入るとつい長居してしまう、レトロ喫茶の魅力

東京メトロ銀座駅を出てすぐ、松屋銀座の裏手に『仏蘭西屋』の入り口はある。昭和55年(1980)のオープン以来、一等地にも関わらず、美味しくてお得感のある食事や飲み物を頂けると、とくに女性人気の高い喫茶店だ。

地下へと続く階段を降りると、昔懐かしい食品サンプルのディスプレイと、ゴージャスなシャンデリアの灯りが出迎えてくれる。つい時間を忘れてしまいそうな、レトロで暖かな空間だ。

実はこの店、関西圏で長い歴史を持つ『英國屋』グループが、東京に進出した際の第1号店である。なぜ「英國」が「仏蘭西」になったのかといえば、銀座にある同名の老舗紳士服店と混同しないためだという。

なお、店内は2020年4月から完全禁煙となったので、たばこが苦手な人も安心して入れる。

「いらっしゃいませ」と穏やかに声をかけてくれたのは、店長の滝澤裕之さん。溢れんばかりに優しいオーラを纏っている。

取材に訪れた日は思いのほかお客さんが多く、厨房もフロアも忙しそうだったのだが、滝澤さんをはじめ、ここの店員さんたちの接客は常に穏やかできめ細かい。この店が女性に人気な理由の一つは、この優しくて癒やされる接客なのかもしれない。

『仏蘭西屋』名物、ベーコンとアスパラのスパグラタン

『仏蘭西屋』の豊富な食事メニューのなかでも一二を争う人気の一皿が、こちらのベーコンとアスパラのスパグラタン1100円(ドリンクセット1500円)。マカロニなどのショートパスタの代わりにスパゲッティを使用し、ホワイトソースとトマトソースをたっぷりとかけて焼き上げた、濃厚なオーブン料理だ。

こんがり焼き目の付いたグラタンにフォークを入れてみると、チーズの下からもちもち食感のスパゲッティが登場! クリーミィなホワイトソースと、旨味の強いトマトソースがたっぷりと絡んで、疲れも吹き飛ぶような濃厚な美味しさが楽しめる。カリッと焦げ目の付いたベーコンとジューシーなアスパラ、トッピングのフライドオニオンのサクサク感もアクセントになって、ボリュームがあるが不思議と食べ飽きない。ちょっとカロリーは高そうだけれど、その罪悪感さえもスパイスにしてしまうのが、喫茶店グルメの魔力なのだ。

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簡単なのにやみつき必至の絶品レシピ。銀座『仏蘭西屋』のスパグラタン
マカロニの代わりにスパゲッティを使用するので、家でも気軽に真似できるのが嬉しい。市販のソースを使用すれば20分程度で作れるので、ぜひお試しを!…

焼きたてが美味しいワッフルサンドは、ヨーグルトセットがお得

『仏蘭西屋』の人気スイーツのひとつ、ワッフル。シンプルなプレーンワッフルや、フルーツをトッピングしたものも人気だが、食事として頂くならワッフルサンド1100円(ヨーグルトかサラダ付き。ドリンクセットは1500円)がおすすめだ。ヨーグルトかサラダが付くが、常連さんのほとんどがヨーグルトを選ぶというのでそちらを選択。

飲み物は、コーヒーや紅茶のほか、フロート系のメニューも豊富。昔懐かしいクリームソーダや大阪の味・ミックスジュースなどもセットにできる。

焼きたてのワッフルは、外はサクサク、中はふんわり軽い食感で、ほんのりとした生地の甘みがサンドイッチにピッタリ! 具材のきゅうりとハム、卵はシンプルで優しい味付け。どこか家庭的でホッとする美味しさだ。

セットのヨーグルトは、プレーンヨーグルトに、甘さ控えめのフローズンヨーグルトと、週替わりのフルーツソースがトッピングされていて、食べ応えがあるのにとってもヘルシー。甘いものは食べたいけれど、さっぱり健康的なものがいい……という女心をよくわかっている!

ちなみにランチタイムは、ワッフルサンドと一部ドリンクのセットで1100円、ヨーグルトかサラダを追加すると1200円となる。

関西限定だったシフォンケーキがついに銀座にも登場!

2021年秋から『仏蘭西屋』に新登場したのが、シフォンケーキ800円(ドリンクセット1200円)だ。こちらのケーキ、実はこれまで『英國屋』の関西限定メニューだったが、コロナ禍を機に物流を見直したことで、東京でも提供できるようになったそう。

きめの細かいもちふわな生地は、口に入れると溶けてしまいそうな柔らかさで、シフォンケーキのお手本のよう! チョコレートの風味は濃厚なのに軽い食感に仕上がっていて、甘さ控えめのホイップクリーム、コクのあるアイスクリームと合わせれば、いつまでも食べていられそう。

ウェッジウッドのカップが可愛らしいブレンドコーヒーは、苦みと酸味のバランスが取れた飲みやすいお味。そしてなんと、お替わりが1杯無料! 銀座らしからぬコスパの良さも、この店の大きな魅力である。

ほどよい間合いが心地いい、『仏蘭西屋』のサードプレイス感

喫茶店の好みは人それぞれ。その日の過ごし方によって選ぶ店も変わるだろう。とにかく美味しいコーヒーが飲みたいのか、おしゃれな雰囲気を味わいたいのか、誰かとじっくり話したいのか……。

私だったら、疲れているときや、一人で本を読みたいとき、素の自分のままのんびり過ごしたいときに『仏蘭西屋』を訪ねたい。好きな席を選んで座れるし、椅子はふかふか。適度に放って置いてくれるので、ゆっくりご飯を食べたり本を読んだりしていても視線が痛くない。

気が済むまで寛いで、店を出るときに「行ってらっしゃいませ」なんて店員さんに声をかけられたら、また訪れたくなるのが人情だ。

住所:東京都中央区銀座3-7-16 銀座NSビルB1/営業時間:8:00~ 22:30(モーニング~ 11:00。金は~ 23:00、土・日・祝は~22:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄銀座駅から徒歩すぐ

取材・文=岡村朱万里 撮影=島村緑