船橋で働くみんなの味方! 満足感たっぷりの手打ちそばランチ
船橋駅、京成船橋駅から歩いて5分ほど。開けた駅前のにぎやかな本町通りに、『蕎や本田』はある。店内へ入ると、いわゆる“そば屋”とは違う雰囲気に驚く。
打ちっぱなしのコンクリート壁、優しげな印象の白の椅子、木目調のテーブルと、モダンな統一感がある。手打ちそばという“和”のイメージとは正反対の、昼からスーツ姿で入りやすい雰囲気だ。
ランチはレギュラーメニュー7種に加え、季節限定メニューが常時2種ほど展開されている。なかでも一番人気なのが、天もりそば1150円だ。このそばが、すごい。
大きなざるにドドンと乗るのは、200gの手打ちそばだ。大盛り220円で注文すれば、なんとこの1.5倍でやってくる。ちなみに、ディナーのそばとは量が違う。ランチだからこその食べ応えあるボリュームだ。
そば粉は全国から旬を見極めて仕入れるため、日々さまざまな産地のそばが楽しめる。殻ごと麺に仕込む“挽きぐるみ”という挽き方は、香りや風味が良く、栄養価も高い。そばつゆは、2年間熟成させたかつおぶしに昆布をブレンド。このそば粉で、程良くしなやかな食感の二八そばに仕上げる。量だけでなく、味や食感、栄養まで満足度たっぷりだ。
セットの天ぷらは4点。定番のエビをはじめ、旬の野菜やその日のおすすめ素材も楽しめる。取材時の天ぷらは、エビ、なす、かぼちゃ、ブロッコリーだった。人気のブロッコリーの天ぷらは、ほくほくで後味はすっきり。濃厚なエビやカボチャとのバランスもいい。「ブロッコリーはお客さんからの評判がとくに高いですね」とオーナーの本田さんは話す。
昼はササッと腹いっぱいに、夜はゆったり日本酒と一緒に
本田さんは手打ちそばにこだわる。店内の石挽製粉機で挽いたばかりのそば粉で、提供する当日朝に、本田さん一人で仕込む。
平日のランチ客の多くは、スーツ姿の会社員風の人。「やはり値段とボリュームを気に入ってくれているようです」と本田さん。だからこそ、何より大事にしているのは、お腹いっぱいになってもらうこと。「小1時間の短い休憩でも、注文したらサッと出てきて、ガッツリ食べられて。そうやって満腹になって帰ってもらいたいんです」
物価高でやむなく値上げしたものの、ランチメニューの値段は、どれも税込1000円ちょっと。「オープン当初のランチは全部1000円だったんです。1000円札1枚握りしめて来てくれるお客さんもいて。だから1000円のメニューは残していきたいなと」
リーズナブルな値段でお腹いっぱいになってほしい。午後の活力にしてほしい。そんな気持ちが、ランチメニュー表には表れていた。
もともと『蕎や本田』は、そばと日本酒の店。とくに土日はランチでもお酒を楽しむ人が多いという。「呑めるそば屋って意外とないんですよね。私も日本酒が好きで、なかなか手に入りにくい品種も入荷しています。飲み比べも季節ごとに銘柄を変えるので、いつでも楽しんでもらえると思います」
日本酒3種飲み比べ、こちらも1000円ちょっと。日替わりで提供している季節の飲み比べはとくに人気で、入手困難な品種を仕入れてもすぐになくなってしまうそう。逆に言えば、いつでも新鮮なお酒が楽しめそうだ。
大事なお客さんを裏切らず、飽きさせず、楽しませるためには
本田さんは、東京・神田の老舗『かんだやぶそば』で12年、新橋にあった『伍法』で3年修業したのち、2016年にこの店をオープンさせた。『かんだやぶそば』でそばのおもしろさを知り、いつか自分でも店を出したいと思うようになったという。その後、経験を積むために入った『伍法』では、そば以外に酒と肴も学ぶ。「2店舗のエッセンスも吸収しつつ、『蕎や本田』らしさは追求しましたね」
その結果生まれたのが、“呑めるそば屋”だ。リーズナブルな手打ちそばと、豊富な日本酒。そして、メニュー表いっぱいに載るおつまみ。「これだけの種類のおつまみがあると、他の居酒屋にも負けないんじゃないでしょうか」
そんな『蕎や本田』、常連客も続々とついている。
「コロナ禍はお酒の提供が制限されて、夜の営業に苦戦しましたね。でもランチだけはなんとかしようと、妻と頑張りました。そうしたら、当時はこの界隈でランチに開けている店が少なかったようで、昼食に困っていた方々がどんどん来店してくれたんです。今はコロナ禍以前より、ずっと来客数が増えました」こうしてファンになってくれたお客さんを裏切らず、大事にしたい。だからこそ、夜のお酒を楽しむ時間だけでなく、ランチも妥協しない。季節限定メニューも交えつつ、今後もお客さんが毎日来たくなるようなそば屋を続けていきたいという。
取材・文・撮影=aki