地元の人が集まる居心地のいいカフェ

神楽坂駅を出て神楽坂通りを下ってすぐのところにある『コパン』は気取ったところのない、だれでも気軽に立ち寄れるお店。1946年に現在の場所に甘味処として創業し、1980年にカフェとして営業を開始。長年にわたって地元民に愛され続けている老舗カフェだ。

神楽坂通りに面した店の入り口には手書きボードに書かれたおすすめメニューや限定メニューが並んでいる。

神楽坂駅から徒歩1分。親しみやすい外観で誰でも気軽に入れる。
神楽坂駅から徒歩1分。親しみやすい外観で誰でも気軽に入れる。
店に入る前に今月の限定メニューもチェックしておこう。
店に入る前に今月の限定メニューもチェックしておこう。

現在の店長である勝村忠之さんは3代目。もとは飲食業とは畑違いのゼネコンに勤務するサラリーマン。カフェを継ぐつもりは全くなかったが、父親の熱心な説得で店を継ぐことになったそう。数か月という短い期間での引き継ぎでいろいろと大変なことも多かったとのことだが、「やれることはやる」という気持ちと、昔からの常連さんに支えられて現在に至る。

店名のコパンとはフランス語で仲間や友達といった意味。忠之さんの祖父である初代が創業した甘味処を、ビルの建て替えにともないカフェに業態変更して営業を始めるときに、忠之さんの父親である先代の店長が「地元の人が気軽に集まれる社交場のようなお店にしたい」という思いからつけた店名だ。

3代目店長の忠之さんもその思いを引き継ぎ、地元の常連さんが集まれるお店を目指している。「神楽坂の町は毎年のように新しくなっていくけれど、このお店が変わらずあることで昔から住む人たちが喜んでくれるようなお店にしたい」と語る。

一人用席は8席。ゆっくりと1人の時間を楽しみたいときに。
一人用席は8席。ゆっくりと1人の時間を楽しみたいときに。
店の奥にはグループで楽しめるテーブル席も。
店の奥にはグループで楽しめるテーブル席も。

お店に入ると左側に注文カウンターがあり、ドリンクはここで受け取って席に着く。右側には8席のお一人様席。奥にはテーブル席が配置されている。総席数は40席。神楽坂散策の途中にふらっと1人で立ち寄っても、グループでゆったりと雑談を楽しんでも大丈夫だ。

訪問したのは平日の午後。奥のテーブル席では地元の人と思われる客が、友人たちとお店自慢のスイーツを楽しみながら午後のひと時を楽しんでいる。1日に何回も訪れる常連客もいるんだとか。

入って左側にあるカウンターで注文。手描きのポップがキュート。料理は番号札を受け取って席で待つスタイル。
入って左側にあるカウンターで注文。手描きのポップがキュート。料理は番号札を受け取って席で待つスタイル。

常連客に親しまれるシンプルなおいしさのナポリタン

ランチパスタセットは12種類から選べる。パスタの種類によって870円と920円の2種類。どのセットメニューにもミニサラダとプチデザート、ドリンクがつく。場所柄を考えると、リーズナブルな価格設定だ。

パスタは12種類。ランチにはパスタセットのほかに月替りの限定メニューやサンドイッチ類もある。
パスタは12種類。ランチにはパスタセットのほかに月替りの限定メニューやサンドイッチ類もある。

早速、パスタセットで一番人気のナポリタンをカウンターにて注文。番号札を受け取って席で待っていると、出来立てのナポリタンが運ばれてきた。

この日のプチデザートはヨーグルト。ミニサラダにはフレンチドレッシングがかけられている。
この日のプチデザートはヨーグルト。ミニサラダにはフレンチドレッシングがかけられている。

「毎日来てくれる常連さんがいつでもおいしく食べていただけるシンプルなナポリタンです」と店長が語るように、一口いただくと、まさに王道ナポリタン。酸味と甘味が、やや控えめでバランスのとれた味だ。

具材はナポリタンの定番である玉ねぎとピーマン、ウィンナー。個人的においしいナポリタンの大切な要素としてパスタのもちもち感と具材のしんなり具合があると考えているが、どちらもやさしい食感で、満足できる。

ミニサラダのフレンチドレッシングの酸味もナポリタンの味を引き立てている。これなら何回食べても飽きることはなさそう。

厨房でナポリタンを調理する勝村店長。リズムよく振るフライパンが王道ナポリタンの証。
厨房でナポリタンを調理する勝村店長。リズムよく振るフライパンが王道ナポリタンの証。

もう1つの看板メニュー・神楽坂シュークリーム

『コパン』を紹介するときに忘れていけないのが神楽坂シュークリーム。二層のたっぷりクリーム(カスタードクリームと生クリーム)で大きめサイズのシュークリームは、多くのグルメ雑誌やSNSで取り上げられているのでご存じの人も多いはず。週末だけでなく、平日でもこのシュークリームを求めて多くの人が来店する。

「この大きめサイズは話題を狙ったわけではなく、お店を引き継いだ当初、まだスイーツの製造に慣れていなくて普通サイズでつくろうとしたのに大きくなってしまったんですよ」と忠之さんは笑う。その大きさのまま、今では『コパン』の看板商品のひとつだ。

看板メニューの神楽坂シュークリーム280円。遅い時間だと売り切れることも。
看板メニューの神楽坂シュークリーム280円。遅い時間だと売り切れることも。
地元神楽坂を愛する3代目店長の勝村忠之さん。
地元神楽坂を愛する3代目店長の勝村忠之さん。

午後の神楽坂散策の起点として『コパン』でランチをいただいてから街歩きをはじめてもいいし、神楽坂界隈をひと回り散策したあとに、ちょっと休憩がてら人気の神楽坂シュークリームをいただくのもいい。どちらにしても常連さんと地元愛にあふれた老舗カフェでゆっくりとしたひとときを楽しむことができるだろう。

住所:東京都新宿区神楽坂6-50 勝村ビル1F/営業時間:7:00~20:50LO(土・日・祝は8:00~19:50LO)/定休日:無/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩1分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=羽牟克郎