海老名はJR相模線、小田急小田原線、相鉄本線が乗り入れするターミナル駅。3線の駅はペデストリアンデッキで結ばれ、デッキに寄り添うように、8棟の建物をもつ複合商業施設の「ビナウォーク」や、「ららぽーと海老名」などが立ち並ぶ。

JR海老名駅西口にはえび~にゃが立つ。
JR海老名駅西口にはえび~にゃが立つ。
ペデストリアンデッキからの夕景。
ペデストリアンデッキからの夕景。

今でこそ人気のショッピングタウンになったが、海老名の開発はそう遠い昔のことではない。2002年、海老名中央公園を取り囲むようにビナウォークがオープン。これが海老名大改造の起爆剤になった。やがて次々と商業施設が誕生し、近年ではタワーマンションも立ち並ぶ。

海老名中央公園に立つ相模国分寺、七重塔の3分の1サイズのモニュメント。
海老名中央公園に立つ相模国分寺、七重塔の3分の1サイズのモニュメント。

「少し前までは、田んぼと畑だけだったのに、あっという間に開発されて……」と、海老名っ子である『Trattoria Legami』のオーナーシェフ・𠝏持恵一さんはその変貌ぶりを驚く。

海老名駅に隣接するロマンスカーミュージアム。
海老名駅に隣接するロマンスカーミュージアム。
みなさん、こんにちは。鉄道写真家の村上悠太です! いよいよ2021年4月19日にグランドオープンを迎える『ロマンスカーミュージアム』。小田急電鉄の「顔」である特急ロマンスカー。その歴代の名車たちに出会えるということで、開館前から話題になっているこちらの施設に一足早く行ってきました。はっきりいってこのミュージアム、スゴイです……。

みんなこの街が好きだから、海老名愛の輪が広がる

アビーロードじゃありません。ここはエビーロード。
アビーロードじゃありません。ここはエビーロード。

駅周辺ではさらなる開発が進み、街並みからもフレッシュな息吹が感じられる。一方では相模国分寺跡や秋葉山古墳群などの史跡が点在する歴史の街という面も併せ持つ。古いものと新しいものが適度な距離感で同居する自然体の街なのだ。これは居心地の良さとして重要だ。「住みよいまち」という評価を得ているのもこうしたことと無縁ではない。

国史跡の相模国分寺跡の広大な芝生広場は、子供たちの恰好の遊び場。
国史跡の相模国分寺跡の広大な芝生広場は、子供たちの恰好の遊び場。
高台にある秋葉山古墳群からの眺望。
高台にある秋葉山古墳群からの眺望。
長さ75mのローラー滑り台がある清水寺公園は緑陰が涼し。
長さ75mのローラー滑り台がある清水寺公園は緑陰が涼し。

ぺデストリアンデッキを歩いているのはファミリー層が中心だが、ちょっと視野を広げてみると大人が楽しめる個性的な店も点在する。これらの店に共通していることは海老名愛が強いということ。

海老名で酒米作りを行う『泉橋酒造』の専務・橋場由紀さんは、「海老名をふるさとと思ってもらえるような緑のある風景を残したい」と話す。この『泉橋酒造』の酒造りに賛同する人も多い。『Muu COFFEE』の店主・加藤宗将さんは「日本酒に漬け込んだ酒珈琲を試作中」といい、『CHOCOLATERIE SANDGLASS』の店主・石井好明さんは「酒粕を練り込んだチョコが人気」という。『泉橋酒造』を核として海老名ブランドが広まっていく、そんな予感がする。

海老名といえばイチゴも特産! まちかど公園には、イチゴをかたどったパラソル型の休憩スポットが。
海老名といえばイチゴも特産! まちかど公園には、イチゴをかたどったパラソル型の休憩スポットが。

『EBINA BEER』のトーマス・レハクさんは、チェコから移住して駅前でマイクロブルワリーを開業した。このとき、この街で新しい人生を始めると決心したから店名に海老名を冠したという。いま、海老名で麦とホップを栽培する計画が進行中だ。

一見、どこにでもありそうな郊外都市と思いがちだが、こうした愛が街を良い方向に熟成させていくのだろう。

えび~にゃは交通安全にも大活躍。
えび~にゃは交通安全にも大活躍。
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有鹿(あるか)神社

パンダ宮司にネギ禰宜。笑みがこぼれる珍神社

元和8年(1623)再建の社殿は海老名市重要文化財。
元和8年(1623)再建の社殿は海老名市重要文化財。
「私が出迎えます!」。リアルパンダ宮司に会いたいなら、神社の行祭事などが狙い目。
「私が出迎えます!」。リアルパンダ宮司に会いたいなら、神社の行祭事などが狙い目。
禰宜(ねぎ)という神職名を覚えてほしいと登場したネギ禰宜。かぶり物の長さは2mを超す。
禰宜(ねぎ)という神職名を覚えてほしいと登場したネギ禰宜。かぶり物の長さは2mを超す。
←279㎝も?!→
←279㎝も?!→
黒っぽい花や葉をもつ植物を集めた厨二病庭園。
黒っぽい花や葉をもつ植物を集めた厨二病庭園。

創建年は不明だが、相模国最古の神社であり、海老名の総鎮守。境内で目を引くのは参心殿にあるパンダ宮司の人形。地域の人々に親しまれるようにとマスコットとして採用したもので、ネギ禰宜やレッサーパンダ宮司もいる。

・拝観自由。
・☎046-234-4763

『EBINA BEER』

チェコ人醸造家が醸す本場のクラフトビール

トーマスさん自らタップから注いでくれる。
トーマスさん自らタップから注いでくれる。
店内にブルワリーを併設。
店内にブルワリーを併設。
ピルスナー480㎖ 990円、瓶入り各330mℓ550円。じゃがいものお好み焼きといわれるブランボラーク790円。
ピルスナー480㎖ 990円、瓶入り各330mℓ550円。じゃがいものお好み焼きといわれるブランボラーク790円。

トーマス・レハクさんが故郷・チェコの製法を守って作るビールは、濃厚な麦の風味と爽やかなホップの香りが特徴。定番6種類と2種類の季節代わりのビールを用意する。

・17:00~22:00LO(土は11:30~、日は11:30~20:30LO)、月休。
・☎046-259-8730

『海老名チョコレート工房CHOCOLATERIE SANDGLASS(ショコラトリー サンドグラス)』

大人のチョコを味わう幸せ時間

店内工房で手作りしたチョコレートが並ぶ。
店内工房で手作りしたチョコレートが並ぶ。
炎の演出も楽しいショコラ・スフィア2130円(ドリンク付き)。
炎の演出も楽しいショコラ・スフィア2130円(ドリンク付き)。
店主の石井好明さん。
店主の石井好明さん。

チョコレート菓子専門店。チョコレートで作った球体の中に季節のフルーツを閉じ込め、火のついたリキュールをかけてチョコレートを溶かすショコラ・スフィアは大人のスイーツ。

・11:00~19:00(カフェは~18:00LO)、月休(カフェは月・火休)。
・☎046-233-4321

『Muu COFFEE(ムー コーヒー)』

海老名の土産になるコーヒーをつくりたい!

世界各国から届いたコーヒー豆は180g950円~。
世界各国から届いたコーヒー豆は180g950円~。
ペーパードリップコーヒー400円。
ペーパードリップコーヒー400円。
県道507号沿いに立つガラス張りの店。
県道507号沿いに立つガラス張りの店。
店主の加藤宗将さん。
店主の加藤宗将さん。

常時20種類ほど揃うコーヒー豆は、小型のロースターでこまめに自家焙煎するので、鮮度のよいものを購入できる。試行錯誤を重ねたオリジナルブレンドは海老名スペシャル180g950円とムーブレンド180g1000円の2種。

・10:00~19:00、水・木休。
・☎046-240-0229

『泉橋酒造』

米作りが酒造りの第一歩

酒蔵の隣接地にスタッフが育てる広大な酒米の田んぼが広がる。
酒蔵の隣接地にスタッフが育てる広大な酒米の田んぼが広がる。
左から「生酛黒とんぼ 純米酒」「恵いづみ橋 青ラベル純米吟醸」「純米梅酒 山田十郎」。
左から「生酛黒とんぼ 純米酒」「恵いづみ橋 青ラベル純米吟醸」「純米梅酒 山田十郎」。
煙突や白壁の建物などが酒蔵らしい雰囲気。
煙突や白壁の建物などが酒蔵らしい雰囲気。
土蔵をリノベーションした酒友館で試飲(1コイン110円で30mℓ)もできる。
土蔵をリノベーションした酒友館で試飲(1コイン110円で30mℓ)もできる。

安政4年(1857)創業。6代目の現当主が名付けた「栽培醸造蔵」は、酒米栽培から精米、醸造まで一環して行う酒蔵のこと。使用する酒米の約90%が海老名産で、自社精米100%だから、文字どおり地産地消の酒だ。

・10:00~18:00、無休。
・☎046-231-1338

『Trattoria Legami(トラットリア レガーミ)』

緑に囲まれた一軒家レストラン

18席の小さな店。
18席の小さな店。
オーナーシェフの𠝏持恵一さんが作るのは伝統的なイタリア料理。
オーナーシェフの𠝏持恵一さんが作るのは伝統的なイタリア料理。
海老名産卵のキッタラ、海老名卵と自家製パンチェッタのカルボナーラ1980円。ワイン(グラス)880円~。
海老名産卵のキッタラ、海老名卵と自家製パンチェッタのカルボナーラ1980円。ワイン(グラス)880円~。

海老名産卵のキッタラ、海老名卵と自家製パンチェッタのカルボナーラは、四角い断面をもつパスタを使い、塩漬け・乾燥・熟成した豚バラ肉で味を調えた料理。豚肉の塩味と卵の甘さが見事に調和した一品だ。

・11:30~14:00LO・17:00~22:00LO、月休。
・☎046-408-1870

取材・文=塙 広明(アド・グリーン) 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2023年9月号より