新潟のご当地ラーメン・背脂煮干中華そばに目をつけ、2021年にオープン

JR新橋駅烏森口から右手にニュー新橋ビルを眺めつつ、飲食店街がひしめく烏森通りから柳通りへ。そこから昼間は静かな路地裏に入ると、『背脂煮干中華そば 和市』にたどり着いた。

パリッと糊のきいた白いのれんをくぐって店に入ると、途端に煮干しのいい香り!

中華そばと書かれた赤いのれんが目印。隣もラーメン店なので注意。
中華そばと書かれた赤いのれんが目印。隣もラーメン店なので注意。

『背脂煮干中華そば 和市』は2021年4月にオープン。自由が丘や学芸大学、渋谷エリアで居酒屋などを経営してきたオーナーの村治亮介さんが「違う業種でチャレンジしたい」と開いたのがこのラーメン店。しかも未開の地での挑戦だ。

カウンターのみだが、席と席の間はゆったり。
カウンターのみだが、席と席の間はゆったり。
オーナーの村治亮介さん。
オーナーの村治亮介さん。

東京に長く住んでいても行動範囲は限られてしまうもの。村治さんは、これまで新橋駅に一度も降りたことないくらいこの土地に縁がなかったそうだ。「たまたま条件に合う物件がここだったんです。こういう飲み屋街みたいな雰囲気は好きなので、いいところだなと」。そう言いながら予想もしなかったこの場所との出合いに期待する村治さんだ。

背脂煮干中華の醤油・塩、つけ麺、まぜそばの4つを柱に展開。
背脂煮干中華の醤油・塩、つけ麺、まぜそばの4つを柱に展開。

「コアな客層は昼も夜も、近隣で働くサラリーマンの方が8割ですね。99.5%が男性で、女性は0.5%くらいですかね」という。おお、やはりガツンとした味のラーメンなんでしょうねえ。

パンチはあるけど脂っこくない! 煮干しと豚の旨味がもちもちの中太ちぢれ麺と合う

村治さんは料理人でもある。店をオープンするにあたり本格的なラーメンの開発に初めてトライしたそうだ。看板メニューに選んだのは、背脂と煮干しを合わせた新潟のご当地ラーメン。さっそく背脂煮干中華そば 醤油850円をいただくことにした。

力強い旨味の煮干しを使用。
力強い旨味の煮干しを使用。
なみなみと注がれるスープの上に背脂がプカプカ。
なみなみと注がれるスープの上に背脂がプカプカ。

「僕の地元が新潟のほうなので、なじみがありました。また、この組み合わせはあまり東京にはないかなというのもあったので、自分なりに試行錯誤して作りました」。

スープは煮干しと昆布、ほんのり乳化させた豚スープを合わせ、かえしには醤油と煮干しを加えている。背脂はトッピング用にやわらかく炊き、丼にたっぷり乗せても不思議と後味はさっぱり。

もちもちとしながらも喉越しがよく、小麦の香りも豊かな麺。
もちもちとしながらも喉越しがよく、小麦の香りも豊かな麺。
茹で上げあげた麺を整えて入れる。
茹で上げあげた麺を整えて入れる。

豚肩ロースのチャーシューが2枚乗るが、大きめで丼の表面を埋めつくさんばかり。ご当地に倣って岩海苔と生のたまねぎをトッピングにチョイスしている。

さっそくいただいてみると、煮干しと昆布の魚介系スープが主体で、甘い背脂が味にコクを与えるだけでなく、保温効果もあっていつまでもアツアツ。そのため、トッピングの生タマネギはシャキシャキ食感を残しながら、絶妙に加熱されて甘みを増している。パンチのある煮干しの風味を背脂がふんわり包み込むようだ。

大判の肩ロースチャーシューがちょうどいい。口いっぱいになるけど薄いから食べやすい。
大判の肩ロースチャーシューがちょうどいい。口いっぱいになるけど薄いから食べやすい。

食べ応えはあるが喉越しもいい麺とスープの相性もバツグンだ。女性客は0.5%と言っていたけど、この味を知ったらきっとハマってしまうだろうと思った。

「そうですね、背脂を使用しているけどちょっとあっさりめにしてるつもりなので。まあ一度食べていただけたらとは思うんですけど」と控えめに答える。そんな奥ゆかしさがいじらしい。

つるっつるの麺は三河屋製麺謹製で国産小麦100%の中太ちぢれ麺だ。
つるっつるの麺は三河屋製麺謹製で国産小麦100%の中太ちぢれ麺だ。

背脂煮干中華そばの塩味、つけそば、まぜそばも食べてみたい

『背脂煮干中華そば 和市』でダントツ人気なのは背脂煮干中華そばの醤油だが、ほかにも背脂煮干中華そばの塩、つけそば、まぜそばにも注目したい。

新潟で背脂煮干中華そばといえば醤油が定番。だが、こちらの店ではあえて塩味も提供する。「あっさりと食べていただきたいっていうのもあるし、塩味の背脂煮干しというのは珍しいので面白いなと」。醤油より煮干しの味をダイレクトに感じることができる自信作だ。

煮干しの味がストレートに伝わる背脂煮干中華そば 塩850円。
煮干しの味がストレートに伝わる背脂煮干中華そば 塩850円。

イチから店で作る自慢の背脂を思う存分楽しめるのがまぜそば。「醤油と同じおいしい麺なので、麺そのものを味わっていただきたいですね。魚粉を少し加えた、豚の旨味たっぷりの醤油だれを和えて食べるんです」。スープがないので夏の暑い日にも食べやすい。

まぜそばと同じく麺の本来の味を堪能できるつけ麺は、さらっとした酸味と甘みをたたせたような煮干しベースの醤油スープでいただく。「つけ麺のスープはドロドロしてるイメージがあるんですけどうちのはさらっと仕上げました。上に背脂をたっぷり乗せているのでインパクトもありますよ」。うーん、どれも魅力的で迷っちゃうなぁ。

味玉つけ麺1000円もスープと麺、具材の三位一体になった旨味を堪能できる。
味玉つけ麺1000円もスープと麺、具材の三位一体になった旨味を堪能できる。

ちなみに、どのメニューもニンニク不使用。「新橋はオフィス街なのでニオイを気にされる方もいるかなと思いまして。それと、背脂っていうとニンニクや地獄系(激辛)とかガツンとしたイメージになりがちなんですけど、煮干しとの掛け算を味わって欲しいと思っています。とはいえ、ニンニクも別で用意してありますので、欲しい方はお声掛けください」と村治さん。

人と話す機会が多い筆者のような者でも、仕事の合間に気軽に立ち寄りやすいというわけだ。駅近だから途中下車してランチするのもアリだなあ。

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢