜るように拝観して、この三高僧の十一面観音像をじっくり堪能してください!

目黒駅前! アクセス抜群の秘仏【釈迦如来立像】

写真中央が釈迦如来立像。都内にある清涼寺式の中でも名品とされる。
写真中央が釈迦如来立像。都内にある清涼寺式の中でも名品とされる。

都心部でも、お正月に御開帳のあるお寺がいくつか。その中でも、目黒駅前にある「大圓寺」の釈迦如来立像は筆者のおすすめです。

こちらは、元日~1月7日まで御開帳されます(他にも開帳日あり。詳細はお寺のHPなどでご確認ください)。細身でスラリとした頭身の本像は、「清涼寺式」と呼ばれる釈迦如来像。

一般的な如来像では、パンチパーマのようなボツボツとした螺髪(らほつ)と言われるヘアスタイルなのに対し、こちらは、前頭部の中心から縄が渦を巻くような独特の表現で作られています。また、片方の肩を出してまとうことの多い衣も、両方にかかっており襞(ひだ)が胸を中心に同心円状に広がっているのが特徴。

同心円を基本にした作りが安定感をもたらす。
同心円を基本にした作りが安定感をもたらす。

清涼寺式の釈迦如来像は、伝説化されたお釈迦さまではなく、実際に生きていた頃のお釈迦さまの姿を表現していると言われています。

ちなみに、昭和になって本像が解体修理された時に、胎内から「杉本寺」と書かれた納入物が見つかっており、もともとは、この記事でも紹介した鎌倉の杉本寺に祀られていた仏像ではないかと推測されています。なんだか、ロマンを感じますね!

四季折々の自然とともに、青梅市の秘仏【千手観音】

重要文化財に指定されている本堂。
重要文化財に指定されている本堂。

四季折々の自然で彩られ、花のお寺として知られる青梅市の「塩船観音寺」の本尊。十一面観音菩薩立像は正月三が日に御開帳します(その他の御開帳日は、お寺のHPなどでご確認ください)。

冬は、花が色とりどりにというわけにはいきませんが、国の重要文化財に指定されている本堂など、建築でも私たちの目をひきます。室町時代に建てられた、茅葺に杉の皮を混ぜ込んだ混ぜ葺の屋根は、瓦とはまた違った趣。

そんな本堂に祀られている十一面観音です。144cmあまりの大きさで、目に水晶を嵌(は)める玉眼(ぎょくがん)という技法が用いられているため、薄暗いお堂の中でも、キラリと目が光って不思議な生命感があります。

十一面観音の眷属(チームメイトや部下のような存在)の二十八部衆の像もずらりと並んでいて圧巻! いわゆる仏像っぽい像から、リアルな老人のような姿をした像まで、バリエーション豊かで見飽きることがありません。

金泥で書かれた塩船観音寺の御朱印。
金泥で書かれた塩船観音寺の御朱印。

また、同寺は御朱印も魅力的で、筆者が以前に訪れた時は金泥で書いていただきました。

元日は年が明ける午前0時から、法要が行われて本尊が開帳されます。深夜のお寺の、荘厳な雰囲気の中で新しい年を迎えるのもいいですね!

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東京周辺だけでなく、全国的にも年末年始は各地で御開帳があります。初詣に出かける神社仏閣をどこにするか迷っている方、今年は秘仏御開帳を目指してお出かけしてみては?

写真・文=Mr.tsubaking