3つの星が合体した神様「福禄寿(ふくろくじゅ)」
短身長頭(背が低く頭が長い)と言われる特徴的な姿と、こちらまで表情がほころんでしまうような、屈託のない笑顔をした「福禄寿」。これは、「頭が大きくなるほど知恵が詰まっている」という表現であると同時に、「有能な人ほど、腰を低くして頭を下げよ」という考え方に基づいた姿です。
グループとしては、中国の民間信仰が形式化された「道教」の神様にあたります。日本ではあまり身近ではないかもしれませんが、儒教を開いた孔子とともに歴史の教科書にも登場する老子が開祖と一説では言われている宗教です。
道教と深い関係がある「太極図」は、懐かしのキョンシー映画や、サーフ系ブランド「TOWN&COUNTRY」のロゴマークのモチーフにもなっているので、私たちにもなじみがありますね。
道教が求めるのは、ざっくりいうと「子宝・富・長寿」の3つで、それぞれが夜空の星になぞらえられました。「福禄寿」は子宝・富・長寿の星が合体した存在として、中国では篤い信仰を集めています。
あの伊藤若冲も描いた!長生きの御利益なら「寿老人」
「福禄寿」と同じく、道教の神様である「寿老人」は、名前からもわかる通り、長寿の御利益が信じられています。頭が大きいという点など、福禄寿と似ている部分も多いですね。
「福禄寿」は経典(巻物)や宝珠を持っているのに対し、「寿老人」はうちわやひょうたんを持っているのが、見分けるポイント!
七福神としてだけでなく、「水墨画」のモチーフとしても日本に入って来ており、室町時代の水墨画の巨匠である雪舟や、令和の現代にもファンの多い江戸時代の絵師・伊藤若冲(じゃくちゅう)も描いています。
また、神様を夜空の星になぞらえている道教ですが、寿老人の星は恒星の中で全天で2番目に輝きが強く、肉眼でも観察可能! りゅうこつ座のカノープスという星で、冬の時期に見られ、中国では「南極老人星」とも言われています。この星に長生きと健康を願ってみてはいかがでしょう?
七福神の中で唯一実在した!「布袋尊」
大きなおなかと豪快な笑顔が、いかにも福を呼び込みそうな姿に見える「布袋尊」は、西暦800~900年代に中国で活躍した仏教のお坊さん。その見た目の通り、御利益は「福徳円満」。ほかにも、金運や仕事運アップも期待できると言われています。
他の七福神がいわば伝説上の存在である中、「布袋尊」は唯一の実在した人物を神格化した存在なんです! その人物とはお寺に定住せずに流浪したお坊さんで、未来を占って見事に的中させるなどといった不思議な力を持っていました。
死後は、生前に残した言葉から弥勒菩薩の化身だったという説が広く信じられるように。京都にある黄檗宗(おうばくしゅう)の本山「萬福寺」などでは、「布袋尊」の姿をした像が弥勒菩薩として祀られています。
日本に入って来た室町時代から江戸時代にかけては、日本画のモチーフとしても重宝され、葛飾北斎や月岡芳年などの名だたる絵師が描いた「布袋尊」が、現代にも残っています。
七福神はグループとして福徳満載な印象を受ける人が多いかと思いますが、今回ご紹介した中国の3柱はそのイメージの中心を担っているようですね。
次回は、七福神の中で唯一の日本の神様と、七福神の疑問アレコレを解説します。お楽しみに!
写真・文=Mr.tsubaking






