世界の曖昧さに身を任せて

(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。

本作「Spin around the Night Consumed by the Fire」は、2000年にハッテン場の公園で発生した「ゲイ狩り」の殺人事件の犯人が、中野自身と同姓同名だったことを発端に制作された。ゲイ当事者である中野は、その事件を知ったとき、殺された男性の亡霊が今もその公園で男を物色して彷徨い続けているイメージが脳裏に浮かんだという。そこから着想して、自らがカメラを携えた霊媒師となり、地縛霊となった男の魂を解放する「クエスト」を始める——。

もともと映像制作に関心があり、武蔵野美術大学映像学科で学んだ中野。その中で、連想ゲームのように写真を繋げて物語を構築していく写真編集の面白さに目覚めた。事件現場を歩きながら当時の話をリサーチする中で、中野の脳内ではその出来事を巡る連想が次々に広がっていく。

現実と想像、生と死、自己と他者、ストレートとゲイなど、あらゆる境界線が曖昧になっていく感覚から生まれたイメージ群。昼と夜の間に現れるトワイライトのような、どこか紫色に感じられるようなトーンで包まれているのが印象的だ。

(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。
(C)Taisuke Nakano。

世界を分かりやすくカテゴライズしようとするものに抗い、不確定な揺らぎある境界線に感覚をゆだねてみることで、豊かなイメージの連なりを生み出す。人間という個体の中に渦巻いている欲望や感情を、写真を通して表現する試みだ。

刊行される写真集は、台湾を代表するデザイナー・聶永真(アーロン・ニエ)が装丁を担当。人々の欲望を巡る旅路を248ページの実験的な書物へと昇華した。写真展とあわせてチェックしたい。

中野泰輔『Spin around the Night Consumed by the Fire』(ふげん社)。9900円。
中野泰輔『Spin around the Night Consumed by the Fire』(ふげん社)。9900円。

関連イベントも開催

7月4日(土)14:00からは、ゲストに写真評論家・飯沢耕太郎氏と写真家・鷹野隆大氏を迎えたギャラリートークを開催。また、7月18日(土)14:00からは、作家本人とギャラリーディレクターによるガイドツアーも開催される予定だ。

ギャラリートーク 中野泰輔×飯沢耕太郎(写真評論家)×鷹野隆大(写真家)

日時:2026年7月4日(土)14:00〜15:30
(トーク終了後には、授賞式・レセプションを開催。参加自由)
参加費:1200円(会場観覧・オンライン配信)

※オンライン配信のアーカイブ視聴は 2026年8月2日(日)まで。お申し込みは、ふげん社オンラインストア(https://fugensha-shop.stores.jp/)、または店頭にて。

ギャラリーガイドツアー

日時:2026年7月18日(土)14:00から30分程度

開催概要

「第5回ふげん社写真賞グランプリ受賞記念 中野泰輔個展『Spin around the Night Consumed by the Fire』」

開催期間:2026年7月3日(金)~7月26日(日)
開催時間:12:00~19:00(土・日は~18:00)
休館日:月・火
会場:ふげん社(東京都目黒区下目黒5-3-12)
アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅より東急バス3分の「元競馬場前」下車、徒歩1分
入場料:無料

【問い合わせ先】
ふげん社☏03-6264-3665
公式HP:https://fugensha.jp/events/260703nakano/

 

取材・文=小野晃平(編集部) 画像提供=ふげん社