異彩を放つ外観! ここが銭湯!?
新京成電鉄の習志野駅から住宅地を歩くこと約5分。屋根の上には等身大のギリシャ彫刻のような像がいくつも並び、ピンク色のラインが特徴的なその外観は圧倒的な存在感を発しています。
銭湯といえば、木札で鍵をする下足箱がおなじみですが、こちらはLEDによって下足箱全体が発光します。もはやそれは銭湯でもどこかの国でもない、完全オリジナルな世界観。
店内へ進むと、ロビーには大きな暖炉まで設えられて、18~19世紀ヨーロッパを彷彿とさせるような、ロココ調やベルエポックな雰囲気をたたえた家具が所狭しと並んでいます。
男湯の脱衣所には印象的な曲線の意匠がついたロッカーがそびえ、力強いライオンが大きな口を開けて迎えてくれます。
天井からはシャンデリアがさがっていて、フランスの人気デザイナーであるミュシャの世界に飛び込んだような、アール・ヌーヴォーの世界観が広がっています。
デザインだけでなくお風呂も魅力満点
カラフルなステンドグラスから七色の光が差し込み、西洋絵画から飛び出して来たような天使までいる浴室もまた、同様の雰囲気が満点!
それでも、数種類のジェットバスに打たせ湯、薬湯もあれば電気風呂に爆泡風呂まであり、お風呂のバリエーションが豊富でデザイン性を抜きにしても十分に楽しめる銭湯です。
さらに、寝転んで入るジェットバスは3人まで入れますが、それぞれにテレビが設置されています!
サウナにテレビがあるのはよく見かけますが、浴室に何台も設置されている銭湯は唯一無二と言っていいでしょう。
寝転んでお湯に浸かりながら、自分だけのテレビをゆったり眺められるなんて、贅沢そのものです。
超高温サウナでサウナーも大満足
スーパー銭湯ではなく、銭湯の価格でここまで楽しませてくれるだけでも十分ですが、クアパレスはサウナもすごいんです!
2種類あるサウナのうち、高温の方はなんと約120度でサウナマニアも唸らせるほどの激アツ!
大型モニターが設置され映画が流れているのも素敵です。
中温のサウナも約98度で高めの設定。こちらは遠赤外線式なので温度以上の発汗が得られ、十分すぎるほどに汗だくに!
そして、こちらにはテレビモニターが4台(大型モニター+下段に3台)あって、ここでもそれぞれ別のチャンネルが流れています。
サウナに入って、テレビで好きではない番組が流れていてがっかりすること、サウナ好きの方なら経験ありますよね?ここならその心配がないわけです!
余談ですが、日曜の朝サウナに行くと、全裸で汗だくの男たちとともに『プリキュア』を観るという、シュールな体験ができることもあります!
実は80年近い歴史を持つ銭湯だった
なぜ、こんなにも個性的な銭湯が誕生したのか、店主の水野さんに話を聞きました。
「元々は『富士見湯』として昭和21年(1946)にできた銭湯です。昔はここからも富士山がよく見えました。当時はどこにでもあるような町の銭湯といった風情でした。でも現代は、ほとんどの家にお風呂がありますね。それでも行きたくなるような銭湯にしようと、1990年に改装することにしましたが、周囲からの反対もありましたね」
「富士見湯」は、この地の農地開拓のために全国からやって来た入植者と地域の人々を癒やすために作られた銭湯でした。
ド派手な『クアパレス』に変わっても、雰囲気に似つかわしくないスポーツ新聞が脱衣所に用意されているなど、地域の人をはじめとしたお客さんを思う気持ちが、そこここに垣間見えます。
スーパー銭湯のような充実度と外国のような独特の雰囲気を、500円という銭湯価格(2024年1月現在)で味わえる『クアパレス』、都内からわざわざ出かけても満足できること間違いなしです!
写真・文=Mr.tsubaking