時代は移ろってもパイク作品は生き続ける

手と顔 1961年 白黒 1分44秒
手と顔 1961年 白黒 1分44秒

今日におけるメディア・アートの基礎を作った、現代美術家・ナムジュン・パイク。1932年に韓国・ソウルに生まれ、世界で初めてテレビ・モニターを用いたインスタレーション作品を発表し、ビデオ・アートの父とも呼ばれる。

パイクはブラウン管モニターを多用した斬新な作品で知られるが、ブラウン管から液晶、4K、LEDディスプレイへと進化を続けている現在もその作品は色褪せない。むしろ時代が進むにつれ、その斬新さは際立つ。映像から響く音、一見ユーモラスでありながら現代の問題を鋭く突く作品たち、ビデオはただの映像表現ではなく、革新的な手法そのものである。『ワタリウム美術館』は、その前身である「ギャルリー・ワタリ」で1978年に個展『ジョン・ケージに捧げる』が開催されたことに始まり、幾度もナムジュン・パイクの個展を開催してきた所縁のある会場でもある。

本展でも『ワタリウム美術館』の展示会場に合わせて作られた作品「ケージの森/森の啓示」(1993)などが展示される。時代が移ろい、価値観や社会問題が変わろうとも、常に新しい視点を与えてくれるはずだ。

時は三角形 1993年 ネオン管5本、木製台、アクリル絵具、モニター72台、映像4チャンネル、再生機
時は三角形 1993年 ネオン管5本、木製台、アクリル絵具、モニター72台、映像4チャンネル、再生機

未公開のコラージュ作品やドローイングも登場

ケージの森/森の啓示(部分) 1993年 植物、モニター20台、映像3チャンネル、再生機3台、ステレオ1組
ケージの森/森の啓示(部分) 1993年 植物、モニター20台、映像3チャンネル、再生機3台、ステレオ1組

展示会場全てをパイクの作品で構成する本展。特に、『ワタリウム美術館』の展示会場に合わせて作られた作品「ケージの森/森の啓示」(1993)は大きな見どころのひとつ。2階全体が森で覆われ、実際の木々が使用されることで造られた植物では体験することのできない匂い、変化していく、生きた植物空間をつくりあげる。この森の中には、パイクの代表作「時は三角形」(1993)、「ロボットK-567」(1993)などの立体作品が潜んでおり、自然と文明の相反する二つの共存を表している。

3階では未公開のコラージュ作品をはじめ、20 点以上のパイクの平面作品を中心に、「TV植物」(1980)など、ブラウン管を用いた立体作品、パイクの発想の源であるドローイングが展示されるのにも注目だ。

また、4階では三原色で壁に大きく映し出される蝋燭「ニューキャンドル」(1993)が展示される。フロア一帯に作品が展開される様は圧巻。

落語の前座噺・寿限無のごとく長く生き続けるであろうパイクの作品から、不死身の創造性に触れてみたい。

永平寺賛歌 1986年 カラー、音 29分12秒
永平寺賛歌 1986年 カラー、音 29分12秒

開催概要

「没後20年 ナムジュン・パイク|じゅげむ展」

開催期間:2026年7月19日(日)~11月23日(月・祝)
開催時間:11:00~19:00
休館日:月(9月21日・10月12日・11月23日は開館)
会場:ワタリウム美術館(東京都渋谷区神宮前3-7-6)
アクセス:地下鉄銀座線外苑前駅から徒歩7分・地下鉄表参道駅から徒歩9分
入場料:一般1500円、大人ペア2600円、学生(25歳以下)・高校生・70歳以上の方・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳お持ちの方、および介助者(1名)1300円、小・中学生500円

【問い合わせ先】
ワタリウム美術館☏03-3402-3001
公式HP:http://www.watarium.co.jp/jp/exhibition/202607/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=ワタリウム美術館