日本の近代洋画界に足跡を残した数々の作品を紹介
33歳でこの世を去り、短い活動期間ながら日本の近代洋画界に大きな足跡を残した画家・前田寛治(1896~1930)。彼は、詩的感性と西洋絵画の伝統を踏まえた写実性の融合を追求しながら、多彩に芸術を花開かせた。
本展は前田の生誕130年と、彼が設立に加わった1920年代前半をパリで過ごした画家たちのグループ、一九三〇年協会が2026年に100周年を迎えるのを機に開催されるもの。密度の濃い制作をおこなった彼の画業の展開を追うとともに、一九三〇年協会の仲間たちによる作品も併せて紹介する。
学芸室長の田中晴子さんは、「33才の若さで亡くなった前田寛治ですが、日本近代洋画史を語るうえで欠かせない存在です。ただ、彼の多くの作品をじっくり見る機会がなければ、そのすごさが伝わりにくいタイプの画家でもあります。色使い、筆触などのバランスが絶妙で、スタイルの違う絵を同時期に展開させながら、存在感ある独特の作品に仕上げているという天才ぶりを、本展をご覧になって感じていただければ幸いです」と見どころを語る。
東京美術学校を卒業後に渡仏し、2年半ほど滞在した前田。近代以降のフランス絵画を冷静に見渡しながら、自らの絵画と思想を確立しようとした前田と仲間たちが、追い求め、築こうとしたものとは何だったのか。改めて見つめ直す機会となりそうだ。
キーワードは「ポエジイ」と「レアリスム」
前田寛治の作品を観るうえで欠かせないポイントのひとつが「ポエジイ」だ。東京美術学校時代、前田寛治はノートに「絵は詩である」(1922年1月)と書きつけているという。彼は画業の初期に、いい絵画にはポエジイがあることを発見した。終生「ポエジイのない絵は駄目だ」「詩がなくなると絵は萎(しな)びる」と周囲に語っていたという。
そして、もうひとつが「レアリスム」である。前田寛治は日本近代美術史のなかで、現代社会を描くという意識を他に先んじてもち、描き続けた。前田は絵画論のなかで、写実の基本的な3要素は「質感」「量感」「実在感」を得ることだと語っている。
ポエジイとレアリスム。描く対象をただ忠実に再現する絵画ではなく、それを超えた表現を摸索し、表現しようと闘い続けたその足跡を目にすることができる。
開催概要
「生誕130年 前田寛治 ポエジイとレアリスム 一九三〇年協会設立100年」
開催期間:2026年7月4日(土)~8月30日(日)
※会期中一部展示替えあり
開催時間:10:00~18:00(金は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(8月10日、24日は開館)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
アクセス:JR東京駅丸の内北口直結
入場料:一般1600円、高校生・大学生1100円、中学生以下無料
※身体障害者手帳などの手帳をお持ちの方は一般1100円、高校生・大学生900円、その付添いの方(1名まで)は無料。
【問い合わせ先】
東京ステーションギャラリー☏ 03-3212-2485
公式HP:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202607_maeda.html
取材・文=前田真紀 画像提供=東京ステーションギャラリー







