ムー大陸と同列だったアイリッシュコーヒー

そういう“冬おいしさ加速系ご飯”ってあります。以前のさんたつでも念願の「おでんの出汁割り」を飲みに出かけましたが、あれも日本酒をおでんの熱い出汁で割るという粋なもので、松尾芭蕉が知っていたら冬の季語にしていたこと間違いなしです。

そんな“冬加飯”に、最近また新たに仲間が加わりました。つい先日「名前は知っているがその実体を目にしたことがない」という点でムー大陸と同列だったアイリッシュコーヒーとついに対峙したのです。渋谷にある『WOODBERRY COFFEE』というお店で何気なく注文し飲んでみたのですが、それがもうむちゃくちゃにおいしくてハマり……あ、あとムー大陸と同列ではなくなったと知識を更新することができました。

それからというもの、ご自慢のMacBookをできる限りカタカタと叩き鳴らして調べ、この世にはコーヒーをベースにした冬にぴったりのお酒がたくさん存在することを知りました。

私は牡牛座なので、そうと知ったら黙っていられません。むかし占いで「あなたは牡牛座だからおいしいものが好きなはずです」と言われ「どうしてそれを知っているんですか……⁉」と驚愕したことがあります。そんな牡牛座のプライドにかけて、今回はおいしいコーヒーのカクテルを巡ってみたいと思います。

 

最初にやってきたのは、東京スカイツリーの足元……もしスカイツリーに足が生えていたら1歩で着きそうな距離感にある『UNLIMITED COFFEE BAR』というお店です。休日の夕方ごろに行くと満席で待ちましたが、10分くらいで座れました。

そういえば……この10分間で突然「待つ」に関して気付きを得たのですが、もしかしたら「待つ」って自分が洗い出される時間かもしれません。私はただボケッとしていたつもりだったんですが、気付けば店内のお客さんがマグカップを130度くらいに傾けて飲んでいる様子を注視していました。そして「あんなにキツめ角度で飲むということは……もうコーヒーが少ないってことだから……やった! もうすぐあそこの席が空くぞ!」と、無意識に測っていたのです。自分の浅ましい一面が洗い出されました。ショックを受け終わったタイミングで、ちょうど全く違う席が空き、案内してもらえました。

「シグネチャーエスプレッソマティーニ」と「エスプレッソ ラムカウ」という渾身の注文をして待ちます。今きっとこだわってくれているんだろうなあ……くらいの時間待つとお酒が運ばれてきました。

なんと「シグネチャーエスプレッソマティーニ」はでっかいキノコみたいなグラスに入ってやってきてくれました……! もうそのビジュアルからテンションが上がって記念撮影をしてしまいました。

飲んでみると……甘くて冷たいです! メインは酸味のあるブラックコーヒーで、そのおいしさをお祝いするような砂糖の甘み、マティーニの香りがふわっと上がって、飲んだあとはブラックコーヒーの苦さと真ん中にカシスの重さが残ります。

なんか伝わるか分からないんですが……戦隊ヒーローが5人集結できたときの合わせ技みたいでした。それぞれができる最大限のビームを出したら、その5つが合わさって虹色の大きな1つのビームになるみたいな……そんなイメージで食材みんなが協力して1杯のおいしいを作り上げていました。そういえば、ああいうビームって普段のテレビ放送だとあんまり見られないけど、映画になると絶対に見られますよね。そんな貴重なビームを擬似体験したみたいなお酒でした。

そして「エスプレッソ ラムカウ」は、もう一口目で「おいしい……」と笑顔になる味でした。

熱いエスプレッソの上にはふわっふわの泡が乗っていて、この泡が、飲もうとグラスを傾けた人間の口に「行け行けー!」と運動会の玉入ればりにいっぱいに入ってきて生クリームの幸せで支配してきます。

それにしても生クリームってどうしてこんなにも心をまるくしてくれるんでしょうか……? これはもうかなり自信を持ってお届けしたい仮説なんですが、生クリームの消費が多い地域と、幸福度の高い地域って一致すると思います。なんか私すごい自信があって「もうその研究結果は出ているはずだ!」と調べてみたら全く出てきませんでした。そうですよね。世の学者さんって暇じゃないですもんね。

そして、こちらのお店のエスプレッソラムカウはなんとトランスフォームタイプでした。実は最初に運ばれてきたとき店員さんが「上に乗っているドライオレンジは潰しながら飲んでください」と素敵なイントロダクションをお届けしてくれていたのです。ちょうど思春期も終わったので、反抗せず言われた通り潰して飲んでみます。すると、オレンジの香りが泡の周りをほんのりと包んでホットミルクを爽やかに変身させます。そうして飲んでいき、最後のコーヒー小なりオレンジになったところでオレンジを総叩きして香りを移らせまくったものを飲むと、もうオレンジピールを食べているかのような強さになりました。こうして姿を変えてくれるのでエスプレッソラムカウ最終形態まで見届けるのがオススメです。

ミシェルは衝撃的なおいしさ

コーヒーのお酒を2杯だけ飲み、そそくさとお店を出てきます。今日はハシゴがしたいのです。

東京スカイツリーを横目というか高さがすごいので縦目にして、次の目的地のため駅を目指して歩いていきます。すると……道すがら「なにも食べてはいないのにこの満足感はなんだ……?」と疑問が上がってきました。もしかしたらなのですが、コーヒーカクテルってたった1杯でもフルコースをギュッとしたくらいいろんな素材によって完成されているので、それがこの満ち足りた気持ちにつながっているのかもしれません……。コーヒーカクテルなんて聞いたらおしゃれな印象を持ってしまいますが、実はおつまみ要らずのお得ドリンクなのかもしれません……!

 

次は、東中野にある『COFFEE BAR GALLAGE』にやってきました。

ここは東中野ギンザ通りという、本当に生活にちょうど良い商店街の中にあります。「えいっ!」と意を決してお店に入ります。私は29歳なのですが「年齢制限大丈夫かな……?」と思うくらい大人の雰囲気があるお店でした。

席に着くと店員さんが「お通しです」と、なんとホットコーヒーを出してきました……! コーヒーと名のつくお店でお通しにホットコーヒーってその自信とストレート勝負感がカッコよいですよね……! さらにそれが鳥にすごく無理な体勢をさせてできているグラスに入っていて、そこも含めて良かったです……!

店員さんが、お通しのコーヒーの説明をしてくれます。「こちらはゲイシャという品種です。ジャスミンのようなフローラルな香りと黄色い桃のような風味をお楽しみください」

私はこういう味のガイドを聞くのが好きです。教えてもらうと目的地ができたようで、ガイドマップを握りしめて「ジャスミン」や「黄色い桃」の風味を探して旅をするような感覚になって楽しいです。

では、今再び渾身の注文をします。こちらのお店では「アイリッシュコーヒー」と「ミシェル」をお願いしました。店内はジャズが流れていて、時よりドオオオオッと音が大きくなったりすごく小さくなったりして「ジャズの盛り上がりってボリュームなのか……?」と翻弄されているとお酒が運ばれてきました。

綺麗な逆三角形のグラスに入った「アイリッシュコーヒー」です。

飲んでみると……まず上に載った生クリームの冷たさがやってきて、そのあとすぐ下に潜伏していたホットコーヒーの熱さが攻め入ってきます……! 口の中に冷たいと熱いが同時にある感覚……なんだかお風呂の追い焚きに似ています。湯船に浸かり「冷たいな……」と追い焚きをすると下からドドーッと熱いお湯が追加されるのが追い焚きですが、そんな口当たりがアイリッシュコーヒーならではすぎて、その不思議さが楽しくて、ついハイペースでお酒を運んでしまいます。いや、楽しいだけじゃなくもちろんおいしかったです。アイリッシュコーヒーはウイスキーが入っているのが特徴なのですが、このウイスキーの香りはコーヒーが少し持っていた酸味を一緒に広げているようでした。1杯のカクテルの中でウイスキーによるコンサル関係ができ上がっていました。

そして「ミシェル」です。これは……もう衝撃的においしかったです……!

赤ブドウをギュッと絞ったジュースみたいなジューシーさでむちゃ旨でした……!! ペットボトルの炭酸を7回開け閉めした後みたいな超微炭酸の、その刺激の少なさが良い意味で味を邪魔せず飲みやすさに貢献しています。1800円するのにゴクゴク飲んでしまいます。まじランニングした後でも余裕で飲めると思います。コクがあるのにサラッとしているのですが、そのサラッとさ加減がすごくて、コクはまだ舌の上にあるのに物体はもう喉の奥に消えているという感じです。速すぎて音が後から聞こえる、みたいなカクテルでした。

そのあとは「もうコーヒーのお酒、全部いったれ!」と「カルーアミルク」とこちらのお店の「エスプレッソマティーニ」もお願いしました。

「カルーアミルク」はホットで、暖かく飲むのが初めてでした。ラムが黒糖のようだったのですが、それがミルクの甘みと、お砂糖の甘みと3つ重なった三重奏の甘みになっていておいしかったです。

「エスプレッソマティーニ」は、酸味と香りがすごく強くかったです。なんか飲むと「口の中で風が吹いているのか……?」と思うほどの風味でした。あとトッピングで載っていたコーヒー豆がずっと沈まずに浮いていて、エスプレッソマティーニを死海だと思っているようでかわいかったです。

そうしてこの日は大満足で帰りました。そして、まあ……すこし考えれば分かったことなのですが、カフェインのおかげでガッツリと目が冴え、我が家の天井をじっくり観察してから眠ることができました。意外に汚れにくそうな素材でできていてうれしかったです。

コーヒーカクテルを飲んで、天井を再確認する夜を

後日、漫才協会で出番があった日、帰りがてら浅草にある『COFFEECOUNTER NISHIYA』にもちょこっと足を運んでみました。アイリッシュコーヒーがおいしいとの噂を聞きつけています。

ここはスタンディングスタイルのカウンターで、目の前でマスターがカクテルを作る様子を見ることができるのですが、それがもう期待値がぐんぐん上がってわくわくでした。

グラスにウイスキーを入れて……そこへ浸すように真っ白な砂糖……これだけでもうおいしそうでした……! 熱いコーヒーをグワッと注いだあとは……最後……! 今この世に誕生したてほやほやの生クリームを載せて完成です……! 文章からバレてしまうかもですが、めっちゃガン見しました。

ここのアイリッシュコーヒーは生クリームの層が4cmくらいあって分厚かったです。一口飲んでみると……その奇跡の4cmによって上は生クリームなのですが、下のコーヒーと触れた部分は溶けて濃厚なミルクのようになっています……! 一口目はそんな生クリームだけが入ってきて、子どもの頃に思い描いた夢みたいな味で幸せに包まれます。またこちらも冷たいと温かいの追い焚きでしたが、コーヒーが気合いの入った熱さで一番温度差を楽しめました……!

めっちゃ、飲みました……。今回冬にぴったりのコーヒーカクテルを求めて歩き回ったんですが、もうほぼ趣味のおでかけのように好きにたくさん飲んでしまいました。

コーヒーカクテルは、コーヒーの持つ人をホッと休息へ誘う力とお酒の持つ開放感を同時にもたらせてくれます。よろしければこの冬、コーヒーカクテルを飲んで自分の家の天井を再確認してみてください!

文=アンゴラ村長(にゃんこスター)

こんにちは。にゃんこスターのアンゴラ村長です。皆さんは、毎日のように通っていた道ってありますか?学校までの通学路だとか、昔住んでいた街の駅までの最短ルートだとか。え……! 今、自分で打った「道」って文字を見て連想したんですけど、人の体にも「食道」ってありますね! 私たちは普段「道」を歩いているだけでなく、時にご飯の「道」となって歩かせたりもしていたんですね……!