こだわりの手作りケーキ
店頭では、さまざまな種類の焼き菓子やケーキが売られている。これらはすべて、お菓子作りを担当しているベイカーさん達による手作り。みなさんに、メニューについて説明してもらった。
お店で一番人気の焼き菓子がフィナンシェ350円。
一晩じっくり寝かせた生地を高温・短時間で焼いているため、外はカリッと、中はふわっとした食感なのが自慢だそう。
あんバタースコーン480円もいただく。意表を突く組み合わせかもしれないが、これがおいしい。あんこの甘さと、バターのしょっぱさがうまくマッチして、絶妙な甘じょっぱさが口を包む。
そして、お店の一押しが、ヴィクトリアケーキ500円。しっかりとした生地にバタークリームが塗ってあり、そこにいちごジャムが挟み込まれる。レシピを聞くと、とても濃厚な一品にも思えるが、口に入れてみると不思議にも、あっさりとまろやかな味。
「ケーキやお菓子を作るときは、一口入れたときの感動や驚きを大事にしています」
とベイカーさん。たしかに、それぞれのメニューが、材料や食感で私たちを驚かせてくれる。
スペシャルティコーヒーで、日常から離れた空間を
ケーキや焼き菓子といえば、一緒にいただきたいのがコーヒーだ。この店のオーナーでもある西方優さんにコーヒーを淹れていただいた。
「コーヒーは自家焙煎した、スペシャルティコーヒーのみを使っています。コーヒーを通じて日常から離れた非日常の空間を味わってもらえればと思っています」
丁寧に抽出されたハンドドリップコーヒーは、浅煎りのエチオピア550円。西方さんは、このエチオピアで、コーヒーの酸味は「ただすっぱいだけでない」ことを伝えたいという。
たしかに、口に含んだエチオピアには、果実をも思わせる程よい酸味があって、一般的にいわれる“酸っぱい”味とは違う。どこか芳醇さも含んだ酸味なのである。それが、甘いケーキによく合う。
元々西方さんは、大手のコーヒーチェーン店で働いていた。それから、コーヒーとは全く異なる業界に身を置いたのち、蔵前に『WESTSIDE COFFEE』をオープンする。『n COFFEE & BAKE』はその姉妹店でもある。
「コーヒー業界から離れてみて、自分の好きなことがわかりましたね」。そうほほ笑みながら語る。
そして西方さんは、ケーキやコーヒーのおいしさにだけこだわっているのではない。
「商品がおいしいのは当たり前で、大事なのは接客、“人”の部分だと思います。その部分で他の店と差別化をしたい。その点、この店のスタッフはいい人が揃っているんです」
こだわりは味だけではない。“人”で勝負する
「お店に毎日来てくれる人もいて、お話することがとても楽しいです。近隣の人にとって居心地の良い空間を作ることができればと思っています」と語るのは店長さん。
店長さんは、元々、西方さんと共に大手コーヒーチェーンで働いていた。そのあと、西方さんに誘われて店長を務めることになったのだ。
「僕は人とコミュニケーションを取る中で生まれるものを大事にしていきたいと思っているんです。それぞれのスタッフが活躍して成長しているのを見るのが、やりがいの一つですね」
オーナーの西方さんは言う。取材中、お店の人がみんな笑顔でコミュニケーションを取っていることが印象に残った。お店の人が楽しそうに働いていると、やってきたこちらまでなんだか楽しい気分になってくる。
「常連さんは名前でお呼びしたり、お客さんのために先回りして扉を開けたり、それでお客さんが笑顔になってくれることに喜びを感じますね」
明るい笑顔が飛び交う『n COFFEE & BAKE』には、今日もお客さん思いの愉快な仲間たちが働いている。
取材・文・執筆=谷頭和希