昔ながらの雰囲気が落ち着かせてくれる
石造りの壁の外観、白地に黒文字の店名が書かれた看板があり、周囲の風景とは明らかに異なる落ち着いた佇まい。気をつけていないと通り過ぎてしまいそうだ。
入口付近には「究極の味」と題した説明書き看板があり、看板メニューであるスペシャルブレンドと水出しコーヒーのこだわりが掲げられている。コーヒー好きならずともグッと心を摑まれる。
店内は木目を基調とした高雅な趣がある昔ながらの純喫茶の造り。カウンター席やテーブル席のほか、中央に設置された水出しコーヒーのサイフォンを囲む大テーブル席などがある。大きな柱時計や「癒」と書かれた書も目を引く。贅沢な時間を過ごせるに違いないという雰囲気がある。
約半日かけて抽出するアイスコーヒーとスペシャルブレンド
水出しコーヒー700円が名物。店内には5つの大きな水出しコーヒーのサイフォンがあり、その日の気温や天候によって異なるが、8~12時間かけて抽出する。
炭火焙煎したモカをベースにブレンドした豆を使用し、アルカリイオン水で抽出する。苦味やえぐみが出にくくなり、まろやかな味わい。一般的なアイスコーヒーに比べると酸味がとがっていないため、普段アイスコーヒーを飲まない私でもおいしく飲むことができた。
店長の張云一(ちょううんいつ)さんは、「長時間かけて抽出するため、売り切れてしまうこともあります」と話してくれた。
炭煎(たんせん)スペシャルブレンド700円は、水出しコーヒー同様のブレンドを粗挽きで使用。1杯の使用量は、ほかの店舗の倍以上という25g。
コーヒーカップからは芳醇な香りが漂い、飲んでみるとフルーティーさがあり、深みのある味が広がってくる。
入口に掲示していた「究極の味」は決してオーバーではなかった。
コーヒー以外にもおすすめメニューが豊富
コーヒー以外にもメニューは豊富。
カフェ・ラテ(アイス)800円も人気メニューの1つ。アイスコーヒーと脂肪分4%の北海道牛乳をハーフ&ハーフで注がれ、さらに自家製クリームを入れている。苦味と酸味を感じるコーヒーの風味が牛乳によって引き立てられ、スッキリとした甘みも感じられる。
スイーツのおすすめは、喫茶店のプリン800円。卵をふんだんに使用し、表面を少し固めに仕上げている。表面とは異なり、中はクリーミー。トロリと濃厚な味わいとコーヒーがよく合う。
チーズトースト550円は、厚切りのイギリスパンに、とろけるチーズを合わせている。こんがりと焼いたパンと絡み合うチーズがたまらない。岩塩やコショウ、タバスコが一緒に出されるので、好みで味付けをしよう。
コーヒーや雰囲気はそのままに、新たななる進化を
現在、『炭煎珈琲 蔵』のオーナーは2代目。張さんは「2代目のオーナーは飲食店経営者で、この店の常連でした。初代がお店を辞めると聞き、後を継いだのです。食事やスイーツのメニューは増やしていますが、店内のイメージやコーヒーの淹れ方などは初代の教えを守っています」と話してくれた。
初めてでもどこか懐かしさを感じさせる店構え。ここでは、店内でたばこを吸える。愛煙家ならば、こだわりのコーヒーを飲みながら一服という至福の時間を過ごそう。
取材・文・撮影=速志 淳 構成=アド・グリーン