小平で開店し2021年で14年目、場所を移して国分寺で店を構える

西武国分寺線恋ヶ窪駅。国分寺の外れにある小さな駅だ。

駅を降りるとすぐ目の前に昔ながらの小さな商店群。その地下1階に『トラットリア・クオーレ』はひっそりと店を構える。

『トラットリア・クオーレ』店舗外観。駅前の商店ビルの地下にある。
『トラットリア・クオーレ』店舗外観。駅前の商店ビルの地下にある。

扉を開けると10坪ほどの小さな店に客席が並ぶ。一見するとイタリアンとは思えないような店の雰囲気。それもそのはず、元はラーメン店だったこの場所、町中華の名残を感じる不思議な雰囲気だ。

2003年から隣町の小平で14年営業し、国分寺に移転したのは2017年のこと。

町中華の名残が残る店内カウンター席。ファミリー席もあり、一人客から大人数まで楽しめる。
町中華の名残が残る店内カウンター席。ファミリー席もあり、一人客から大人数まで楽しめる。

脱サラして一念発起の父とそれを支える息子の念願の店舗

店を開業したのは、現店主、上野義巳さんの父である義安さん。サラリーマンを早期退職した後、先に料理人として働いていた義巳さんに影響を受け、一念発起し料理の道を志す。凝り性の義安さんは専門学校に通って料理の勉強に没頭、なんと首席で卒業したのだとか。そして念願の店舗を構えたのが小平時代のこと。

そんな父を支えようと『クオーレ』に加わったのが息子の義巳さんだ。退職してもなお、新しいことを恐れない父のチャレンジ精神に惹かれるところもあったのだろう。

以降父子で二人三脚、店を営業してきた。

「素材も調理法も、シンプルなんですよね。和との相性も良くて、アレンジが利くところも楽しいです。かしこまったスタイルではなく、毎日気軽に食べれるところもいいなって思っているんですよね」

そう話す義巳さんはこの道20年以上。20歳の頃から飲食業の道を突き進んできた。フレンチを経験しながら、イタリアンに転身したのは、イタリアンの気軽さが心地よかったから。

現在は亡き義安さんの後を引き継ぎ、一人『クオーレ』を切り盛りをする。

豪快にパスタをあおる、2代目店主の上野義巳さん。
豪快にパスタをあおる、2代目店主の上野義巳さん。

食いしん坊も大満足。お腹いっぱい食べたいから大判振る舞い

店に訪れたら、まずパスタを。店主が豪快にあおって仕上げたパスタは、気軽に食べたくなる一品だ。

特にオイル系のパスタがおすすめだ。シンプルなオイルに、野菜と鶏肉で丁寧に出汁を取るブイヨンをなじませたパスタは、しっかりとコクがあり味が染み渡っている。

具材一つひとつも厚みがあり、ボリュームもあり、見た目にも満足感がある。

「僕、食べるのが好きなんです。食いしん坊でね。お腹いっぱい食べたいじゃないですか。だから材料をケチりたくないんです。大判振る舞いしちゃいますね」と笑う。

この日のパスタは、アンチョビと夏野菜のアーリオオーリオ。ランチメニューはAコース1000円と、Bコース1200円の2種類。
この日のパスタは、アンチョビと夏野菜のアーリオオーリオ。ランチメニューはAコース1000円と、Bコース1200円の2種類。

都心に負けない鮮度とコスパの良さ

毎日のランチメニューはAコースがサラダ・パン・ドリンクに、パスタかピッツァ、リゾットを選ぶ。Bコースは、そこに前菜2品が加わる。どの料理にもたっぷりと国産野菜が添えられていることが印象的だ。

前菜のアンティパスト盛り合わせは、主に海鮮系がメイン。

この日は真鯛のカルパッチョがお目見え。ラビゴットソースという野菜をメインにしたソースを添えている。アンティパストはその日の仕入れに合わせて変化するので、訪れた当日のお楽しみにしたい。

ご覧の通りのボリューム感。それでいながらBコースでも、1500円以下とは都心では考えられない破格のプライスだ。

この日のBコースメニュー、四種チーズのピッツァ。前菜も惜しみのないボリュームだ。
この日のBコースメニュー、四種チーズのピッツァ。前菜も惜しみのないボリュームだ。

夜はアラカルトを中心に、野菜や海鮮をこれでもかと使用した料理を用意する。都心から帰宅後に前菜を数品に一杯、と立ち寄る客も多いそう。

最近は気軽に訪れることが出来なくとも、『クオーレ』の味を求める常連客の声に応え、テイクアウトやお弁当メニューも提供。小平時代の常連客からのラブコールによるものが大きいそうだ。

遠くからも足を運ぶ常連客に支えられている

「20年近く通ってくれる常連さんも多く、小平から足繁く通ってくださっています。頼りない僕はありがたいことに、こうした長年のお客さんに叱咤激励してもらってやっています」とはにかむ義巳さん。

2代目店主の上野義巳さん。
2代目店主の上野義巳さん。

一見すると寡黙な料理人の雰囲気を醸し出しつつも、話し始めると照れ屋で人の好さがにじむ義巳さん。常連さんと話す時間も好きなのだとか。

ついつい料理を大判振る舞いしてしまう、こうした義巳さんの人の良さが、わざわざ遠くからでも通いたくなる理由なのだろう。

住所:東京都国分寺市戸倉1-2-2 恋ヶ窪マンションB1F/営業時間:11:30~14:00LO・17:30〜21:30LO/定休日:日、第1月/アクセス:西武鉄道国分寺線恋ヶ窪駅から徒歩1分

取材・文・撮影=永見薫