交友録としても注目! 世界を飛び交ったポストカードの数々

「Todayシリーズ」をはじめ、時間や存在をテーマにしたコンセプチュアル・アートで世界的に知られる美術家・河原温。本展は、河原の友人や家族に送られた、起床時刻が印字されたポストカードで構成される《I Got Up》シリーズを紹介する。

ギャラリー担当者は、「起床という個人的で親密な事柄を、河原は郵便システムの中に組み込むと同時に、時間の経過そのものに物質性を与えました。またポストカードの名宛人には、マン・レイと親交の深かった人々も含まれています。同時開催のマン・レイ展と併せてご覧いただくことで、よりいっそう本展をお楽しみいただけます」と見どころを語る。

いつ、何時に起床し、どの場所からどこの誰にポストカードを送ったのか。一枚一枚たどるうちに時空を旅する感覚に陥りそうだ。

“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.
“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.

物質性を与えられた時間と向き合う

河原温が12年間にわたり毎日、友人や家族、コレクター、同僚らに送ったポストカードによって構成される《I Got Up》(1968~79)。そこにはカード一枚一枚に本人がベッドから起き上がった時刻がスタンプで印字されている。量産品であるポストカードという形式、スタンプを押す反復的な行為、そして規格化された郵便制度を通じて、河原は日常生活における最も個人的で親密な事柄を、現代社会を統制するより広範なシステムの中に組み込むと同時に、時間の経過そのものに物質性を与えた。

また本シリーズは、マン・レイと親交の深かったアーティスト兼ギャラリストのウィリアム・コプリーをはじめとする人々が名宛人となっており、シュルレアリスムの影響を受けた初期の具象表現からコンセプチュアル・アートへと至った河原の歩みをも示しているのが興味深い。シュルレアリスム、コンセプチュアル・アート、そして個人の経験を記録し伝達する郵便などの日常的なシステムから織りなされる、広範な芸術的ネットワーク。それらの中での河原の実践を考察する、またとない機会だ。

“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.
“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.

開催概要

河原 温

開催期間:2026年8月1日(土)~10月3日(土)
開催時間:11:00~19:00
休廊:日・月・祝
会場:Take Ninagawa(東京都港区東麻布 2-14-8)
アクセス:地下鉄大江戸線・南北線麻布十番駅から徒歩5分
入場料:無料

【問い合わせ先】
Take Ninagawa☏ 03-5571-5844
公式HP:https://www.takeninagawa.com/exhibitions/15028/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=Take Ninagawa