東西線と大江戸線の門前仲町駅1番出口から、永代通りの新旧入り交じる商店街を進む。富岡八幡宮を左手に見た先の、路地を入ったところに位置するのが『BAKU Coffee Roasters 莫珈琲焙煎所』だ。
店舗が近づくにつれ、コーヒーのいい香りが漂ってくる。
店の外観からは、スタイリッシュなカフェであることがうかがえる。今回はこの『BAKU Coffee Roasters』で、休息のひとときを過ごした。
メニューに潔さと自信を感じる
店内に入り、まずは注文と会計をする。
『BAKU Coffee Roasters』のメニューは、5つのコーヒーメニューとプリンだけ。パンメニューのサンドイッチは、週末だけの提供らしい。
余計なメニューを排除しているところに、潔さと自信が感じられる。
今回は、ホットのカフェラテ600円とプリン350円を注文した。お支払いは現金のみである。
コーヒー豆は、常時6~7種類が提供されているそう。お客さんの好みに応じて、豆を選べるとのことだ。
この日用意されていた豆は、ラオス、インドネシア、タンザニア、マラウイ、中国、ミャンマー、エチオピア……という産地。
種類豊富だが、コーヒーに詳しくなくても心配はいらない。何を選べばいいのかわからないときには、オーナーに相談してみるといいだろう。好みにあう豆を選んでくれる。
シルバーに輝くコーヒー豆焙煎機がインテリアの主役に
店内に入り、真っ先に目に飛び込んでくるシルバーに輝く大きなマシンは、コーヒー豆の焙煎機。
まるでインテリアのようだが、けっしてただの飾りとして置かれているわけではない。30年前の機械をオーバーホールして、焙煎に使っている。実際に、日々コーヒー豆を焙煎しているそうだ。
店内は、この焙煎機が主役となっている。その他にも、メンズライクなインテリアは洗練されていて妙に落ち着ける空間だ。
高い天井と、倉庫の庫内を感じさせる、コンクリート打ちっぱなしのようなグレーの壁面。そこへ味のある雑貨、観葉植物やサボテンなどがセンスよく飾られている。
コーヒーにまつわるアイテムや自転車などが、居心地のいい空間を演出しているようだ。シンプルながらおしゃれなインテリアに落ち着く。
小気味よい音楽と、カウンター越しにマスターと常連客が会話している様子もうかがえる。コーヒー専門店だからといって敷居が高いわけではなく、地元の常連さんに愛されているようだ。絶えず、入れ代わり立ち代わり親しげなお客さんがやってくる。
ペット同伴でも入店OKなので、愛犬のお散歩がてらに立ち寄るお客さんも……。ふだん使いにぴったりなカフェである。
カフェラテと自家製プリンで思い思いの時間を過ごす
最初に、美しくラテアートされたカフェラテ600円が運ばれてきた。凝縮されたエスプレッソの苦味と味わいはそのままに、ミルクがまろやかさを引き出している。
シュガーがなくても、ミルクの甘みでおいしくいただけるのだ。
唯一のフードメニューはかための自家製プリン350円。ぽってりとした、温かみのある器もいい。
週末にはパンメニューもあるらしいが、平日はプリンのみの提供だ。
プリンは、外側はしっかりと固めだが、中はなめらかな舌触りで口の中でとろける。たっぷりとかけられた、ほんのりと苦味のある濃厚なカラメルソースが、絶妙なバランスだ。カフェラテとの相性も抜群である。
『BAKU Coffee Roasters』は、コーヒー専門店だが、こだわりが強くて入りづらい、なんてことはまったくない。
マスターの岡村さんはこう語る。「じつは、こだわりがあるようでないんです」。
ていねいにドリップされた1杯のコーヒーはもちろんだが、その居心地のよい空間や、カウンター越しに楽しめるマスターとの他愛もないおしゃべり……。そのすべてが一体となり、また足を運びたくなるカフェがそこにあるのだと感じた。
毎日のように来てくれる地元のお客さんが多いというのも、おおいにうなずける。男前なインテリアなので、客層は男性が多いようにも感じられたが、そんなことはない……女性客もペットも気軽に立ち寄れるカフェだ。
門前仲町に訪れた際には、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。
取材・文・撮影=ほしななこ