家庭的な空間にほっと一息

大きな校庭のある松戸市立小金中学校や、大きな集合住宅が立ち並ぶ見通しのよい道の角地に、白壁に樹木が映えるモダンな建物がある。エントランスの木製扉を開けると、大きな窓ガラスを設えた心地よい空間。思わずほっとする柔らかな空気が流れる。

木枠とガラスでできたエントランス扉。
木枠とガラスでできたエントランス扉。

店主は徳永英子さんと娘さんの綾子さん。『foo cafe』の「foo」は、安心して一休みをすると思わず口から出てくる息遣いのオノマトペだ。

創業は、2002年11月。当初はごく普通の日本民家で始め、2019年に建て替えて今に至る。

綾子さんの大学卒業を契機に母と娘の共同経営を始めた。親子でよく喫茶店巡りをするうちに「やってみようか」ということに。

「最初のころはお客さんから大丈夫? と言われるほどでした」と笑いながら開業当時を振り返る綾子さん。試行錯誤を重ねながら親子で作り上げてきたという店は、どこか家庭的な喫茶空間だ。

1階の喫茶スペース。植栽の緑と白い壁に木製の調度品がすがすがしい。
1階の喫茶スペース。植栽の緑と白い壁に木製の調度品がすがすがしい。

からだ全体が癒やされる発酵食メニュー

お店のメニューは、いろいろ工夫をしているうちに、からだ全体でおいしいと感じる食を追求するようになったという。

15年ほど前から近くの畑や田んぼを借りて有機自然農法で野菜や玄米を作り始め、さらに発酵食品の奥深さに注目するように。

店のおすすめメニューでもある発酵玄米は、発酵の工程も工夫され、そのフルーティーな風味ともちもちとした触感が食欲をそそる。ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な玄米と、時間をかけて作られていることが一口でわかる特性カレーとのコンビネーションは絶妙で、食べていると、確かに全身においしさが浸み込んでくる。

人気のオリジナルカレーはサラダ付きで880円。
人気のオリジナルカレーはサラダ付きで880円。

「このあんこもお砂糖を使わずに発酵させて小豆(あずき)の甘みを引き出してるんです」と、デザートに差し出してくれたのは、発酵あんこモナカ。食べるとほんのりとした甘みが口の中に広がり、ほかにない深い味わいに思わずにんまり。手間暇かかったあんこを包む、招き猫のような形のモナカもかわいくて、人に教えたくないと思ってしまうほど魅力的な一品だ。

絶品の発酵あんこモナカ2個 バニラアイス添え500円。
絶品の発酵あんこモナカ2個 バニラアイス添え500円。

ほかに、酵素ジュースもおすすめメニュー。特に季節ごとのフルーツで作る酵素ジュースは人気が高い。

好評の自家製ドレッシングやフェアトレードで仕入れる有機栽培のコーヒー豆も販売している。
好評の自家製ドレッシングやフェアトレードで仕入れる有機栽培のコーヒー豆も販売している。

グリーンが映えるくつろぎの白い店

窓ガラスを庇(ひさし)のように覆う、もちの木の緑がまぶしい店内は、白壁に木の椅子というごくシンプルな空間。「グリーンが映えるお店にしたかった」というお二人が理想の喫茶空間を実現している。

入り口脇の階段を上がった2階も自室にいるようにくつろげる空間で、読書や仕事はもちろん、一家だんらんもできそうなダイニング風の個室感が魅力だ。リラクゼーションにちなんだワークショップやイベントも不定期で開催しているという。

2階の喫茶室はまるでダイニングルームのようなしつらえ。
2階の喫茶室はまるでダイニングルームのようなしつらえ。

「ゆっくりした時間を過ごせてもらえたらうれしいです」と綾子さん。口数の少ない母の英子さんも厨房でにっこり微笑んでいる。

商店街から離れた立地という環境だからなのか、店には落ち着きのあるゆるりとした時間が流れている。駅から少し歩くけれど、足を延ばしてまた寄りたくなる、心身ともに癒やされる店だ。

2階と1階つなぐ吹き抜けの階段からの眺め。
2階と1階つなぐ吹き抜けの階段からの眺め。

取材・文・撮影=常田 薫