洋食ひと筋のマスターが作る定食とお弁当スタイルの小さなレストラン

南柏駅の東口を出て駅前の旧水戸街道を経由し歩くこと5分。国道261号沿いに『キッチン ホーリー』がある。

昭和チックな看板と、黒板に書かれたメニューがオシャレ!
昭和チックな看板と、黒板に書かれたメニューがオシャレ!
このほかにもメニューがある。子供が好きなおかずを取り揃えたkids弁当385円をはじめ、デラックスでも1100円。
このほかにもメニューがある。子供が好きなおかずを取り揃えたkids弁当385円をはじめ、デラックスでも1100円。

唐揚げや豚の生姜焼き、ハンバーグにエビフライなど、定番人気のラインアップから、スパゲッティやカレー、オムライスに単品のポテサラまでズラリ。黒板に書かれたメニューの多さに圧倒され、つい立ち止まって上から下まで凝視してしまった。想像を膨らませて、どんな味なのか妄想するこの時間が楽しい。

今日のランチはここにしよう。そう決めて、中に入ってみた

厨房を囲むようにL字のカウンター席が6つある。
厨房を囲むようにL字のカウンター席が6つある。

店内は4人掛けのテーブル席1つと、カウンター6席。イートインとテイクアウト(お弁当)ができ、メニューはすべて共通。よそのお宅にお邪魔したようなアットホームな雰囲気も気に入った。こういうお店、忙しい時やしっかりご飯を食べたい時、近所にあると本当に助かるんだよな。

飲食店でテイクアウトができるところが多いけど、こちらはレストランとお弁当屋さんを兼ねているというコンセプト。

それは、この店のマスター成田悟さんが長年勤めていた東京・神楽坂の洋食レストランがこの弁当店を兼ねるスタイルで営業していたので、それを踏襲しているのだとか。

イートインはスープ付きでこの価格なのも魅力的!
イートインはスープ付きでこの価格なのも魅力的!

「働いていたのは神楽坂や飯田橋を中心に、いくつも店舗を持っているような会社でした。そこで30年以上勤めていたんだけどね、勤めていた店がなくなってしまったの。いつか自分の店をやってみたいというのと、実際コレ(料理)しかできないからねぇ。そういうわけで2013年、自宅近くにこの店をオープンしたんです」と話すマスターだ。

当初はマスターが夫婦で盛り立てていたのだが、現在は姪の井上和佳さんが店のサポートを担っている。日替わり定食や新規メニューを考えるのは、主婦でもある和佳さんが大きく貢献。「SNSやチェーン系飲食店のメニューを参考に流行を取り入れたり、あとは季節感とかでメニューを変えています」という。

あうんの呼吸で店を盛り立てているマスターと和佳さん。
あうんの呼吸で店を盛り立てているマスターと和佳さん。

定番メニューがあるものの、お客さんのほとんどは日替わりメニューを目当てに毎日来る常連さん。

「うちに来るのは近所の人ばかりだけど、日替わりがあるから飽きないんだろうね。日に2回来る人もいるしね。あとは近所の会社さんがたまにお弁当とってくれるんだけど、多い時だと一度に70個っていうときもあったね」

『キッチン ホーリー』は地元に根付き、地元に愛されている店なのだ。

子供にも伝わる手作りのおいしい食事

地域の人々に愛されている理由は、まず料理の味にある。マスターは「絶対に既製品を出さない」という強いポリシーを持っている。

朝は8時から仕込みを始め、サラダのドレッシングから付け合わせのきんぴらごぼう、メインの肉や魚の下ごしらえ、卵焼きまでひとつずつ丁寧に作っていく。

端正に切り揃えられたゴボウやニンジンはさすがプロの技!
端正に切り揃えられたゴボウやニンジンはさすがプロの技!

「仕事の帰り、たまにスーパーでお総菜の割引を見つけて買って、夕飯に出すんですけど、あんまり子供が食べてくれないんですよね。だけど、ここのお弁当は喜んで食べるんです」と、和佳さん。子供は正直だなあ。

 

オリジナルの仕込みだれで味つけた唐揚げ用の鶏もも肉。
オリジナルの仕込みだれで味つけた唐揚げ用の鶏もも肉。

その反応は、料理に込めた丁寧な仕事ぶりがまっすぐに届いているからだろう。「儲けなんか全然ないよ!」と笑いながらも、手を抜かず調理をしている姿が印象的だ。

先ほど固定ファンがついている話もあったし、かなり期待大!

厨房でマスターが調理する様子を見ながら話を聞いていたので、かなりおなかが減ってきました。

野菜もお肉もバランスよく。マスターの人柄が伝わる、やさしい味の日替わり定食

お2人の話に心がほぐれたところで、いよいよランチをいただきましょうか! 常連さん気分で日替わり定食734円をオーダー。

取材当日の日替わり定食は、さっぱりハンバーグサラダのせと唐揚げ甘とろダレかけ。
取材当日の日替わり定食は、さっぱりハンバーグサラダのせと唐揚げ甘とろダレかけ。

唐揚げをフライヤーに入れ、すかさずボウルに仕込まれていたハンバーグのたねを適量手にとって成形し、熱したフライパンにジュ〜! その合間に、お皿に付け合わせのおかずを3品のせる。

揚げたての唐揚げに甘ダレをかける。もちろんこの甘ダレも自家製だ。
揚げたての唐揚げに甘ダレをかける。もちろんこの甘ダレも自家製だ。

取材のため特別に厨房に入らせていただくと、揚げ物を作る時はだいたいどのお店もキッチンタイマーをセットしたりするのだけど、マスターはノンタイマー。フライヤーを横目でチラリ、たまに菜箸でチョンチョンですよ。その所作がカッコイイ〜!

ご飯は昔懐かしいアルマイト製の型で。
ご飯は昔懐かしいアルマイト製の型で。

オーダーから5分くらいで完成。マスターがカウンターに運んできてくれた。

うわ〜、色とりどりでおいしそう!

「はい、どうぞ〜!」とマスターが日替わり定食を持ってきてくれた。
「はい、どうぞ〜!」とマスターが日替わり定食を持ってきてくれた。

ひと皿に盛り付けられたメニューの内訳はメインの唐揚げ、サラダがのったハンバーグに加えて、きんぴらごぼう、キャベツのマリネ、ほうれん草のからしあえ、卵焼きだ。ランチとしては最強の布陣ではないだろうか。

肉も野菜もバランスよくとれる充実したランチだ。
肉も野菜もバランスよくとれる充実したランチだ。

まずはスープをひと口。大根、タマネギ、ニンジンや鶏肉が入った塩ベースのあっさり味が、空腹にジリジリと染み込んでいく。

イートインのみスープがつく。この日は根菜と肉が入ったポトフ風。
イートインのみスープがつく。この日は根菜と肉が入ったポトフ風。

続いて、唐揚げをひとつ。薄衣だが、醤油ベースのたれでしっかり下味がついており外はカリカリなのに中はジューシー。コチュジャンが効いた甘辛ダレが絡んで白米に合う。

合い挽き肉で作ったハンバーグも外カリ&中ジュワーなのだが、酸っぱめのドレッシングがかかったシャキシャキ野菜と食べるからあっさりいただける。うんうん、これもご飯に合うぞ。

外はカリッと、中はジューシーな唐揚げ。甘辛いタレでご飯がすすむ!
外はカリッと、中はジューシーな唐揚げ。甘辛いタレでご飯がすすむ!

味付けが濃いめのきんぴらごぼう、風味のいいほうれん草のからしあえなど、バラエティ豊かなおかずを交互に食べ進めていく。

終始、食感や味わいの違いで楽しませてくれたのだが、ベースにはマスターの人柄を感じさせるやさしい味付けがあった。ごちそうさまでした。

自宅から『キッチン ホーリー』まではちょっと距離があるのだけど、散歩を口実に再訪してみよう。冬は角煮が人気らしいから、次は事前にチェックしてから来なくちゃね!

取材・文・撮影=パンチ広沢