雑踏から離れた11階のカフェ。空が近く感じる
行き交う人が多く、さすがはターミナル駅と感じる繁華街の一角。1階が携帯ショップのビルの最上階がチーズ料理専門店『CheeseTable池袋店』だ。人を避けながらエレベーターに乗りボタンを押す。11階で扉が開くと、そこはすでにカフェの店内だ。さっきまでの雑踏が嘘のように、大きな窓からは明るい日射しが差し込み、静かでおだやかな空気が流れている。
広々と開放的な店内でゆったりとソファに身を任せ、しばしぼんやり外の景色を眺める。高層ビルの多いエリアなので高い建物が目に入るものの、思いのほか空が近く感じる。この日はお天気だったので青空が広がり気持ちいい。きっと夜景もきれいだ。
チーズ料理専門店ならでは!豊富なバリエーションのチーズ料理が揃う
料理にはもちろん、スイーツやドリンクまで、とにかくチーズを使ったメニューが豊富。ラクレットやチーズフォンデュはもちろん、3種のチーズを使ったポテトサラダや特製のホワイトチーズソースをたっぷりかけたチーズインハンバーグ、チーズをホイップしたプリンなど「こんなものまで?」と思うほどチーズ推しだ。カマンベール、スモークチーズ、ゴルゴンゾーラ、ミモレット、パルミジャーノ、マスカルポーネ、リコッタチーズ、自家製フレッシュチーズなど、チーズの種類も豊富。ディナーなら、チーズの盛り合わせとワインを楽しみたい。
甘い?しょっぱい?新感覚で大人気のチーズパスタは作り方も独特だった
見た目はクリームのかかった平麺タリアテッレのボロネーゼ。ところがひと口食べて驚いた。「え?甘い?」。しかし、甘さの奥にはしょっぱさも。絶妙な甘じょっぱさでなんとも不思議な味わいだが、これまた不思議なことに後を引くおいしさなのだ。どうやって作っているのだろう。あれもこれも不思議なことばかりだ。
茹でた平打ち麺のタリアテッレをボロネーゼソースと和えて、オーブンで熱々に温めた鉄板に盛り付ける。その上にレッドチェダーチーズとラクレットチーズを混ぜて作ったチーズソースをかけて……と、ここまではまあ普通。問題はこの後だ。
チーズソースの上に白いものを盛り付ける。特製クリームとのことだが……。店長の小林さんに聞いてみると、返ってきたのは意外な言葉だった。「マスカルポーネとクリームチーズで作ったレアチーズのムースです」。え~~!?パスタの上にスイーツを乗っけるってこと?あ、だから甘かったのか……。と驚いていると、目の前でさらに驚く作業が繰り広げられた。
レアチーズのムースの上にグラニュー糖をかけて、バーナーで炙ってブリュレに!こんがり焦げ目ができたらできあがりだ。パスタにブリュレなんて思いもよらない組み合わせで本当にびっくりしたが、そういえばメニュー名は「濃厚ブリュレチーズの鉄板ボロネーゼ〜タリアテッレ」。なるほどようやく納得しました。
チーズのコクとしょっぱさ、そしてそれを引き立てる甘さがベストマッチ
ソースに2種、ムースに2種、最後に削ってかけたのがパルミジャーノ・レッジャーノチーズ。合計5種のチーズをふんだんに使った贅沢な一皿からは、チーズのいい香りがふんわりと漂う。
まろやかなラクレットチーズとコクのあるレッドチェダーチーズで作ったソースが味わい深く、モチモチとしたタリアテッレによく絡む。とろりとした口当たりもやさしくマイルドで、時折感じる甘さがチーズの濃厚さをさらに引き立てる。ボロネーゼのベースはトマトソースなので、トマトの酸味にチーズの酸味、そして甘じょっぱさ。バランスが実に絶妙だ。
チーズのスイーツは、すっきりとしたさわやかな甘さが魅力
クリームチーズとマスカルポーネチーズに生クリームを混ぜたチーズクリームを、流れ落ちるほどたっぷりかけたショートケーキも人気だ。チーズクリームの上からさらにペコリーノチーズとパルミジャーノ・レッジャーノチーズを削りかけている。ボリュームたっぷりの見た目に圧倒されそう……。
ボリューミーな見た目に反して食べてみると、チーズクリームのさわやかな軽さが実にいい。コンデンスミルクでつけた甘さはかなり控えめで、スポンジに染み込ませたシロップ代わりのカルピスとレモン汁もさらりとした甘さに一役買っているようだ。思った以上にさっぱりしていて、これなら重めのフードの後でもぺろりと食べられそう。
飲めるチーズケーキも人気スイーツの1つ。定番フレーバーのハニーマスカルポーネは、一番下がマスカルポーネチーズと蜂蜜を混ぜたチーズドリンクの層、その上がクリームチーズとアイスクリーム、牛乳を混ぜた層、そして一番上にグラノーラがたっぷりのり、太いストローで思い切りずずずっと飲む。甘みは蜂蜜とアイスクリームのみで、一番下の層は甘みよりも濃厚なチーズのコクを強く感じた。しっかり混ぜても甘さは控えめ、ザクザクしたグラノーラの食感がたまらない。
和気あいあいとした雰囲気で新しいメニューの開発も
『Cheese Table』はここ池袋店と新宿店の2店舗があり、グランドメニューはほぼ共通。しかし限定メニューには各店で違いがあり、人気を得て定番メニューになるものもある。今回紹介した「濃厚ブリュレチーズの鉄板ボロネーゼ〜タリアテッレ」もその1つで、池袋店の限定として提供していたところ人気となり定番化。現在では池袋店、新宿店の両方で提供している。また、20代前半のスタッフが多いのも池袋店の特徴だ。厨房は和気あいあいと明るくにぎやか。新しいものが生まれるのはこういう雰囲気からかもしれない。次はどんなメニューが登場するのかとても楽しみだ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ 構成=アド・グリーン