路地裏2階には、山小屋を思わせるアウトドアスペースが
三鷹駅南口から徒歩3分。活気づいたメイン通りの商店街から一本入ったさくら通り沿いに、店はひっそりとある。目を凝らして目印の看板をたどっていくと、見えるのは鮮やかな緑のサイン。どうやら2階にあるようだ。
おそるおそると階段を上っていくと、まるでバーか喫茶店かのような雰囲気のオールドテイストな扉が待ち構える。
扉を開くと、そこは山小屋かのような空間、一気にアウトドアの世界へと導かれる。天井が高く吹き抜けたスペースは室内ながらも開放的、色とりどりのハンモックが所狭しと吊りさげられ、さらには大型テントも構える。まるでキャンプ場のようだ。
見渡すと店内の半分はコワーキングスペースが設けられている。壁一面には上から下までぎっしりとつまった蔵書スペースもあり、自由に読書も。漫画にビジネス書に文芸書と、数多の本を備えている。その数1000冊だというから驚きだ。
ここは、言うなれば大人のリゾート地だ。仕事に飽きたら寝そべればいいし、仕事をしてなくても寝そべればいい。ごはんを食べながら、ドリンクを飲みながらゴロゴロするのだって、それも正解だ。答えは自由。好きに過ごせばいい。
自由とアウトドアを愛する店主の考える、居心地の良い空間を再現
「小さい頃からアウトドアが大好きで。ボーイスカウトに入っていたんです。大人になっても自分たちがのびのび過ごせてくつろげる、そんな空間を作りたかったんですよね」と、店主の小長谷 有(こはせ ゆう)さんは嬉しそうに話す。
この店を立ち上げる前に、近隣にあるコワーキングスペースで働いていた小長谷さんは、ただのスペースではなく、訪れる人がもっと思い思いの時間を過ごせるようにしたい……という理想をいだいていた。
そうした理想と憧れに、自分のアウトドアが好きな気持ちが重なり、大学時代の同級生であった上原一馬さんとともに店を立ち上げたのだ。
無数のハンモックは、同じ三鷹市内にあるハンモック店『ハンモックライフ』の商品を展示している。ここでお気に入りのハンモックを見つけた客は、実際に『ハンモックライフ』で買い求めることも多々。カフェは、ショールームとしての役割も果たしているので、ハンモックを体験してみたい人にとっても嬉しい。
アウトドアスペースはもちろん、一人客や仕事、読書などにも過ごしやすいコワーキングスペースは、電源やライトもしっかり完備。特に、降り注ぐ光が心地よい窓際席は人気の場所だ。
魅力的なのはカフェとして1オーダーすれば、3時間も滞在できること。ドロップインプランもあり、1000円を払えば4時間滞在が可能で、飲食物の持ち込みもできる。リラックスしたい人、仕事をしたい人、それぞれに合わせたプランを選びたい。
こだわりのメニューは、素材やスパイスを各地から厳選調達
店の看板メニューは自家製のチキンカレー。10種類のスパイスとともに長時間煮込んで作られたカレーは、ホロホロと口の中でほどける柔らかいチキンが癖になる。味はトマトベースで程よいスパイス感なので、子どもと一緒に食べることもできる。刺激がもっと欲しい人は、ココナッツたっぷりのグリーンカレーがおすすめだ。
ドリンクにもこだわりを見せる。人気の抹茶ラテは、京都宇治産の濃厚で渋味のある抹茶を仕入れる。ほんのりと甘みを加えて仕立てたラテは、口当たりの良い品だ。コーヒーは、店主自ら生豆を仕入れて直焙煎をする。注文をうけてから、店主がハンドドリップで丁寧に入れるこだわりの一杯だ。
アルコール類も豊富に揃えている。その数30種類以上もあり、クラフトビールも揃えているのがうれしい。瓶ビールを片手にハンモックに揺られ過ごす時間は、なんとも贅沢な時間。一度経験したらやみつきになりそうだ。
ふらっと訪れたくなるのは、雰囲気づくりを大切にした空間だから
小長谷さんと上原さんは、店を営むにあたり地域とのつながりを大事にしている。小長谷さんが以前働いていたコワーキングスペース時代から積み上げてきた近隣の店舗の人々や、地域活動家などとの関係はとても深く、彼らからの影響も大きく受けている。
初めて「自分の店を持ちたい」と志した店主2人を、こうした地域でのつながりが助けてくれたそうだ。
小長谷さんたちは、店の内装をセルフビルドで仕上げたが、
「様々な方からいただいたアドバイスで、イベントスペースとしての機能も取り入れたり、カフェメニューも工夫したり。とても助けられています。常連さんがいろんなつながりを紹介してくれたり備品や雑貨を提供してくれたり。地元三鷹で、みんなが居心地よく自由に楽しんでもらえているのが嬉しいですね」
取材・文・撮影=永見薫