日常的なもの同士の関わりから社会へ「共生」の意義を問う
磁力、重力、空気のゆらぎといった自然現象をメインモチーフに、身のまわりのもの(人工物/自然物)や機器を組み合わせたオブジェを介して、インスタレーションを生み出すアーティスト・毛利悠子氏。それらの作品には、そこかしこに遍在するエネルギー、ものとものの間の目に見えない関わりあいや循環といった、普段見過ごしがちな自然の摂理がユーモアの感覚を交えて表現されている。
毛利氏は2024年のヴェネチア・ビエンナーレに日本館代表作家として参加し、個展「Compose」を開催。現地で大きな話題を呼んだ展覧会が、地元である神奈川県の『横浜美術館』に凱旋する。ヴェネチアでの展覧会タイトル「Compose」は、作曲、構築を意味するが、その語源をたどるとcom=共に、pose=置く、の2語を組み合わせた言葉でもある。本展タイトル「Recompose」にも、もの同士の関わりとそれらが生み出す力から、いま一度社会に問いかける毛利氏の主題が込められている。
自然や日常生活とアートを結びつけ、あらゆるものの予期せぬ変化や移ろいゆく姿を可視化する作品。それらはコロナ禍や各地での紛争などさまざまなレベルで分断の危機にさらされている世界に向けて、「共存」「共生」の意味を考える契機を与えてくれそうだ。
ガラス張りの展示室で生み出される音と光が五感を刺激する
展示は、毛利が継続的に取り組んできた2つのシリーズにより構成される。ひとつは、毛利が10年以上にわたって取り組んでいる「モレモレ」。東京の地下鉄構内の各所で頻発する水漏れと、それを駅員たちが手近な道具を使って対処するさまに想を得たもので、さまざまな日用品を用いて、即興的な水の循環システムが形づくられている。もうひとつのシリーズは、果物をモチーフとした「Decomposition」。電極を刺された果物がゆっくりと朽ちていく過程で、その水分量の変化によって不規則な音と光が生み出される。共通するモチーフは水。その循環や変容を可視化した作品は、空間全体に拡がる光、音、匂いもあいまって、観るものの五感に強く、やわらかく、働きかける。
会場であるギャラリー9は、『横浜美術館』がリニューアルされたのを機に新設されたばかりのガラス張りの展示室。毛利氏の創作が、ガラスファサードから見える緑が刻々と変化する情景、光を取り込む展示室とも親和性を見せ、「共生」「共存」のひとつの形を生み出している。
開催概要
「毛利悠子 Recompose ― 第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館帰国展」
開催期間:2026年7月24日(金)~11月23日(月・祝)
開催時間:10:00~18:00(11月21・22日は~20:00、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木(8月13日・9月24日・11月19日は開館)
会場:横浜美術館(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
アクセス:JR根岸線・横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅から徒歩10分、横浜高速鉄道みなとみらい線みなとみらい駅から徒歩3分
観覧料:無料
【問い合わせ先】
横浜美術館☏045-221-0300
公式HP:https://yokohama.art.museum/exhibition/202607_mohriyuko/
取材・文=前田真紀 画像提供=横浜美術館






