文=パリッコ
1978年、練馬区生まれ。酒場ライター、漫画家、イラストレーター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。
自身が原案を務め、ルノアール兄弟が描く漫画『パリッコの都酒伝説ファイル第1巻』(双葉社)が発売中。
パリッコの理想的な一日 in 石神井
生まれ育ったのは東京都練馬区、大泉学園。妻と暮らすために家を出、お隣の石神井公園の街に住み始め、もう16年目になります。そんなに長くいて飽きないの? と思われる方もいるかもしれませんが、飽きるどころか日に日に地元愛が強まり、もはや一生どこにも引っ越したくない! とすら思わせてくれる魅力が、石神井にはあります。
あくまで個人的な話ですが。石神井での暮らしは、まるで毎日が終わらない夏休みのよう。今回は、当然いつもそんなにうまくいくわけではないけれど、酒場ライターという特殊な仕事を生業にしている僕の、石神井で過ごす理想的な1日のスケジュールをご紹介できればと。
朝は妻とともにばたばたと準備をし、小学校に通い始めたばかりの娘に付き添って小学校まで。見送りを終えたら、そこから遠くない場所に借りている小さなワンルームの仕事場へ移動し、一応まじめに仕事をします。
お昼時。ランチはどこにしようかな~『ムームー フェイマスデリ』
1、2本の原稿が書けたら、ちょうど昼すぎ。自炊やコンビニメシもいいんですが、久々にお店の方の顔も見たいし、今日は駅前の好きな店でランチとしゃれこみますか~と、向かったのは『ムームー フェイマスデリ』。近年、商店街に誕生した名店で、誰もが驚くボリュームのサンドイッチ(僕はスモークサーモン&クリームチーズが特に好き)や、手作りのお総菜などがテイクアウトでき、店内でも食べることができてしまう。
とにかく店主、加藤綾子さんの天才的な料理の腕前と明るいキャラクターが魅力。すっかり地元の人気店です。ただし、こんなおいしい料理が目の前にあるならと、ついランチビールをプラスしてしまうのは不可抗力。そして、綾子さんもお酒が大好きなので、うっかり瓶ビールをシェアして乾杯してしまうという、石神井あるある。
『ムームー フェイマスデリ』店舗詳細
夕方のゴールデンタイムはゆったり~『伊勢屋鈴木商店』
ふたたび仕事場に戻り、うまいこと早めの夕方に仕事が落ち着けば、そこからは僕のゴールデンタイム。あ、当然ながら、妻よりも時間に自由のきく僕が、夕飯の買い物や娘のお迎えに行くことは多いです。が、この日は特別、それらを妻にまかせ、地元で飲んで帰っていいというパターンだったとしましょう。
まず、大好きな石神井公園をゆっくり散歩しながら駅へと向かう。特に三宝寺池エリアは東京23区内とは思えないほど自然豊かで、お気に入りのベンチに寄り道して、しばしぼーっとしたりしながら。
続いて銭湯。『豊宏湯』は、地下水を薪で沸かす昔ながらの銭湯で、激熱のお湯で心身がリフレッシュされます。
さらにすぐ近くの酒屋『伊勢屋鈴木商店』では、店頭にテーブルとベンチがあって、角打ち的に風呂あがりの一杯がやれてしまう。僕がいちばん多く出入りしているお店かもしれません。
知識豊富な女将さんのお話もいつもおもしろく、女将さんがプロデュースに携わった、練馬産のブルーベリーを使った「ネリマーレンブルーベリーブロイ」は、年ごとに味わいに特徴があるのも楽しいんですよね。運良く生があれば、ぜひ飲んで、練馬の恵みを味わってみてください。
『伊勢屋鈴木商店』店舗詳細
いよいよ酒場タイム。ここからが本番!~『もつ焼 加賀山』
さて、いよいよ本格的な飲みタイムのスタート! 今日はどの酒場で飲もうかな。
焼き鳥なら『ゆたか』、魚系なら『天盃』や『くうのむ ちゃのま』、沖縄料理なら『みさき』か『みやこ』、中華や定食系も捨てがたいし……いや、今日の気分はもつ焼きだ! となれば『加賀山』へゴー!
お、運良くカウンター席が空いてるぞ。
というわけで、まずはパーフェクトに旨い黒ラベルの生から始め、続いてホッピーに移行。おつまみは必ず頼む絶品串「シロ」に、煮込み。あとはなにを頼もうかな……。
『もつ焼 加賀山』店舗詳細
と、楽しい楽しい石神井ライフ。
機会があればみなさんもぜひ、お越しくださいね。酒場で隣り合わせたら乾杯しましょう!
撮影=鈴木愛子
『散歩の達人』2024年6月号より