新大久保のコリアンタウンにおもしろ新スイーツ現る!

JR新大久保駅から徒歩5分ほど。異国情緒漂うコリアンタウンで不思議なオブジェが目に留まり、思わず足を止めた。このくるくるした円筒状のものはなんだろう?

西大久保公園にほど近い場所にある2階建てのおしゃれな店。
西大久保公園にほど近い場所にある2階建てのおしゃれな店。
ドーンと突き出ている謎のオブジェ。遠目で見てもよく目立つ。
ドーンと突き出ている謎のオブジェ。遠目で見てもよく目立つ。

店頭の看板を見ると、“煙突パン”と書いてある。なるほど、くるくるオブジェは煙突に見立てたパンだったのか!

煙突パンは全9種類。ハニー、チョコ、シナモンなどなど、いろんな味があっておいしそ~♡
煙突パンは全9種類。ハニー、チョコ、シナモンなどなど、いろんな味があっておいしそ~♡

店名の『Trdlo』はチェコ語で“煙突パン”という意味。チェコでは“トゥルデルニーク”、ハンガリーでは“クルトシュカラーチ”と呼ばれている定番スイーツだ。専用の棒にパン生地を巻きつけ、電熱器の上で回転させながら焼き上げる。

注文が入ってから火にかけ、5分ほどでこんがりと焼き上がる。
注文が入ってから火にかけ、5分ほどでこんがりと焼き上がる。

この菓子パンの形とおいしさに魅了された、オーナーの許禎尹(ホジョンユン)さん。トルドロは韓国で人気だそうで、「日本にも紹介したい」と思い、トルドロ専門店をオープンした。

(左から)スタッフの小林桃花さん、オーナーの許禎尹さん、スタッフの本田絢音さん。
(左から)スタッフの小林桃花さん、オーナーの許禎尹さん、スタッフの本田絢音さん。

「新大久保のコリアンタウンには、おいしくて見た目もかわいいデザートを出すカフェがたくさんあります。ただ、温かいデザートを提供している店はなかなかないので、この焼きたての甘いパンはきっと、お客さまに喜んでいただけるだろうと思いました。トルドロは見た目だけでなく、食べ方もユニークなんですよ」と許さん。

へえ~、どんなふうに食べるものなのか楽しみだ♪

ほんのりスイート&ビターな奇想天外の組み合わせ

1階には一枚板の木製テーブルが2台。入り口から見て正面奥のカウンターで注文する。
1階には一枚板の木製テーブルが2台。入り口から見て正面奥のカウンターで注文する。

今回いただくのは、カラフルなレインボーのトルドロ。カラースプレーチョコがた~っぷりまぶしてあり、どことなく懐かしさを感じて童心に帰ったような気分になる。

ドリンクは、許さんのおすすめをチョイス。この真っ黒な液体……、実は黒ビールなんです!

トルドロのレインボー780円、生クリームシナモン黒ビール780円。アルコール飲料にはおつまみが付く。
トルドロのレインボー780円、生クリームシナモン黒ビール780円。アルコール飲料にはおつまみが付く。

トルドロといっしょに手渡されたのは、3本の指に装着するビニール手袋。これで手を汚さずに食べられる。チョコレートがまぶしてあるものは両手にはめて食べるといいそうだ。

親指・人差し指・中指に装着する“指手袋”。ヤンニョムチキンなど、3本指でつまんで食べるのが韓国のスタイルだとか。
親指・人差し指・中指に装着する“指手袋”。ヤンニョムチキンなど、3本指でつまんで食べるのが韓国のスタイルだとか。

トルドロの食べ方を許さんに教えていただき、パン生地をつまんで引っぱり上げると、くるくる~っとおもしろいように生地がほどけはじめた。この感触、なんか気持ちいいカモ♪

トルドロを指でつまんでくるくるくる~♪ パン生地の内側がモチッとしているのがわかる。
トルドロを指でつまんでくるくるくる~♪ パン生地の内側がモチッとしているのがわかる。

木製のキッチンペーパーホルダーに立てられたトルドロはなんだか煙突みたいで、くるくる引っぱり上げたパン生地が煙のようにも思えてくる。

そして、ニョロニョロとのびたパン生地を食べやすい大きさにちぎって、パクッとひと口。焼きたてのトルドロはふわっと温かく、パン生地自体にほんのり甘みが感じられる。外側はサクッ、内側はモチッとしていてとってもおいしい!

焼き上がったパン生地をアーモンドやココナッツなどでコーティングし、木製トングで棒から外す。
焼き上がったパン生地をアーモンドやココナッツなどでコーティングし、木製トングで棒から外す。

生クリームたっぷりのデザート風黒ビールとの相性もバツグンで、甘いパンをつまみにお酒がぐいぐいすすむ。シナモンが苦手な筆者なのだが、このシナモン黒ビールはめちゃくちゃおいしくて驚いた。

「実は、私もシナモンが得意ではないんですよ(笑)」と許さん。シナモンパウダーと黒砂糖を独自に配合して毎日混ぜ合わせ、2週間ほど熟成させることで香りをおさえて、シナモンが苦手な人の口にも合うように仕上げているそうだ。黒砂糖の甘みがほんのり感じられ、ジャリジャリした食感もまたいい。

「韓国のカフェでシナモンパウダーをふりかけた黒ビールを飲んだ時に、『これはおいしい!』とハマってしまって。煙突型をした甘いパンと、シナモン入りのほろ苦い黒ビールの組み合わせは、見た目も味もおもしろいだろうと思って看板メニューにしました」。

シナモン黒生ビール680円。ビールの泡に自家製シナモンがた~っぷり。
シナモン黒生ビール680円。ビールの泡に自家製シナモンがた~っぷり。

できたて熱々パンを堪能できる居心地のいい店

「本場の味に近づくように、トルドロ専用の小麦粉を特注しています。ハンガリー人のお客さまが『地元の味がして懐かしい』と喜んでくださったのはうれしかったですね」と許さん。

店の2階に工房があり、職人さんがパン生地をこねている。毎日つくりたて&焼きたてだからこそのおいしさだ。

職人さんが手際よくパン生地をのばす。その長さは1mほど!
職人さんが手際よくパン生地をのばす。その長さは1mほど!
トルドロ専用の棒にパン生地を丁寧に巻きつける。
トルドロ専用の棒にパン生地を丁寧に巻きつける。

「おいしいパンが食べられて、昼も夜もゆったりくつろげる店をつくりたかった」という許さん。『Trdlo』は23時まで営業しており、夜カフェとしてもにぎわっている。ワインやシャンパンなどアルコールメニューも豊富にあり、この煙突パンはいろんなお酒に合いそう。日が暮れると1階のテラス席がライトアップされ、店内もムードある空間に様変わりする。

テラス席はテーブル2席。屋外では喫煙OK。
テラス席はテーブル2席。屋外では喫煙OK。

1人で勉強をしに来る客や、複数人で会議をする客の姿もよく見られるそうで、使い勝手が良く居心地がいいのだろう。

広々とした2階には、小さな洞窟のようなつくりのベンチシートがある。
広々とした2階には、小さな洞窟のようなつくりのベンチシートがある。

「お客さまが見たことのないおもしろいもの、食べたことのないおいしいものをお出しして、それを楽しんでもらえたらうれしいですね」。彼女の遊び心があちこちに散りばめられた『Trdlo』は、韓国好きのみならず、パン好きやお酒好き、新しもの好きたちの心もとりこにするだろう。

住所:東京都新宿区百人町1-1-17 ハスリン2ビル1F/営業時間:11:00~23:00/定休日:無/アクセス:JR山手線新大久保駅から徒歩5分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=コバヤシヒロミ