老若男女が交じり合う、温もりあふれる街なんです
二子玉川は、店主の「やりたいことをやる」という気持ちを体現した店が増えている。花屋と喫茶の二本柱の『入山十百花店』はその典型。「車で通りすぎて見つけたという人が、わざわざ後日来てくれることもあるんです」と、その独自のスタイルが多くの人の目を引いているようだ。同じく、貼箱専門店という他にはないコンセプトの『BOX&NEEDLE』の大西景子さんは、「自分で“いい”と感じたものを手に取る人が多いですね」と語る。なるほど、自らの感性に忠実な人が多いからこそ、とがったコンセプトの店でも自然に街になじめるようだ。
街の住民に目を向けて独自のスタイルを貫く
生まれも育ちも二子玉川だという『Shiki 地水火風空（しき ちすいかふうくう）』のナナさんは、店を始めてから「以前より人の息づかいを感じるようになった」という。「老若男女が入り交じって、コミュニティーを作っている、温かい街ですね」。また、『NEW VALLEY』の千葉芳裕さんは、「開業当時に待機児童が多かった」という思わぬ観点でこの街に店を出すことを決めた。「子供がそれだけいるってことは、未来があるってこと。その子が大人になったとき、いいお酒の味を知ってもらえるよう、長く店を続けていこうと思うんです」。なにそれ、めちゃめちゃ応援したくなるじゃないですか。
街に根付いた暮らしを尊重し、溶け込む新店の数々。街の新しい色として、彼らを受け入れる住民たち。互いの思いが重なり、明日の二子玉川をつくっていくのだ。
焼き菓子とコーヒーでほっとひと息『STAN COFFEE AND BAKE』
『STAN COFFEE AND BAKE』の店内には、常連と談笑しつつ手際よく焼き菓子をつくる店主・石渡やえさんの姿。「近隣のママさんたちの給水ポイント」と、笑う。まん丸で可愛らしいスコーン300円は、「気まぐれでチョコ味とかエスプレッソ味を出す日もあります」。カフェラテ550円との相性も抜群。
・8:00～17:00、火休。
・☎なし
アイデアたっぷり、色とりどりの紙箱の世界『BOX&NEEDLE』
京都の老舗紙器メーカーが2009年にオープンした、貼箱専門店『BOX&NEEDLE』。「17の国から紙を取り寄せて箱を作っています」とは、代表の大西景子さん。店内を埋め尽くす彩り豊かな箱の数々はもちろん、紙製のスマホスタンド・BACKE T＆S（バッケ）といった珍しい品もあり、見ていて飽きることがない。
・11:00～18:00、水休。
・☎03-6411-7886
草花に囲まれてコーヒーを花屋×喫茶で心が安らぐ『入山十百花店』
一見、花屋の店構えだが「美味しい珈琲あります」の看板に足が止まる。「はじめは普通の花屋の予定が、どうしても喫茶をやりたくなっちゃって」と、『入山十百花店』・店主の茂木寿史さん。窓から差し込む光で植物の緑が映える2階席で、入山十ブレンド550円をすすってぼんやり。時間を忘れ、癒やされる。
・11:00～19:00、木休。
・☎03-5491-2022
圧倒的パノラマが料理の味を引き立てる『Shiki 地水火風空』
テラスの開放感に度肝を抜かれる『Shiki 地水火風空』は、代表・ナナさんの「生産者の背景まで知ってほしい」という思いから、産直の食材にこだわる。人気のブッダボウル1540円は、華やかさにひそむ力強い野菜の風味が食欲を誘う。店内の南米雑貨も要チェック。
・12:00～16:00（土・日は～18:00）、不定休。
・☎03-3700-6700
選んで、飲む。新しいニコタマの社交場『NEW VALLEY』
「街には酒屋が必要だ！」と、店主の千葉芳裕さんが2020年にオープンした『NEW VALLEY』。本格的なワインやクラフトビールなどを揃え、角打ちもOKと、新しい社交場的な酒屋だ。グラスワイン800円～を味わうなら、名物つまみのみたらしナッツ®440円は外せない。独特の甘しょっぱさが後を引き、酒が進む。うーん、罪深い。
・9:00～23:00、無休。
・☎03-6431-0132
取材・文＝どてらい堂 撮影＝高野尚人
『散歩の達人』2023年2月号より
