みんなの居場所、心のふるさと

子供も大人も親しみを込めて“テットー”と呼ぶそこは、住宅地に突如現れ、幅10m×奥行き50mと独特な細長い形をしている。「のざわテットーひろば」は乳幼児を中心とした遊び場として2002年にオープン。地域住民グループのNPO法人により運営されている。が、珍しいのはここが私有地であること。隣に住む山縣恒子さんが大家さんだ。

「この土地にマンションの建設が計画されたんです。近隣の方は集会を開くほど反対で、うちも敷地のすぐそばに建つから困って。悩んだ末に夫が買い取ることにしたんです」

大家の山縣恒子さん。結婚後に神戸から移り住んで60年になる。
大家の山縣恒子さん。結婚後に神戸から移り住んで60年になる。

土地の活用法を模索し続けた山縣さん。プレーパーク(冒険遊び場)の存在を知り、関係者に話を聞いたり現地を見てもらい、「細長いから乳幼児向けの遊び場はどうか」と助言を受け、思いは定まった。自ら近隣住民に要望のアンケートを取り、見学会も開いた上で開園したという。

「最初は名前もなかったけれど、だんだん子供も増えて、プレーリーダーとかシステムも整って。こんないい場になるとは思いませんでした」

滑り台もある「土のひろば」。
滑り台もある「土のひろば」。
おもちゃや絵本がある小さな家「みどりのやね」。
おもちゃや絵本がある小さな家「みどりのやね」。
小さい子も楽しそう。
小さい子も楽しそう。

禁止事項はほぼなく、ボール遊びも木登りも泥遊びも自由! それを見守り、時に一緒に遊ぶのが常勤のプレーリーダー・野本美優さん。さらに地域住民のボランティアが日替わりで“お当番”を務める。

プレーリーダーの野本美優さん。2024年より着任。保育士免許と幼稚園教諭の資格を持っている。「泥遊びもおしゃべりも何でもしに来ていいよ~!」。
プレーリーダーの野本美優さん。2024年より着任。保育士免許と幼稚園教諭の資格を持っている。「泥遊びもおしゃべりも何でもしに来ていいよ~!」。

「ここに来る子は年上の人と話すのが上手! お当番さんにはママ世代もおばあちゃん世代もいて、小さい頃から家族以外の大人やお兄さん・お姉さんと関われる。テットーだからこそのコミュニケーション力だと思います。また、ママさんも、私が子供と遊んでいる間に子育ての相談もできて、ゆっくりできると言ってくれます。それが私にとってもうれしいですね」と野本さん。

生まれて22年が経ち、今や「テットーで僕も遊んでました!」と我が子を連れて来る人も訪れるという。「のざわテットーひろば」は単なる遊び場を超えて、みんなの居場所、心のふるさとになってゆく。

テット―で実ったレモンも販売。
テット―で実ったレモンも販売。
隣には大家さんの家を一部開放した『ガーデンカフェときそら』も。
隣には大家さんの家を一部開放した『ガーデンカフェときそら』も。
テットーではカフェオレ130円なども飲める。
テットーではカフェオレ130円なども飲める。
住所:東京都世田谷区野沢3-14-22/営業時間:10:00~16:00(2~10月は~17:00)/定休日:木・日/アクセス:東急電鉄東横線学芸大学駅から徒歩12分、東急電鉄田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅から小田急バス「駒沢陸橋」行き約8分の「野沢交番前」徒歩5分

取材・文=下里康子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年1月号より