人々の笑顔につられてこちらも笑ってしまうね
野鳥がさえずり、アオゲラが「トントントン」と木を突く音も聞こえる八国山緑地をハイキング。映画『となりのトトロ』に出てくる「七国山病院」のモデルはこの近くにある。主人公の姉妹を乗せたネコバスはこのへんを走ったはずだけど、その姿がどこにも見えないのは、自分が大人になった証しか。それでも、土の感触を確かめながら山道を歩いていると、まるで子供に戻ったようだ。
東村山駅の東口を出てしばらく歩いていくとソースの香りが鼻先をふわり。源流をたどると、嘉永3年(1850)に醤油屋として創業した『ソースの森 ポールスタア』。直売所で買い物し、敷地内を歩いていたら、すれ違う工場員さんたちが笑顔であいさつしてくれた。いい人ばかりだ、来世はここで働きたいな、なんて。
街の緑にパッと笑顔が映える
「自然があって、新鮮な野菜も安く買えます。何より人が優しくて住みやすい!」
そう言ってほほえむ『Kitchen neco』の槻山幸恵さんは、2020年に店を始めたのを機に家族で東村山に移り住んだ。品揃えは時季によって異なり、四季を感じるラインナップ。キッシュに使う野菜の9割が、『丸鈴園』など、市内の農家から仕入れたものだとか。
また、東村山では造園業も盛ん。「東村山で造園をやっているところは農家だったケースが多い」と、『立川造園』を継いで8年の2代目・立川大樹さん。ちょうどおなかがすいたので、妻のりかさんが営む『Garden Shop T-Garden』のカフェで小休止。酒粕で味噌漬けした豚肉の食感、芳醇な味わいに、ああ!酒粕は『豊島屋酒造』のものだって。あちらにも寄らなくちゃ。
『玉弘』の直売所では、会長の古宇田裕弘さん自ら接客。見事な口上で「誰だって旨いもん食いたいよねえ〜。あはは!」と破顔一笑。つられてこちらも、あはは!東村山メイドのおみやげを抱えて、ほくほくの帰り道。
Garden Shop T-Garden/T-Garden House
さあ、植物に囲まれて深呼吸しよう
『立川造園』の窓口も兼ねる園芸ショップ。草花や多肉植物など、ずらりと並ぶ苗や鉢植えが癒やしをくれる。2階にはカフェがあり、T-Garden Houseサンドとスープ、飲み物のセット1200円。
・9:30~17:00(カフェは11:00~16:00LO)、水休。
・☎︎042-395-1956
Kitchen neco
東村山産を生かした気さくなおやつ
スパイスを使わずに素材を生かしたキャロットケーキ432円は、ご主人・槻山裕輔さんの故郷、東北のがんづきに似てもっちり。季節商品も大好評で、早々に売り切れることも。
・11:30~17:00(なくなり次第終了)、火・金・土休(臨時休あり)。
・☎042-306-4472
ソースの森 ポールスタア
ソースの香りを追ってたどり着いたその先は?
業務用も含め、年間約200種のソースを製造。「ここでは、生の野菜を煮出してスープを作るところから始めます」と代表の桜井憲一さん。ふわりといい香りが漂う構内に直売所も。
・9:30~16:30、土・日・祝休。
・☎042-395-0554
八国山緑地
コナラやクヌギの木立で耳を澄ます
狭山丘陵の東端に広がる、約36万㎡の雑木林。埼玉県との県境をまたぎつつ、その大部分が東村山市に含まれる。「チュチュピー」「ピョーピョー」と野鳥のさえずりが重なり、混声合唱みたい。
玉弘
ほっこりと幸せを呼ぶ、黄色くて甘〜い卵焼き
約40年前に茨城から上京して以来、厚焼き玉子一筋。デンプンなどのつなぎは使わず、砂糖、カツオ出汁で卵の味わいをシンプルに際立たせる。食欲をそそる焼き目は、会長・古宇田裕弘さんのこだわり。玉弘の厚焼1本810円。
・9:00~17:00、日休。
・☎042-394-6656
豊島屋酒造
新作も続々登場!老舗酒蔵の挑戦
代表作「金婚」「屋守(おくのかみ)」に加え、今NEONシリーズが話題。「洋梨のような香り」「果実を彷彿(ほうふつ)とさせる」など気になるコピーが付いたニューカマーだ。本みりん 天上 心500㎖687円はそのまま飲めるくらい純度が高い。
・直売所9:00~17:00(土・日は13:00~)、無休。
・☎042-391-0601
笹本だんご店
注文ごとに焼く熱々の焼きだんご
名物のだんご1本110円は、店主の笹本悦子さんが手ごねし、一つずつ手のひらで成形。醤油をまとわせ、焼く、を2回くり返すことで、焦げ目をしっかり付けてキリッとした後味に。志村けんも愛した味。
・9:30~なくなり次第終了、火・水休。
・☎042-394-2182
熊野公園
絵心と緑があふれる市民のオアシス
案内板の熊に誘われて行くと、そこは久米川熊野神社に隣接する公園。門に動物の絵が手描きされたり、トイレに市民が絵付けしたタイルがあしらわれていたりとある意味芸術性が高い!
八国山たいけんの里
縄文人の生き生きした暮らしを伝える
収蔵品の目玉は、2020年に国の重要文化財に指定された下宅部遺跡の出土品。なかでも縄文時代の漆工遺物はかなりめずらしいとか。考古学の体験や講座、展示解説も好評。入館無料。
・9:30~16:30最終入館、月・火休(祝の場合は開館し、翌平日休)。
・☎042-390-2161
トロル
大人もときめく絵本のワンダーランド
ブルースが流れる店内に、絵本や児童書、玩具、大人向けの書籍も詰め込まれ、わくわく。青いトゥクトゥクに乗って市内の保育園に絵本を配達することもあるらしく、店主の関本練さんは園児や先生たちに人気。
・11:00~18:30(土・日・祝は~17:00)、無休。
・☎042-392-5304
取材・文=信藤舞子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2023年3月号より