トロ隊長が‟やっぱり気になる存在”な酢豚
やさしい酸味が肉と野菜の魅力を引き出す荻窪『光陽楼』の酢豚
荻窪『光陽楼』の酢豚を食べると、改めて酢豚が肉料理であることを実感する。と、同時に野菜料理であることも思い知る。そしてソースが決め手の中華の代表料理だなとも痛感……。そう、この店の酢豚は肉、野菜、ソースと登場人物すべてが主役なのだ。レモンで酸味をつけるやさしいソースは、肉と野菜のおいしさを最大限に引き出してくれる。ゴージャス感があり味も文句なし、このクオリティの酢豚が定食でお得にいただけるとはうれしい。昆布だしが香るやさしいスープもこの店の定食の魅力だ。初代の頃からやっているという卵or海苔のサービスが満足度をさらに高める。いつ生卵を投入するか、それが問題だ!
下町からやってきた、町中華のれん分け店の代表格!
かつてのれん分けで60店舗ほどもあったという、町中華一大勢力『光陽楼』の名を令和に引き継ぐ2代目。「千住の頃は出前専門だけでも3~4人いて従業員も多かったですね」と、若者の活気に満ちあふれた当時を振り返ってくれた。
実はこの店、亀有に本店を持ち、東京の東側を中心にのれん分けで広がっていった『光陽楼』の系譜を継ぐ店だ。本店で腕を磨き北千住に店を築いた初代が、荻窪に店を移したのが1966年のこと。それでも下町生まれの店ゆえ「おなかいっぱいが目標」というポリシーは昔と何ら変わらない。「従業員の人に遊んでもらって育ちましたね。麺ののし棒でゴロゴロやられてあやされた記憶がありますよ」と話す2代目の佐京重男さん。彼は町中華に生まれ町中華で育った、町中華サラブレッドだ。今では『光陽楼』ののれんを掲げる店も10店舗ほどになってしまったというが、荻窪『光陽楼』はまだまだ元気! これからもその名を町中華史に刻んでいく。
堀切、青砥など東京の東側ののれん分け店は、「光陽麺」として卵を入れたチリソースの麺を提供していた。それと同じ味ではないが、荻窪の『光陽楼』ではたまたま似たようなビジュアルの玉子チリソース丼800円を提供。チリソースは豆板醤が効いてピリッと辛い。
荻窪『光陽楼』店舗紹介
住所:東京都杉並区天沼3-12-7/営業時間:11:30頃~15:00・17:30頃~23:00/定休日:10・20・30日/アクセス:JR中央線・地下鉄丸ノ内線荻窪駅から徒歩7分
取材・構成=半澤則吉 撮影=山出高士
数々の名店を取材してきた町中華探検隊が、中華にとどまらず和食や洋食も併せ飲む「町中華」の気になるメニューを研究。前編では、テーマとなるメニューを扱う町中華の名店を取材。後編ではそのメニューについて隊員が大いに語り合います。第7回のテーマは「麻婆丼」。半澤隊員がノックアウトされた荻窪『中華屋 啓ちゃん』の味とは?
数々の名店を取材してきた町中華探検隊が、中華にとどまらず和食や洋食も併せ飲む「町中華」の気になるメニューを研究。第8回は「酢豚」!前編ではトロ隊長おすすめの荻窪『光陽楼』の酢豚定食を味わいましたが、後編ではこれまで数多くの町中華を訪ねてきた隊員が「町中華にとって、酢豚とは?」を掘り下げます。
酢豚は単品でも勝負できる町中華では数少ない本格メニュー。昔から人気も高い。それなのに、いやだからこそか、ランチや日替わり定食にもちょいちょい顔を出し、お得感を醸し出すという二面性を備えているのが特徴だ。肉が多いとうれしいけど、甘味と酸味のバランスを間違えるとクドくなるので、案外作るのが難しいのかもしれない。僕は甘いもので飯を食べるのが苦手だが、誰かが食べていると小皿に分けてもらい、甘酸っぱさを確認したくなる。やっぱり気になる存在なのだ。最近は黒酢を使う店が増え、バージョンアップも怠りない酢豚。名前も直球でいいんだよね。メニュー表を華やかにする存在として、いつまでも単品最高価格の座をキープしていてほしい。