鉄道の今昔を歩く

レンガ造りの駅舎がある東京駅や、日本初の鉄道が新橋〜横浜駅間で開通した際の始発駅・旧新橋停車場に往時をしのぶ。対照をなすような「TAKANAWA GATEWAY CITY」の近未来的な街並みに、鉄道の今昔を感じよう。

開催期間:2025年11月19日(水)〜25日(火)
歩行距離:約9.4km
所要時間:約210分
スタート地点:東京駅 丸の内南口改札外

「駅からハイキング」ってなに?

「駅からハイキング」とはJR東日本が企画する、駅を起点とした日帰りウォーキングイベント。参加費・予約は不要で、開催期間中、受付時間内にスタート地点となる駅へ行けば、誰でも参加可能。今回特別編として山手線環状運転100周年を記念し、JR社員と『散歩の達人』編集部が共同で、山手線を一周できる5つのコースを作成した。

※開催日時の詳細は「駅からハイキング」公式ホームページに掲載。

レトロビルの3階に潜む、最高の憩いスポット

洋子さん(左)と、オムライスやパスタなど料理全般を担当するコックの遠藤さん。
洋子さん(左)と、オムライスやパスタなど料理全般を担当するコックの遠藤さん。

有楽町駅を出てすぐの交通会館3階にある、入り口からレトロな雰囲気が漂う喫茶室。「交通会館の開館時にオープンしたから、同い年の60周年なの」と話すのは、父から『喫茶ジュン』を継いだ福田洋子さん。当時は有楽町に都庁があり、1日に2、3回コーヒーを飲みに来る男性もいたそう。時は流れたが、変わらないブレンドコーヒーのマイルドな味わい、温かな洋子さんの接客に惹(ひ)かれ、今も常連が集う。シャンデリア輝く店内や、ソフトクリームとアイスの中間のような食感のソフトアイスが浮かぶメロン・フロートなどのレトロ感に「映え」を感じ、最近は若いお客さんも!

ごはんと卵を生クリームに混ぜリゾットのようにした後、焼き固めるびっくりオムライス(左)。平日はサラダやコーヒーなどがセットで1100円。メロン・フロート980円。
ごはんと卵を生クリームに混ぜリゾットのようにした後、焼き固めるびっくりオムライス(左)。平日はサラダやコーヒーなどがセットで1100円。メロン・フロート980円。
常連が集う店内。開放的な窓が特徴的。
常連が集う店内。開放的な窓が特徴的。
テラス席からは新幹線が目の前に! 東京駅が近く新幹線のスピードも落ちるので、写真が撮りやすい。
テラス席からは新幹線が目の前に! 東京駅が近く新幹線のスピードも落ちるので、写真が撮りやすい。
住所:東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館3F/営業時間:11:00〜17:30LO/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄有楽町駅から徒歩1分

山手線の高架下をまっすぐ300m歩ける稀な「路地」

白塗りしたアーチを間接照明で上品に浮かび上がらせる。施設内で「OTOROJI Street Live」も定期開催。
白塗りしたアーチを間接照明で上品に浮かび上がらせる。施設内で「OTOROJI Street Live」も定期開催。

日比谷と銀座に挟まれ、文化的・商業的価値が高い立地であることから、有楽町駅と新橋駅の間の高架下約300mを商業施設「日比谷OKUROJI」に。あえて構造体の高架柱を見せたり、休憩用ベンチの下を出土したレンガで舗装したりと、随所に115年前にできた高架の歴史が! 「通(つう)な大人の通り道」というコンセプトのもと、職人の手作り傘を扱う『Tokyo noble*』や、注文後に生地から製麺する十割そばが評判の『蕎麦前 一心 日比谷本店』など45軒が、通路両脇に並ぶ。

日傘を入れて600種近い本体に加え、持ち手やタッセル(ストラップ)などを自由に組み合わせられる『Tokyo noble*』。
日傘を入れて600種近い本体に加え、持ち手やタッセル(ストラップ)などを自由に組み合わせられる『Tokyo noble*』。
『一心』のランチ限定の江戸城門蕎麦 九門(九品)2000円は、江戸城の主要9門をイメージ。アサリの山椒煮など9種のそばを味わえる。
『一心』のランチ限定の江戸城門蕎麦 九門(九品)2000円は、江戸城の主要9門をイメージ。アサリの山椒煮など9種のそばを味わえる。
住所:東京都千代田区内幸町1-7-1/営業時間:店舗により異なる/定休日:店舗により異なる/アクセス:JR・地下鉄有楽町駅から徒歩6分、JR・地下鉄・ゆりかもめ新橋駅から徒歩6分

鉄道開業の地に立つ復元駅舎で耳を澄ませば、文明開化の音がする

迫力あるD51型機関車の動輪。
迫力あるD51型機関車の動輪。

「日比谷OKUROJI」から、趣ある煉瓦の高架沿いを7分ほど歩くと、新橋駅に到着。汐留口にはD51型機関車の動輪と、1957年の鉄道開通85周年記念に建立された鉄道唱歌の碑が。

アメリカ人の建築技師、リチャード・P・プリジェンス設計の駅舎を、石張りで復元。
アメリカ人の建築技師、リチャード・P・プリジェンス設計の駅舎を、石張りで復元。

新橋駅の東側に『旧新橋停車場』を見つけた。新橋駅〜横浜駅間が開通し、日本初の鉄道が開業した明治5年(1872)。当時の新橋停車場が、同じ場所に同じ大きさで2003年に復元された。建物内にある鉄道歴史展示室1階では汐留再開発の際に出土した本物の駅舎基礎石積みをはじめ、当時使われた改札鋏や工具、『崎陽軒』や『桃中軒』の汽車土瓶なども展示。2階では2025年11月24日(月)まで企画展「日本海縦貫線100年展〜知られざる大動脈〜」が開催されている。

南側には、当時の全長151.5mのうち、25m分のプラットホームを再現。
南側には、当時の全長151.5mのうち、25m分のプラットホームを再現。
150年以上前に造られた貴重な石積みの基礎を、1階のガラス張りの床越しに見学できる。
150年以上前に造られた貴重な石積みの基礎を、1階のガラス張りの床越しに見学できる。
住所:東京都港区東新橋1-5-3/営業時間:10:00~17:00(最終入館16:45)/定休日:月(祝の場合は翌)/アクセス:JR・地下鉄・ゆりかもめ新橋駅から徒歩5分
汐留イタリア街に現れる旧新橋停車場機関車用転車台。
汐留イタリア街に現れる旧新橋停車場機関車用転車台。

汐留口から、国道15号を渡って汐留イタリア街へ。汐留西公園には、旧新橋停車場機関車用転車台の基礎の形状をデザインしたものが。真ん中の説明板を見ると、輪郭の石は実際に出土した切石らしい。

高層ビルも借景? 都心に残る大名庭園で散歩の休息を

石柱付近の紅葉を望む。紅葉の見ごろは例年11月下旬〜12月上旬。
石柱付近の紅葉を望む。紅葉の見ごろは例年11月下旬〜12月上旬。

『旧芝離宮恩賜庭園』は、延宝6年(1678)、老中・大久保忠朝が、自身の藩地である小田原から庭師を呼び庭園を造ったのが起源とされる。そのため、園内には小田原領内を産地とする伊豆石(小松石)、根府川石を使用し、護岸には富士山の黒朴石を使った箇所も。回遊式庭園は20分ほどで一周できるので、いろいろな角度から庭を眺めたい。歩き疲れたら、東屋や藤棚の下のベンチで涼んで、体力チャージ!

南側の大山からの眺め。左には雪見灯篭が見える。庭園の広さは東京ドーム約1個分。
南側の大山からの眺め。左には雪見灯篭が見える。庭園の広さは東京ドーム約1個分。
池の中央にある中島は園景の要。庭師が丁寧に管理する松の美しさにも注目!
池の中央にある中島は園景の要。庭師が丁寧に管理する松の美しさにも注目!

『旧芝離宮恩賜庭園』を出て、浜松町駅をぐるりと迂回。同駅の南側線路沿いを歩くと、山手線や新幹線などの下を潜る港町架道橋が左手に見えてくる。低くて長い歩行者用通路は、ひとりで歩くとゾワッとする独特な雰囲気。

このフォトジェニックな空間は、ドラマのロケ地にもよく使われているそう。

低くて長い歩行者用通路。
低くて長い歩行者用通路。

鉄道開業の地を通り、山手線で最も新しい駅をゴールとする今日のコース。振り返ってみれば、まさに鉄道の歴史を旅するような1日だった。

東京駅の赤煉瓦駅舎からスタートし、山手線の高架下をまっすぐ歩いた先には、鉄道開業の地が待っている。歴史ある庭園を抜けると、山手線や新幹線の線路の下をくぐる港町架道橋を通過する。

机に向かって歴史を勉強するのも悪くはないが、こうして歩きながら道をたどっていくことで、思いがけない発見があるかもしれない。

【コース➄東京駅→高輪ゲートウェイ駅】の詳細はこちら!

本記事で紹介した東京駅から高輪ゲートウェイ駅にかけて歩くコースの、受付時間やコース行程などの詳細はこちらからチェック!

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山手線環状運転100周年スペシャルコース開催一覧

【コース① 高輪ゲートウェイ駅→渋谷駅】東京に残された鉄道文化と自然をめぐる
開催期間:2025年10月22日(水)〜28日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。今回は高輪ゲートウェイ駅から渋谷駅にかけて、東京に残された鉄道文化と自然を感じるコースを歩く。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース② 渋谷駅→池袋駅】異文化の路地を歩く、世界を感じる散歩道
開催期間:2025年10月29日(水)〜11月4日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。今回は渋谷駅から池袋駅にかけて、世界各国の異文化を楽しめる散歩道を歩く。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース③ 池袋駅→日暮里駅】下町情緒を感じながら文学の足跡を追いかける
開催期間:2025年11月5日(水)〜11日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。池袋駅から日暮里駅にかけて、下町情緒を感じながら文人たちの軌跡に思いを馳せよう。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース④ 日暮里駅→東京駅】名建築が交錯するモダンゾーン
開催期間:2025年11月12日(水)〜18日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。日暮里駅から東京駅にかけて、名建築が並ぶモダンな道を楽しむ。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース⑤ 東京駅→高輪ゲートウェイ駅】鉄道の今昔を歩く
開催期間:2025年11月19日(水)〜25日(火)

参加者にはスペシャルなプレゼントも!

スペシャルコース参加時、各駅で駅ハイアプリの画面を提示するとオリジナルスタンプ帳をプレゼント!
※各コースのスタート駅で配布。先着順・各コース数量限定。デザインは全て同じとなります。

取材・文・撮影=鈴木健太 画像提供=PIXTA