東武大師線 Local Line Data
2021年12月に開業90周年を迎えた、西新井駅―大師前駅間の1kmを2分で走る2駅だけの支線。2020年には、西新井駅長が大師前の草だんご屋に話を持ちかけ、東武8500型のグリーン車両に「草だんご列車」の愛称が付いた。
おやつ電車に揺られ、ほっこり味を探しに行こう
西新井駅に降り立つと、東武スカイツリーラインに並行し、短く控えめなホームがある。それが東武大師線だ。昭和6年(1931)の開業当初は、東武東上線上板橋駅と結ぶ構想があったが、戦争激化で断念。途中駅がない短距離の単線になった。
10〜15分間隔で往来する車両は、昭和30年代のリバイバルカラーで、従来の白に、赤、黄、緑が仲間入り。中でも緑は、開業90周年に向けた2020年、西新井駅長が「西新井大師名物の草だんごと同じ色」と気づき、門前の草だんご屋3店に直談判。草だんご列車という、地元にふさわしい愛称が付いた。ちなみに3店の草だんごは、やさしい風味、食べ飽きない味わい、引き立つヨモギの香りと、三者三様。食べ比べも楽しい。
他にも、甘味処、手焼きせんべい、和菓子などなど、たった1㎞の沿線におやつの店がひしめき合う。1955年創業の『かどや』の中田有香さんは、「せっかくだから他の色の車両も名付けてあげたい」と笑う。「白は毎月21日の縁日で人気のわたあめ、黄はせんべい、赤はお大師様さんにちなんで、だるま?」。
東武大師線はまさにおやつ電車。所要時間は約2分。ひととき電車に揺られ、ほっこり味を探しに行こう。
よもぎの香りかぐわし名物の草だんご『清水屋』[大師前]
元禄時代の創業で、12代目が営む今も昔も手みやげの草だんごが名物。かつて土手摘みだったヨモギは今、青森産を用い、清々しい香りが際立つ。小ぶりのだんごはもっちり歯切れよし。さらりとした口どけの自家製あんをたっぷりのっけたい。茶そばの後のデザートにも最適。
サクサクとした歯触りの手焼きせんべい『手焼煎餅 三平堂』[西新井]
国産米のせんべい生地を温めて空気を抜き、備長炭の炭火で丁寧に伸ばしながら、一枚一枚焼き上げる。この道58年の店主、平井良彰さんの手元はまさに職人技だ。醤油をハケ塗りして乾燥させた手焼きせんべいは、歯触りサクサク。香ばしさの後、米の甘みが立ち上る。金箔付きやお祝い用大判も地元で喜ばれている。
・8:00~17:00、水・木休
・☎03-3886-4024
もちもちの伸びのよさと素朴な甘みに感服しきり『伊勢屋かま田』[大師前]
路地で営む和菓子店で、お昼にかけて常連客が押し寄せる。福島県産上新粉の素朴な甘みを引き出す、甘辛のみたらしは売り切れ必至。蒸した赤エンドウ豆の粒々食感に心躍る塩豆大福は、甘さ控えめで伸びがすごい。自家製あんを包んだクッキー生地のバターロックなる銘菓も名物だ。
・9:40~18:00(売り切れ次第終了)、第2・4月休
・☎03-3896-5643
個包装であれこれ味わう上品で奥深き香りと甘み『中国茶専門店 RIMTAE 東京西新井本店』[西新井]
店主の黄清海(コウセイカイ)さんは中国福建省出身。郷里の農園などとタッグを組み、「お茶は鮮度が命」と、5gの小包装で販売。木蓮で奥深さを加味したジャスミン茶の茉莉龍珠(まりりゅうじゅ)、炭火で72時間焙煎した白芽奇蘭烏龍茶(はくがきらんウーロンちゃ)、8年以上熟成させた宮廷普洱茶(きゅうていプーアルちゃ)が3本柱だ。月餠と楽しみたい。予約制の聞き茶や講座もあり。
・10:00~16:45、土・日・祝休
・[email protected]
小腹と心に染み入るのどかな甘味食堂の味わい『甘味 かどや』[大師前]
ひと際目を引く看板が目印。あんみつは北海道小豆の自家製粒あんがとろりと舌の上で溶け、自家製麺の焼きそば400円や昔ながらのラーメン500円の後に味わう常連客の多いこと。粉雪のような夏のかき氷350円~は9月末まで。10月下旬からは冬の定番・今川焼120円が登場。
取材・文=佐藤さゆり(team まめ) 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2022年10月号より