名建築が交錯するモダンゾーン

重厚な石造りのアーチが特徴的な万世橋や、『日本橋三越』の荘厳な洋館風の外観が気分を高める。レトロなビルと近代的な高層建築が交錯する見どころの多いルート。

開催期間:2025年11月12日(水)~18日(火)
歩行距離:約9km
所要時間:約120分
スタート地点:日暮里駅 北改札外

「駅からハイキング」ってなに?

「駅からハイキング」とはJR東日本が企画する、駅を起点とした日帰りウォーキングイベント。参加費・予約は不要で、開催期間中、受付時間内にスタート地点となる駅へ行けば、誰でも参加可能。今回特別編として山手線環状運転100周年を記念し、JR社員と『散歩の達人』編集部が共同で、山手線を一周できる5つのコースを作成した。

※開催日時の詳細は「駅からハイキング」公式ホームページに掲載。

彫刻と向き合い、暮らしを営んだ建物は、朝倉最大の作品

3層吹き抜けのアトリエ。普段は朝倉文夫の彫刻(写真)を展示するが、特別展は響子の作品展示に。
3層吹き抜けのアトリエ。普段は朝倉文夫の彫刻(写真)を展示するが、特別展は響子の作品展示に。

日暮里駅から徒歩5分の場所にある『朝倉彫塑館』は、近代日本を代表する彫刻家、朝倉文夫設計のアトリエ兼住居。鉄筋コンクリート造のアトリエ棟と、木造数寄屋造の住居棟から成り、自然を師とし、自然に習うという本人の美意識が各所に。アトリエは採光が安定する北側に窓を設けるのが一般的だがあえて自然光をふんだんに採り入れるよう三方に窓を配したほか、木目や曲線など自然の素材を生かした各部屋の内装も美しい。2025年12月14日(日)までは次女で彫刻家でもある朝倉響子の特別展を開催中だ。

建物の中央には5つの巨石を配した五典の池。池を囲む各部屋からは中庭の異なる風情を楽しめる。
建物の中央には5つの巨石を配した五典の池。池を囲む各部屋からは中庭の異なる風情を楽しめる。
朝倉自作の円卓が置かれた朝陽の間は饗応(きょうおう)として使用。桐の一枚板の欄間などが贅沢。
朝倉自作の円卓が置かれた朝陽の間は饗応(きょうおう)として使用。桐の一枚板の欄間などが贅沢。

江戸時代より続く職人の街から、いまのものづくりを発信

『花重谷中茶屋』の厳かな外観。
『花重谷中茶屋』の厳かな外観。

『朝倉彫塑館』を出て、谷中霊園の脇を南へと歩くと創業150年の老舗花屋をリノベーションしたカフェ、『花重谷中茶屋』を発見! 登録有形文化財建造物でもある棟を一部改修したため、厳かな外観でありながら憩いの場としてのカフェに生まれ変わった。戦災で焼けなかったこのエリアは、この先も「旧吉田屋酒店」など見どころある歴史建築が続く。

絶滅の危機にある木造駅舎。
絶滅の危機にある木造駅舎。

上野桜木から『国立博物館』の北東側を経て、左(北東側)に曲がると見えてくるのは、橋上に立つ鶯谷駅南駅舎。昭和初期に建築された、山手線では絶滅の危機にある木造駅舎だ。この後は踵(きびす)を返して、上野恩賜公園に向かう。

日本最古の洋式音楽ホールを有する『旧東京音楽学校奏楽堂』。
日本最古の洋式音楽ホールを有する『旧東京音楽学校奏楽堂』。

上野恩賜公園まで来たら、少し足を延ばして見学したいのが明治23年(1890)築の『旧東京音楽学校奏楽堂』。1987年に現在の園内北側へ移築・復原された。日本最古の洋式音楽ホールを有する。ここからさらに針路をグンと南へ取り、御徒町方面へ。

※建物公開日は『旧東京音楽学校奏楽堂』公式ホームページに掲載。

約50軒が軒を連ねる「2k540 AKI-OKA ARTISAN」。東京駅から2k540(2540)mの位置にあることから、この施設名に。
約50軒が軒を連ねる「2k540 AKI-OKA ARTISAN」。東京駅から2k540(2540)mの位置にあることから、この施設名に。

上野駅、御徒町駅を横目に秋葉原駅に向かって歩みを進めると現れるのは「2k540 AKI-OKA ARTISAN(ニーケーゴーヨンマル アキオカ アルチザン)」。かつては倉庫や駐車場などとして取り残され、人通りが少なかった秋葉原~御徒町の高架下。2010年、そのスペースを生かし、お客さんが職人やクリエイターと話しながら買い物できる工房兼ショップの集う場所に!

石畳など古代ローマの遺跡をモチーフにしたアンティーク調の時計を手作りする『Via Romana(ビア ロマーナ)』や、裏と表から染料を注ぎ入れる糸染めのため裏表のないきれいな手ぬぐいに仕上がる『にじゆら』などで、クラフトマンシップにふれることができる。

『にじゆら』がこだわる注染(ちゅうせん)という技法は、にじみも味わい。月1回程度、注染のワークショップも。※開催日は『にじゆら』公式ホームページに掲載。
『にじゆら』がこだわる注染(ちゅうせん)という技法は、にじみも味わい。月1回程度、注染のワークショップも。※開催日は『にじゆら』公式ホームページに掲載。
表面のいぶし加工や薄い銅の箔を貼るギルティング加工などで、微妙に意匠が違う一点モノを作る『Via Romana』。
表面のいぶし加工や薄い銅の箔を貼るギルティング加工などで、微妙に意匠が違う一点モノを作る『Via Romana』。
住所:東京都台東区上野5-9/営業時間:11:00~19:00/定休日:水/アクセス:JR山手線・京浜東北線御徒町駅から徒歩4分

甘党をえびす顔にする濃厚な餡でエネルギーチャージ

商業施設の『マーチエキュート神田万世橋』。
商業施設の『マーチエキュート神田万世橋』。

「2k540 AKI-OKA ARTISAN」でクラフトマンシップにふれた後は、秋葉原駅を通過し、昭和5年(1930)竣工の万世橋を渡る。その先に見えてくるのは赤煉瓦の厳かな建造物。明治45年(1912)築の万世橋高架橋で、2013年に商業施設の『マーチエキュート神田万世橋』へと生まれ変わった。

黒蜜でいただくあんみつ1540円、宇治抹茶で作る抹茶グラッセ1210円。
黒蜜でいただくあんみつ1540円、宇治抹茶で作る抹茶グラッセ1210円。

『TORAYA TOKYO』は東京駅丸の内駅舎が復元された2012年、『東京ステーションホテル』の2階にオープン。『とらや工房』や『とらや パリ店』など、とらや4ブランドの菓子を扱う。小豆は寒暖差のある十勝で育まれたエリモショウズを使用。小豆のゆで汁を捨てる渋切りの回数を最小限に抑えた餡は、コクがあり香り高い。特製の餡に数種類の寒天や黒豆、えんどう豆が彩るあんみつや、代表商品の小倉羊羹『夜の梅』などで、その豊かな風味を堪能あれ。2025年11月中旬までは栗蒸羊羹(中形2700円)も販売!

大正3年(1914)、東京駅駅舎の建設当時のレンガ壁を生かした店内。
大正3年(1914)、東京駅駅舎の建設当時のレンガ壁を生かした店内。
東京駅丸の内駅舎がデザインされた小形羊羹の詰め合わせも同店限定で販売。
東京駅丸の内駅舎がデザインされた小形羊羹の詰め合わせも同店限定で販売。
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 東京ステーションホテル2F/営業時間:10:00~18:00LO(土・日・祝は~17:00LO)/定休日:無/アクセス:JR東京駅直結

日暮里駅から始まるこのハイキングコースでは、威厳ある外観の建造物でありながら、カフェや商業施設として活用されている場所をいくつも発見。名建築を探しに歩いたはずが、買い物も楽しめて、小腹も満たせるなんて。

東京駅の赤煉瓦駅舎をめざしながら今日のコースを振り返ると、まるで美術館にいるような心地よさの中で、ショッピングもカフェ巡りも満喫できた。名建築が並ぶこの道は、まさにモダンな時間を過ごせる散歩コースだ。

【コース➃日暮里駅→東京駅】の詳細はこちら!

本記事で紹介した日暮里駅から東京駅にかけて歩くコースの、受付時間やコース行程などの詳細はこちらからチェック!

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山手線環状運転100周年スペシャルコース開催一覧

【コース① 高輪ゲートウェイ駅→渋谷駅】東京に残された鉄道文化と自然をめぐる
開催期間:2025年10月22日(水)~28日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。今回は高輪ゲートウェイ駅から渋谷駅にかけて、東京に残された鉄道文化と自然を感じるコースを歩く。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース② 渋谷駅→池袋駅】異文化の路地を歩く、世界を感じる散歩道
開催期間:2025年10月29日(水)~11月4日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。今回は渋谷駅から池袋駅にかけて、世界各国の異文化を楽しめる散歩道を歩く。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース③ 池袋駅→日暮里駅】下町情緒を感じながら文学の足跡を追いかける
開催期間:2025年11月5日(水)~11日(火)

2025年10月4日(土)から11月3日(月・祝)まで、山手線環状運転100周年を記念した「つながる山手線フェス」が開催される。さまざまなイベントが行われるがその中で、JR社員と『散歩の達人』編集部が考えた「駅からハイキング」スペシャルコースをご紹介。池袋駅から日暮里駅にかけて、下町情緒を感じながら文人たちの軌跡に思いを馳せよう。「駅からハイキング」コーススポットに加え、コース付近の『散歩の達人』編集部おすすめスポットも紹介する。

【コース④ 日暮里駅→東京駅】名建築が交錯するモダンゾーン
開催期間:2025年11月12日(水)~18日(火)
【コース⑤ 東京駅→高輪ゲートウェイ駅】鉄道の今昔を歩く
開催期間:2025年11月19日(水)~25日(火)

参加者にはスペシャルなプレゼントも!

スペシャルコース参加時、各駅で駅ハイアプリの画面を提示するとオリジナルスタンプ帳をプレゼント!
※各コース受付時にスタート駅で配布。先着順・各コース数量限定。デザインは全て同じとなります。

取材・文・撮影=鈴木健太 撮影=オカダタカオ(TOP画像)