新たな表現が試みられた1990→2001にロックオン

山口啓介《炭素の船》1990年、エッチング  『町田市立国際版画美術館』蔵。
山口啓介《炭素の船》1990年、エッチング 『町田市立国際版画美術館』蔵。

1990年代から2000年代初頭の時代は、近年「Y2K(Year2000)」や「平成レトロ」カルチャーとして再注目されている。終末感や社会不安を抱えつつも、希望とともに新しいミレニアムの幕を開けようとしていたこの時代、版画の世界では、写真や立体との融合や大型作品の制作、デジタル技術の活用など、従来の版画の枠を越えようとする新しい表現が試みられた。さらに好景気の余韻で活発に行われていた、地方自治体発の国際版画展もこの動きを後押ししていた。

本展では当時話題となった5つの現代版画展や『町田市立国際版画美術館』での公開制作のアーカイブなどから作品を紹介。この時代の版画界の熱量の高さを伝える内容になっている。

横尾忠則《ピカビア - その愛と誠実 II》1989年、スクリーンプリント 『町田市立国際版画美術館』蔵。
横尾忠則《ピカビア - その愛と誠実 II》1989年、スクリーンプリント 『町田市立国際版画美術館』蔵。

「版画」の境界を広げた作家たちの挑戦の数々

クリストファー・ブラウン《40の断片》1991年、カラー・アクアチント、ソフトグランド・エッチング 『町田市立国際版画美術館』蔵。(C)Christopher Brown and Berggruen Gallery, San Francisco。
クリストファー・ブラウン《40の断片》1991年、カラー・アクアチント、ソフトグランド・エッチング 『町田市立国際版画美術館』蔵。(C)Christopher Brown and Berggruen Gallery, San Francisco。

写真や立体など、表現方法を組み合わせる新しい手法や空間を圧倒する大型作品など、当時作家たちが試みた実験的な表現が集結した本展。20世紀という「戦争の世紀」を省みる視点や、ボーダレスな版画表現の実験、版画による国際交流の足跡など、この時代ならではのさまざまな表現や当時の動向が見て取れる。特に、自治体による国際版画展が多数開催された当時の成果として収集された、アジア、欧米、オセアニアなど、世界各国の版画作品が多数展示されているのも見どころだ。

主な出品作家は畦地拓治、太田三郎、大島成己、岡部昌生、片山みやび、元田久治、山本麻友香、山口啓介、横尾忠則、吉田亜世美、若林奮、マティアス・ヴァスケ、ペーニャ・ペラルタ・フリオ・セサル、クリストファー・ブラウン、デニス・ノナ、張敏傑、イージ・アンデーレ、クリス・オフィリなど。時代ならではの視点や問題提起が、新たな表現を切り拓いたその軌跡をたどっていく。数々の作品からその空気感を味わいたい。

デニス・ノナ《タバラ》1993年、リノカット 『町田市立国際版画美術館』蔵。
デニス・ノナ《タバラ》1993年、リノカット 『町田市立国際版画美術館』蔵。

担当学芸員によるギャラリートークも開催

8月8日(土)・15日(土)・26日(水)の各14時~、担当学芸員によるギャラリートークが館内企画展示室で開催。要当日有効観覧券。

開催概要

「プレイバック!ミレニアム1991→2001:版画が/版画で超えた境界」

開催期間:2026年6月27日(土)~8月30日(日)
開催時間:10:00~17:00(土・日・祝は~17:30、入館は閉館30分前まで)
休館日:月
会場:町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2(東京都町田市原町田4-28-1)
アクセス:JR横浜線・小田急電鉄小田原線町田駅から徒歩15分
入場料:一般900円、大学生・高校生450円、中学生以下無料
※障がい者手帳をお持ちの人と付添1名は半額。

【問い合わせ先】
町田市立国際版画美術館☏042-722-3111
公式HP:https://hanga-museum.jp/exhibition/index/2026-630

 

取材・文=前田真紀 画像提供=町田市立国際版画美術館