オールドアメリカン大好きな同級生2人は、夢だった店の開業をする
スカイブルーの扉と、ビッグなアメリカ国旗が構える店舗の外観に、心が躍る。蔵造りの街並みを目指して道を歩く人たちが、次々と吸い寄せられるように立ち止まっていくのが印象的。
扉を開くと広がるのは、オールドアメリカの世界。店奥の大きなモニターではアメリカンムービーが流れ、まるで異国のカフェに訪れたかのような雰囲気だ。
センスよく並ぶ数々のアメリカントイや雑貨は、店主2人の趣味で集めたコレクション。セルトイたちと目が合うと、思わずこちらも微笑みかけたくなる。幼き時代のことを思い出し、眠っていた童心がむくむくとわいてくる瞬間だ。
中学の同級生だったという店主の2人、西村拓朗さんと阿部春来さんは、地元川越の出身。この地に店をオープンしたのは、2012年10月のこと。
オールドアメリカンテイストが大好きな2人。大学在学中に西村さんはパンケーキ店で、阿部さんはハンバーガー店でそれぞれ修行をする。
その後、それぞれ修行した持ち味を生かす形で、パンケーキをメインにしたアメリカンカフェ&ダイナーをオープン。それも、大学を卒業してすぐに開業したという驚きの行動力だ。
「若さゆえの怖いものなし、という気持ちで思い切って店を開いた感じですよね。でも店を開くならならいつか2人で、それも川越でやりたいねって決めていて。あっという間にこれまでやってきましたね」
スイーツから食事系まで豊富に揃うパンケーキメニュー
カフェは毎日朝7時半〜夜は23時までと、朝から晩まで営業するスタイル。いつでも何時でも訪れることができる、まさに街のなかの“居場所”といったところだ。
スイーツメニューとしてのパンケーキ以外にも、朝昼と食事メニューとして食べられるパンケーキ、さらに夜はフィンガーフードやダイナーメニューも提供するスタイル。
老若男女が足繁く訪れるのも頷ける豊富なラインナップだ。
店一番のおすすめは、王道のチョコバナナパンケーキだ。注文を受けてから厨房の大きな鉄板で焼き上げるパンケーキは、昔ながらのやや薄めのもちもち生地に、ほんのりと甘みが感じられる。トッピングの生クリームとバニラアイスはたっぷりすぎず、ちょうど良いボリュームだ。
温かいパンケーキに冷たいバニラアイスがほどけて絡む絶妙な味わいは、食べる人たちみんなを幸せにしてくれる。
お供のドリンクにはぜひクリームソーダを。ストロベリー・レモン・メロン・ブルーハワイと常時4種類のラインナップに、季節のメニューも加えると9種類もそろっている。
赤・黄・緑・青とカラフルなフロートを眺めると、どれにしようかすっかり迷ってしまう。選べないあなたは、どうぞ夢の大人買いを!
パンケーキといえば、つい甘くボリューミーなスイーツメニューを想像するが、『カフェマチルダ』では食事系メニューもおすすめ。実は客の多くがこの食事系メニューを求めて、カフェに訪れるそう。メニューのバリエーションが豊富で、味わいも面白く、食べ応えがある。
そして、訪れた際にぜひ一度は挑戦したいのが1日限定5食のランバージャックソーセージパンケーキと、ランバージャックベーコンパンケーキだ。ソーセージとベーコンの存在感が目立つこのメニュー、店内で1日がかりで作る自家製ソーセージとベーコンを使用しているのだ。
「全て手作業で仕込みをして、吊るして干してとしているんですが、作業がとても大変で……それゆえ1日限定5食のみですが、スパイスをたっぷり練り込んでいるので味が複雑で食べ応えがあります。是非一度は食べてほしいです」
どっしりとしたベーコン・ソーセージに、パンケーキも4枚つき、さらには山盛りたっぷりのフライドポテト!おまけにサラダもつくという、これでもかというサービスメニューだ。
ちなみに男性でも滅多に完食する人がいないそうで、来店する際にはお腹を空っぽにして挑んで欲しい。
パンケーキを食文化の当たり前に、日常の一部にしたい。
『カフェマチルダ』のパンケーキメニューはどれも手ごろな価格で、メニューのほとんどがセットで注文しても1000円でおつりがくる。お金が少ない学生さんにも優しい価格だ。それにはワケがある。
「日本ってパンケーキといえばデザートじゃないですか。でもアメリカではパンケーキって食事でもあるんです。日本でもパンケーキが食事として定着してくれたらいいな、日常の一コマに当たり前になじんで欲しいと思っているんですよね」
なるほど、いつでも誰でも皆が気軽に訪れるのは、こうした店主2人の熱き食文化への思いと、訪れる人への愛情があってのこと。
ここ川越の一角から、パンケーキ文化を変えようとする熱き意思を感じた瞬間だった。
取材・文・撮影=永見薫