「こんな所に!?」知る人ぞ知る、門前仲町の隠れ家的カフェ
地図を見ただけではちょっと入り口に迷ってしまうほど、なかなか珍しい場所に店を構える門前仲町の隠れ家的カフェ『LE CAFE KODEN』。
マンションの中にひっそりと佇むお店は、隠れ家感満載!なんとお店は元々駐車場だった場所に作ったのだとか。
「オープン当初は私の友人や知人、地元の方々が主なお客さんでしたが、最近では20代くらいの新規のお客さんも増えています。お店のインスタグラムを見て下さる方が多いようで。カフェタイムには、特にバスクチーズケーキが人気です!」
と、温かな笑顔で語ってくれる向殿さん。
美食の街、オーストラリアのメルボルンで焼き菓子について学んだ経験のある向殿さん。帰国後は、ホテルのパティシエや静岡県でカフェの運営などに携わったそうだ。
その間もお菓子作りやコーヒーの焙煎、ラテアートやテーブルコーディネートなど、とにかく探究心を切らさずに飲食に関する多くのことを学び続けたとのこと。
「自分の好きなことばかりやってきたけど、そのおかげで、自分のこだわりがたっぷり詰まった今のお店をオープンさせることができました!」と語る向殿さん。
コーヒーの湯気のような温かな雰囲気をまとう向殿さんだが、それとは裏腹に、話を聞けば聞くほどご本人のアグレッシブさが伝わってくる。閑静な住宅街という立地も相まって、オーナーのセンスの良さが随所に散りばめられた店内で淹れたてのコーヒーをいただけば、日々の喧騒を忘れてほっとするひと時を過ごせそうだ。
旬野菜をたっぷり使ったこだわりキッシュと、A4ランク以上の国産黒毛和牛ローストビーフ!心と体が喜ぶ、ボリュームランチプレート
今回は、ランチタイムで一番人気というルカフェコ特製プレート1780円をいただいた。
彩り鮮やかで写真映えも抜群のプレートは、提供された瞬間に思わず顔がほころぶ。シャキシャキ食感と新鮮な葉の旨味が堪らないサラダ、程よい酸味とニンジンの甘みが絶妙にマッチしたラペ、丁度良いオイリーさがクセになるキノコのマリネ。
どうやらこの店のプレートは、どの副菜もメイン級のおいしさと存在感を持ち合わせているようだ。
「うちでは主に、神奈川県南足柄市にある『金太郎ファーム』さんの野菜を使っています。無農薬・無化学肥料の野菜は、やっぱり新鮮でとってもおいしいんですよ」という話を聞き、色々と納得。
サラダをいただいた後は、お待ちかねのローストビーフを味わってみる。ローストビーフといえば甘酸っぱいタレをかけていただくのが定番だが、『LE CAFE KODEN』のローストビーフにタレは不要。なぜなら、タレを使わずとも、驚くほどしっかりした旨味が肉の中に凝縮されているのだ。
「ローストビーフのお肉は、A4ランク以上の国産黒毛和牛を使っています。基本的にはA5ランクを使うことが多いですかね。過去にはオーストラリア産の牛肉を試したこともあるんですが、ビーフジャーキーのような味わいに納得がいかなくて。真空低温調理しているので、柔らかく、味もしっかり染み込んでいます」
お次はキッシュ。一口食べた瞬間に、生地のサクサク加減に圧倒される。卵のコクとクリーミーな味わい、そして程よい塩気が複雑に絡み合い、うっとりとするおいしさだ。
なんとこのキッシュ、作るのに3日近くかかるらしい。
「生地を作って、休ませて、一度焼いたキッシュは一旦冷ましてからカットして、そして最後にもう一度焼き上げて……とにかく手間がかかってます。パイ生地がくにゃっとなってしまうのがどうしても嫌で」
小麦の力強い旨味を感じられるパンも、もちろん向殿さんの手作り。シンプルながらも、もっちり食感が堪らない。聞くと、天然酵母と国産小麦にこだわっているとのこと。
「プレートの料理はどれもお店一押しのものばかりです。オープン当初、どのメニューを一押しにしようか悩んだ結果、全部一緒に入れちゃえばいいんだ!ということで完成した、皆の夢が詰まった一品です(笑)」
オーナーこだわりの料理を一皿で網羅できる絶品ランチプレート、食後はおいしさの余韻に浸り、取材中であることも忘れて思わず夢中になってしまった。
「体にも地球にも優しいお店でありたい」料理のおいしさに隠された、オーナーの確固たる信念
「うちのコーヒーは、全てRA認証、フェアトレードのものだけを使っています。野菜や小麦も、基本的にオーガニックのもの、国産のものにこだわっているんです。というのも、今、色々な面で世の中が壊れていってるじゃないですか。それに加担したくなくて」
穏やかな表情ながら、凛とした瞳でお店への想いを語る向殿さん。
「体にも地球にも優しいお店でありたい。だから、使う食材にも徹底的にこだわることで、未来に対する私なりのほのかなメッセージを皆さんに伝えているつもりです」
この話を聞いて、この店で提供される料理とドリンク、全てに一貫した力強いおいしさを感じられる理由がわかった気がする。向殿さんのブレない信念が、どのメニューにもしっかり反映されているのだ。
誰もが気軽に立ち寄れる「カフェ」という空間で、料理やコーヒーを楽しむ。それだけで、何となく未来に貢献できる。そんな素敵な循環を体現できるお店が、ここ門前仲町にはあるのだ。
「ちょっと一息つきたいな」と感じる時は、『LE CAFE KODEN』に立ち寄ってみよう。このカフェに来れば、きっと誰もが心と体が喜ぶ贅沢なひと時を過ごせるはずだ。
取材・文・撮影=杉井亜希